- 2021年5月26日
vol.16 インフレと投資戦略
インフレが話題になってきた背景
いま、海外市場を中心にインフレの心配が強まっています。米国でインフレ傾向が今後ゆっくりと強まる可能性はあります。しかし、これは長期投資の観点からはさほど重要ではありません。短期的な取引の材料ではありますが、自分の未来の消費のために投資をする投資家としては、どういうことが問題になりそうか、知っておけば十分です。
インフレが話題になってきた理由は、債券市場参加者が米国での目先のごく短期的なインフレ率の上昇を心配したことにあります。最近のインフレ率やGDPの上昇は、直前に新型コロナウイルス感染防止のためのロックダウンなどの対応で大きく下がったところからの回復によるものです。100が90になったものが100に戻れば、突然10%程度の上昇となりますが、実は元に戻ったにすぎませんよね。だから「ごく短期」なのですが、市場はこの勢いでそのままインフレ経済が来るのではないかと心配したのです。
景気回復による銅などの商品価格上昇などは、インフレでなくても一時的に起こります。しかし、財政出動で失業手当が上乗せされ、人を雇うコストが上昇していることや石油のパイプラインがランサムウエアによるサイバー攻撃で一時動かなくなったこと、巣ごもり需要で半導体が不足したことなどで、大きなインフレが来るとの心配が出てきました。ですが、失業手当の上乗せはいつまでも続きません。半導体不足も解消が見えてきていますし、もちろんパイプラインも稼働し始めました。一時的なインフレと大幅な強いインフレを混同しているのが心配の背景でしょう。
インフレによる企業の株価への影響
インフレが原因で株価が下がる理屈はありません。理屈でいうと、企業はインフレ分だけ商品販売価格を値上げすればいいのです。インフレで人々の給与も上がっていれば問題ありません。インフレで問題になるのは、どの企業が強いか、です。価格支配力がある強い企業は良いでしょう。また賃金が先に上がったか、それともインフレの後追いで上がるかでも違います。インフレを追いかけて賃金上昇する場合、生活必需品は強いですが、高級品や耐久消費財は弱くなります。建設資材が賃金より先に値上がりすると住宅産業は弱くなります。しかし長期的に見れば、インフレに合わせて給与も上がり、効果は中立のはずです。
仮にインフレが株価に与える影響があっても、その影響は一時的で、価格支配力のある銘柄が好まれ、競争の厳しい業界が嫌われやすくなります。今回のように景気は回復、賃金は上昇してさらに財政支出で所得増、を背景とするのであれば、多くの企業の価格支配力は維持され、売り上げや利益もインフレ分乗せることができると予想します。インフレ予想で金利が上昇しても、価格にコストを上乗せできればよいという論理に変わりはありません。金融相場から業績相場への市場の変化が、今後の株価への影響をもたらすと見ています。
インフレと投資戦略 ~神山解説
インフレ懸念が強まるとすると、個人投資家はどのように投資すればよいでしょうか。
金利が上がりやすくなるので債券を好まないという意見も出るでしょうが、金利が上がると債券の利金も増えます。債券のETFや投資信託であれば、ファンドが保有する債券が償還された場合は利金の高い債券に入れ替えるので、大幅な価値の悪化がくるとは言えません。一方で、株式がインフレヘッジになるというのも誤解です。株式は、全体としてインフレに対して長期的に中立、短期的には心配が先に立ちやすいです。また、アメリカのインフレ懸念により金利が高くなると、ドル高の要因になります。これらを合わせると、短期的に投資したいのであればインフレ懸念では現金に逃げるのがいいのですが、長期的にはリスク資産を買うチャンスです。インフレは緩やかであれば企業に悪影響を与えません。石油ショックのような急なインフレは景気回復局面では起こりません。また、現在の技術水準で石油だけが上昇しても急なインフレにはならないと考えてよいです。
結論として、これまで長らく経験したことのないインフレに市場が神経質になっても、長期的には投資成果に影響しないとみてよいです。グロースは高金利・インフレに弱いという誤解もありますが、実際には価格支配力がある企業はグロースに多いのです。インフレが来るから株式が良いとか、急なインフレでは現金に逃げるとかの話題が今後も出てくるかもしれませんが、今後緩やかなインフレが進むとしても、それを気にせず投資家は各自の投資の目的に応じて、元本保全に資する債券や世界の成長についていく株式をうまくミックスして保有することをお勧めします。
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<解説者>
神山直樹(かみやま なおき)
日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト
2015年1月に日興アセットマネジメントに入社、現職に就任。1985年、日興證券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)にてそのキャリアをスタート。日興ヨーロッパ、日興国際投資顧問株式会社を経て、1999年に日興アセットマネジメントの運用技術開発部長および投資戦略部長に就任。その後、大手証券会社および投資銀行において、チーフ・ストラテジストなどとして主に日本株式の調査分析業務に従事。
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note 神山直樹
●掲載されている見解は当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。また記載内容の正確性を保証するものでもありません。
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