神山解説

  • 2021年10月28日

vol.21 コロナ禍後のJ-REIT投資を考える



コロナ禍を過ぎて、J-REITや日本の不動産市場はどうなるか

コロナ禍では、オフィスビルでも飲食店や小売店からの家賃収入が滞ったり、一部のテナント企業がフロアを削減したりして、REIT(不動産投資信託)の分配金の原資が急減し減配するケースもありました。そのため不動産株もREITも価格が下落したケースが多いです。不動産市場も家賃収入減の恐れから下落傾向でした。


しかし、日本の不動産株やREIT(J-REIT)は比較的すぐに価格を戻しました。 米国の大型財政出動による製造業の収益維持(テナントも維持)や、ワクチン接種による正常化期待が強まったからです。J-REIT、不動産会社、不動産、いずれもテレワークによるテナント減のリスク、東京オリンピック後の市場心理悪化などが話題にはなりましたが、テレワークなどによるフロア削減は限定的で、ホテルなどを除き投資先にオフィスが多いJ-REITではオリンピック無観客の影響が大きいわけでもなく、実態としても心理としても緩やかな回復と正常化が進んでいます


今後、テレワークなどはコロナ禍前より増えると思うものの、自宅での仕事が難しい人のための住宅地に近い地域のビル需要の増加が見込まれるなど、投資先が多様化する期待も出てきています。都心の大企業は思いのほかオフィスを小さくせず、従業員に元に戻ることを望むケースも増えています。逆にこれを機会に一人当たりのオフィスを拡大するようにとの運動も始まっており、全くの逆風とは言えません。オフィスは順調で、J-REITや不動産大手が順調でも、不動産市場全体は二極化すると見ています。オフィスの拡張・縮小が起きる中で、優良物件の人気が高まる一方、住宅地に近いビルが人気となる分、都会の不人気の物件の収入は悪化するでしょう。J-REITや不動産株は正常化を超えて、米国財政出動の影響でさらに上昇余地があると見ています。ただし、不動産市場については、二極化を平均すると横ばいかもしれません

REIT

 

インフレ時代が来るとしたらJ-REIT投資はどうか

インフレによる金利上昇でREIT価格が下落するとの懸念もあります。このような下落はあっても一時的と見ます。REITの分配金原資は基本的には「家賃収入」です。インフレが続けば家賃も普通は上がると考えて良いでしょう。日本では家賃の改定は2年ごとの契約が多いので、インフレが起きたすぐには対応できないことがあります。それゆえ、インフレによる金利上昇がREITや不動産会社の金利費用だけを引き上げることになり、しばらく価格が低下することもあります。


しかし、インフレが継続すれば家賃収入も緩やかに増えていくと考えられますので、長期投資の観点では、REITはインフレと高金利にはニュートラル(中立的)と考えられます。ただし、インフレの時には、物件の二極化も進みやすくなります。人気のない物件は、家賃の価格交渉力が弱く、十分インフレを転嫁できないかもしれません。人気の物件は強気となります。インフレがない世界よりも物件の力の差が出やすくなります。そのため、REITの指数に投資する投資信託やETFであればあまり考える必要はないですが、個別のREITや不動産株式を保有する場合、インフレの可能性と銘柄選択には関係があると言えます。

個人投資家がJ-REITを保有する意味 ~神山解説

REITは株式や債券に続いて現れた比較的新しい資産です。REITは不動産からの家賃収入を分配しますので、利益を全ては分配しないで成長のための投資に使う不動産会社の株式への投資とは異なります。新規投資を(利益からは)しないので、新規事業リスクが少なく、同程度の不動産会社の株式に比べ低リスクとなると期待できます。

まずよく認識して欲しいのは、REITという、株とも債券とも違う個性を持つ資産があるということです。REITは株式のように値上がりを狙うよりも、分配金利回りを重視する方が適切だと思います。株式は、経営者に利益の配当しなかった部分を再投資して成長してもらうことを期待して投資されます。しかし、REITはその時の家賃収入に基づく利益は原則として分配します。そこが債券と似ています。しかし、債券と異なりREITには償還がないので元本を保全する力が強いというわけではありません。債券のように約束された金利もないので、物件を管理する力や入れ替える判断が分配金に影響を与えます。裏返せば、REITは株式と同様に「人間の努力と工夫」の成果を得る目的の投資と言えます。


まだ一般にはREITという言葉を聞いたことがないという方も多い状況ですが、今年9月で市場創設20周年のJ-REITは、さらに市場の整備が進み、これから知られていくことになるのかもしれません。個人が資産を築くために、株式、債券と並んでREITは重要な投資機会と考えています。

この記事に関連する日興アセットのETF

日本のREIT(J-REIT)に分散投資ができるETF

1345 - 上場インデックスファンドJリート(東証REIT指数)隔月分配型 (愛称:上場Jリート)

2552 - 上場インデックスファンドJリート(東証REIT指数)隔月分配型(ミニ) (愛称:上場Jリート(ミニ))

2566 - 上場インデックスファンド日経ESGリート (愛称:上場ESGリート)



神山直樹

<解説者>
神山直樹(かみやま なおき)

日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト
2015年1月に日興アセットマネジメントに入社、現職に就任。1985年、日興證券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)にてそのキャリアをスタート。日興ヨーロッパ、日興国際投資顧問株式会社を経て、1999年に日興アセットマネジメントの運用技術開発部長および投資戦略部長に就任。その後、大手証券会社および投資銀行において、チーフ・ストラテジストなどとして主に日本株式の調査分析業務に従事。

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