神山解説

  • 2021年9月27日

vol.20 31年ぶりの高値更新で注目が高まる「日経平均株価」とは?



意外に知られていない日経平均株価のこれまでの歩み

なぜ日経平均株価の構成銘柄が225銘柄なのでしょうか。これは、東京証券取引所(以下、東証)が戦後すぐの1949年5月16日に再開し、1950年9月7日に算出が開始された「東証ダウ式平均」に由来します。この当時から225銘柄の平均でしたが、そもそも東証の上場銘柄数がその程度しかなかったのです。当初は東証がダウ式で算出して「東証ダウ平均(以下、東証ダウ)」と呼ばれていました。米国の通信社ダウ・ジョーンズ社の計算式に基づく指数だったのです。


米国のNYダウが現在30社程度での株価指数を算出していますが、NYダウが始まった時はもちろん、東証ダウの計算が始まった頃でさえ、人々の手元にはそろばんや計算尺程度しかなく、電卓などどこにもありませんでした。ですから、株価指数の算出はできるだけ少ない銘柄数で、簡単に計算ができる必要があったのです。株価指数というのは銘柄の単純平均ではないことはご存知ですよね。日経平均株価(以下、日経平均)が3万円になったのに、日経平均を構成する銘柄に3万円を超える株価の銘柄など見当たりません。ダウ式というのは、増資や指数の銘柄入れ替えなどで平均の継続性がなくならないようにするための「除数」を計算する仕組みのことです。しかも、過去に遡らず、その日の変化を元に新しい除数を計算すれば良い方法です。電卓すらない時代に計算量を少なくしながら適切に継続性のある(つまり昨日と比べて今日の指数値でリターンを計算しても良いようにする)指数を作ったのがダウ式でした。


そして、1969年から東証が時価総額平均で1部上場銘柄全てを算出の対象とする(つまりコンピュターが必須の)指数を発表するようになり、70年から「東証ダウ」が日本短波放送(現在の日経ラジオ社)に引き継がれ、75年から日経ダウとなりました。さらにダウ式の計算方法を改良し、85年から「日経平均」と呼ばれるようになりました

日経225

 

日経平均ってどういう特徴があるの?

日経平均はそもそも「できるだけ簡単に計算する」というダウ式の流れを汲んでいますから、時価総額の大きさを考慮しないという点においては「単純平均」です。一方で、今では東証1部だけでも2,187銘柄(9月17日現在)もあるのですから、そのうちの225銘柄でなんとか日本を代表する指数であろうとするためには、銘柄選択が大事になります。日経平均はたった225銘柄で、その10倍の銘柄数の市場の動きを示す指数になろうと努力しているのです。ですから、銘柄選定には注目が集まり、毎年10月に定期見直しがあるのです。流動性の高い銘柄で、日本の上場企業の産業構造を代表するように銘柄数を割り振り、合併や上場廃止にも対応しなければなりません。


少々専門的な話ですが、日経平均は先物が上場されていますから、市場にはたくさんの裁定業者(アービトラージャー)が参加しています。これは指数と同じ現物バスケットを保有し、先物市場が買われすぎたら先物を売り現物を買う、先物が売られすぎたら逆に現物を売り先物を買うことで利益を目指す金融業者(あるいは投資家)です。同じように日経平均に連動するETFも実際の指数(日経平均)と同じ動きになっていない場合は(秒単位で)裁定取引によって調整されるはずです。


さて、日経平均に日本を代表する企業が含まれるよう銘柄選定する、いわゆるポートフォリオの入れ替えがしばしばあるのですが、日本の産業構造が変われば銘柄が変わります。戦後すぐは繊維産業が大きく、その後鉄鋼、自動車、電機、通信などと変わってきています。これにしたがって日経平均の銘柄リストは徐々に変わっているのです。銘柄選定は有識者・学識経験者などの会議を経て日経新聞が決めるのですが、たとえば日経平均連動型のETFを持っていれば、この仕組みで日本経済(あるいは日本の株式市場全体)に近いポートフォリオを持っているのと同じことになります。

日本の成長を牽引する日経平均 ~神山解説

熟慮された銘柄選定と算出方法でも、日経平均にはそれなりにクセがあります。簡単にいうと、日本株式全体に近いTOPIXと比べて、業種別の割合を見ると、銀行・自動車が少なめ、電機が多めです(9月16日現在)。また小売業が多いのですが、これは衣料販売大手が「値嵩株(株価が高い株)」であることに依存します。

日経平均とTOPIXの業種別構成割合の違い

日経平均とTOPIXの業種別構成割合の違い

※2021年8月末時点。日本経済新聞社「日経平均プロフィル」および信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成


日経平均は「株価の単純平均」が原則なので、これをポートフォリオだと考える場合、株価が高いほど(取引単位などで修正済みで)、株価の上下動が次の日の指数に与える影響が大きくなります。ちょっと不思議ですが、こんな仕組みです。株価が1,000円の銘柄が1%上昇したとすると、次の株価平均算出では1,010円で参入されますが、株価が100円の銘柄が1%上昇すると101円となります。他の銘柄が動かない場合、10円上がる銘柄があるのと1円上がる銘柄があるのとでは、平均値への影響は全く違います。

つまり、単純平均とは、ポートフォリオで言えば株価で加重されたリターンとなるのです。日本を代表するように銘柄を選んでポートフォリオを作っても、特定銘柄が急上昇しその重みが増してしまうと、日本を代表するというよりも「成長株を代表する」状態になりがちです。銘柄変更が原則として年1回であることもあり、有識者が日本を代表する銘柄を適切に選びその銘柄数で重みを調整しても、株価が上昇する銘柄が指数を牽引するグロースの性格を持つのは仕組みとして当然というわけです。ただし長期投資の観点では、このような差は小さくなります。

また、TOPIXでも株価が上昇する銘柄は時価総額が大きくなるのでウエートが増えてきます。また、セクターの時価総額ウエートは景気の上下動で変わりますが、長い目で見れば安定する(上がったものが下がり、下がったものが上がりやすい)傾向があります。日経平均の動きはTOPIXに比べるとグロース的ですが、タイミングに多少のずれがあるものの、どちらも2021年9月に入り31年ぶりの最高値を更新したことからもわかるように、長期的にはパフォーマンスがさほど変わらないと見ておいて良いでしょう。

この記事に関連する日興アセットのETF

日経平均株価 ©️日本経済新聞社 に連動するETF

1330 - 上場インデックスファンド225 (愛称:上場225)

1578 - 上場インデックスファンド日経225(ミニ) (愛称:上場日経225(ミニ))

TOPIXに連動するETF

1308 - 上場インデックスファンドTOPIX (愛称:上場TOPIX)


神山直樹

<解説者>
神山直樹(かみやま なおき)

日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト
2015年1月に日興アセットマネジメントに入社、現職に就任。1985年、日興證券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)にてそのキャリアをスタート。日興ヨーロッパ、日興国際投資顧問株式会社を経て、1999年に日興アセットマネジメントの運用技術開発部長および投資戦略部長に就任。その後、大手証券会社および投資銀行において、チーフ・ストラテジストなどとして主に日本株式の調査分析業務に従事。

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