- 2022年2月25日
vol.25 利回り上昇の時期に債券投資を考える
目次
個人向け10年国債の金利が約2倍に上昇したが、いま持つべきか
2022年2月募集分の個人向け10年日本国債の金利が、2021年12月募集時の0.05%から0.11%に上昇してきました。これは、コロナ・ショックからの正常化を進めたアメリカが、金融緩和から金利の正常化を始めたこと、財政政策の効果で需要が引っ張るインフレがしばらく続きそうなことなどに依存しています。
※利率は税引前。
金利が上昇している背景には、外国人を中心に日本の金利も同様に上昇するのではないかとの期待があると見ています。しかし、日本のコロナ・ショックからの正常化は相対的に遅れており、金融政策の正常化はまだ早いと考えられます。もし私の見方が正しければ、日本の金利上昇は一時的かもしれませんので、買うチャンスとは言えます。
アメリカやオーストラリアの国債利回りも上昇しているが、いま持つべき時か
日本以外でも、アメリカやオーストラリアの国債利回りも多少上がっています。外国債券の投資信託は買った方が良いか、との質問があるのですが、投資家自身の投資の目的をよく考えて適切であれば保有しましょう。
債券投資は基本的に元本の保全を狙うものです。値上がりに強い期待をするよりも、元本の安全性に気を配りつつ、為替によるリターンの追加を狙うものと考えましょう。投資のある部分を元本保全型にしておくことは投資行動として適切な人が多いでしょうから、その目的で外国債券を持つことは適切です。
アメリカはインフレが懸念されていますが、2023年にはインフレ率は2~2.5%程度に落ち着くとみています。金利もどんどん上がるとは予想していません。長期金利はそれを織り込んで、あまり上昇しないでしょう。政策金利が例えば0%から2%に上昇しても、長期金利は2%程度から4%に上がるという意味ではないのです。そのため、長期債*投資のタイミングとしては悪いとは思いません。また、為替は予想が難しいですが、円安傾向は続く可能性が高いとみています。日本のデフレ懸念脱却とゼロ金利からの正常化はもう少し先になるとみられるので、いまのところ円高トレンドが来るようには見えません。
*債券の満期(償還日)までの期間を残存期間と言い、残存期間が長い債券は長期債、残存期間が短い債券は短期債と呼びます。「悪い円安」時には、外国債券を資産形成に組み入れて収入ヘッジ対策を ~神山解説
外国債券(外債)に投資をすることは、タイミングではなく分散の意味が大きいと思います。その意味では、為替ヘッジを行うと日本国債などの円建て債券(円債)のパフォーマンスに近くなるので、リターンの上乗せを少し期待できるものでしかありません。外債投資と円債投資での分散効果は、為替ヘッジなしの外債投資で顕著になります。
では、為替をどう考えればよいでしょうか。このところ、日本が「悪い円安」になるとの懸念があります。「悪い円安」とは、日本のコロナ・ショックからの回復の遅れや一人当たり売上げの改善の兆しが見えないことで円安が続き、石油などの輸入物価が上がる一方で給与が上がりにくいので、実質的に貧しくなってしまう状態をいいます。
もし、日本の一人当たりの稼ぎが増えないため、あなたの給与も増えない恐れがあるのであれば、外国債券(為替ヘッジなし)への投資で収入ヘッジができるかもしれません。逆に円高で為替部分の評価額に影響が出て、投資の成果が振るわないときは給与が上がっているかもしれません。(単に平均的な話で保証はできませんが)これは円債投資と比較して外国債券投資の意味付けの一つになります。
この記事に関連する日興アセットのETF
外国債券に投資ができるETF
1677 - 上場インデックスファンド海外債券(FTSE WGBI)毎月分配型 (愛称:上場外債)1566 - 上場インデックスファンド新興国債券 (愛称:上場新興国債)
1486 - 上場インデックスファンド米国債券(為替ヘッジなし) (愛称:上場米債(為替ヘッジなし))
1487- 上場インデックスファンド米国債券(為替ヘッジあり) (愛称:上場米債(為替ヘッジあり))
2843 - 上場インデックスファンド豪州国債(為替ヘッジあり) (愛称:上場豪債(為替ヘッジあり))※2022年2月17日上場
2844 - 上場インデックスファンド豪州国債(為替ヘッジなし) (愛称:上場豪債(為替ヘッジなし))※2022年2月17日上場
<解説者>
神山直樹(かみやま なおき)
日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト
2015年1月に日興アセットマネジメントに入社、現職に就任。1985年、日興證券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)にてそのキャリアをスタート。日興ヨーロッパ、日興国際投資顧問株式会社を経て、1999年に日興アセットマネジメントの運用技術開発部長および投資戦略部長に就任。その後、大手証券会社および投資銀行において、チーフ・ストラテジストなどとして主に日本株式の調査分析業務に従事。
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