神山解説

  • 2022年2月1日

vol.24 アメリカ経済とFOMCと株価



株価が下がっているが、アメリカ経済に何が起こっているの?

2021年末に市場最高値を更新していた米株指数が1月に入り大幅に調整しています。投資家は、アメリカ株式から資金を引き上げるべきでしょうか?そんなことはないと思います。まずアメリカ経済について考えてみましょう。


アメリカは、コロナ・ショック(20年3月ごろ)から、トランプ前政権とバイデン政権による緊急事態対応の多額の財政政策を背景に、急激に回復し、コロナ・ショック前を大きく上回る成長を示しています。政府の一時給付金や失業手当の上乗せは、アメリカ経済を元に戻す以上の効果を持っていたのです。すでに支出された財政政策の効果は2023年にかけて続くと見ており、まだ需要は強いはずです。


しかし、現時点での最大の話題は、『インフレ』です。インフレ率が7%だったなどセンセーショナルな報道が一部にあります。そのため、金利上昇が心配されており(と言っても金利はさほど上がっていません)、株価が高値からは下落しています。需要が強いアメリカ経済そのものが今後揺らぐとは思えませんし、金利上昇は経済がコロナ禍から正常化するのに合わせているに過ぎないので、懸念は行き過ぎだとみています。

inflation

 

FOMCはなぜ注目されているのか?

FOMCとは、Federal Open Market Committee(連邦公開市場委員会)の略で、アメリカの金融政策を決定する会合のことです。パウエル議長が率いています。昨年までは楽観的だったアメリカ株式市場がこれほど心配性になった理由は、パウエル議長が、思いのほか緊急事態対応の政策の正常化を急いでいるように見え始めたことです。ひとつが2018年12月以来の政策金利引き上げです。コロナ禍対応での実質ゼロ金利を経済の正常化に合わせて引き上げていくのは自然なことです。市場は、引き上げのスピードや程度について、パウエル議長やFOMCの采配ぶりを気にしています。このところ市場は早すぎる対応を心配しているのです。


同様に、民間銀行による貸しはがし防止のために中央銀行が民間銀行が保有する国債などの資産を購入する政策(量的緩和政策の一部)を縮小するという正常化にも心配をしています。それゆえパウエル議長の発言などに株式市場が一喜一憂してしまうのです。

アメリカ 中央銀行 FOMC(連邦公開市場委員会)

これからのアメリカの株式市場の動きを読む ~神山解説

つまり、株式市場参加者は、アメリカ経済そのものが財政出動に支えられて強くなったことによるコロナ禍からの正常化を十分に楽観視していないことになります。このような不安や懸念は、企業の適切な程度の利益が発表されることなどで払しょくされていきます。株価指数をリードしている(指数の構成割合の高い)企業の先行きが明確になってきたり、不安視されていた利益水準が悪くなかったりすることが続けば、株価指数は回復しやすくなります。


アメリカ経済は財政政策の効果が続き、企業の売上げや利益が高まると思われているので、市場の心配や不安は遅くとも2022年後半には解消していくとみています。ただし、これはオミクロン株の流行が2022年の春ごろまでに収束し、その後変異株が医療崩壊を起こすような強いものではなく、治療薬が行きわたるなど、世界的に経済正常化が続くことを想定したものなので、そうならないリスクは残ります。

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2562 - 上場インデックスファンド米国株式(ダウ平均)為替ヘッジあり(愛称:上場ダウ平均米国株(為替ヘッジあり))

2568 - 上場インデックスファンド米国株式(NASDAQ100)為替ヘッジなし(愛称:上場NASDAQ100米国株(為替ヘッジなし))

2569 - 上場インデックスファンド米国株式(NASDAQ100)為替ヘッジあり(愛称:上場NASDAQ100米国株(為替ヘッジあり))

神山直樹

<解説者>
神山直樹(かみやま なおき)

日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト
2015年1月に日興アセットマネジメントに入社、現職に就任。1985年、日興證券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)にてそのキャリアをスタート。日興ヨーロッパ、日興国際投資顧問株式会社を経て、1999年に日興アセットマネジメントの運用技術開発部長および投資戦略部長に就任。その後、大手証券会社および投資銀行において、チーフ・ストラテジストなどとして主に日本株式の調査分析業務に従事。

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