神山解説

  • 2022年3月23日

vol.26 「ロシアのいない世界」の世界株式をどう見ていくか



世界株式へのショックは一過性とみる理由

世界株式への分散投資を考える時、西側諸国からの制裁とロシアの報復で、「ロシアのいない世界」が長く続くケースが当面のメインシナリオと言えます。これは欧州とロシアの石油取引縮小など貿易面だけではなく、米国投資家などがロシア投資を引き上げる考えに呼応しています。指数算出会社のMSCI*は3月9日の取引終了時すべての対象指数からロシア株を除外しました。


世界株式に分散投資している投資家からみれば、ロシアへの投資は小さいと思われるので、手持ち資産へのショックは小さくかつ「一度きり」という意味で一過性だとみています。ロシアがいない世界になるために、石油価格上昇やレアメタルなど原材料不足が起こるのですが、影響は一時的でしょう。つまり石油価格上昇は100ドル台で定着するとしても200ドル、300ドルと上がっていくのではないとみています。また、レアメタルも政府補助などを活用しながらロシア以外からの調達に徐々に置き換えたり、別の材料を利用したりすることが考えられます。つまり、制裁をした政府が適切に補助や保証をすれば、一過性のショックも吸収可能だとみています。


株式市場が揺らいだのは、ロシアの侵攻に驚いた各国政府が制裁ばかり行って、その悪影響を救う方法を伝えてこなかったからでしょう。株式市場は政策を促すように株価は低下します。これが政策催促相場と呼ばれます。今後消費拡大や撤退企業への補助などが行われれば、世界経済が壊れるリスクはさほど高くありません。はっきりしないことが市場をいら立たせている状態です。

*MSCI:モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナルの略称。MSCIが算出する株価指数のETFや投資信託が世界各国で多数作られており、国際的な株式投資におけるベンチマークとして広く利用されている

世界株式に分散投資

 

ロシア国債がデフォルトするとマーケットにどんな影響がある?

ロシアやBRICs*に投資している人から見れば、ロシア問題は大変大きな問題です。早晩デフォルトする可能性が⾼いと指摘されています。ロシア側(政府や企業)は⽀払う⼒も意志もあるらしいのですが、国際的な決済システムからの締め出しという制裁のせいで⽀払いが滞ることがあってもおかしくありません。

*BRICs:著しい経済成長の発展が見込まれる新興国の代表国として、ブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)の4カ国の英語の頭文字を並べたもの。または、南アフリカ(South Africa)を加えてBRICSとすることもある。


ロシア国債のデフォルトは、世界の市場からみれば金融システムの依存度が⼩さいのですが、集中投資をしている⼈や商品取引の観点からは重⼤な問題です。制裁に起因するデフォルトがあるとしても、紛争と制裁の短期間での解決は難しく、制裁側の政府からの救済策を議論する可能性もある一方で、市場参加者は他の投資機会を探すことで不確実性リスクを避けることになりそうです。

いま最も気がかりなのは、主要国の政策対応~神山解説

いまの世界情勢と株式市場の状況について、特に気になるのは主要国の政策です。そもそも制裁という政策で多くの企業が巻き込まれているので、コロナ禍の行動制約と補助金の組み合わせと同じく、制裁と被害救済がパッケージとなるべきです。90年代の日本ではバブル崩壊と経済政策の追いかけあいで、しばしば株価下落と金利低下を政策催促相場と呼んでいました。日銀の金利引き下げと財政出動を「催促する」市場心理というわけです。


現状では、バイデン政権が米国内での石油増産を企業に依頼したそうです。脱炭素政策から逆方向の方針でもいったんはガソリン代など日々の生活を支えることが大事です。ロシアへの制裁が米国のグロース株に与える影響は小さいはずなのですが、大きく下がる要因は、人々の不安に政策が応えていないと解釈できるのです。

2021年まで株価が高すぎて買いにくいと思っていた投資家はこのような下げは買いのチャンスと言えます。もちろん世界の中央銀行や政府が正しく対応するかわからないというリスクが残るのですが、普通うまくやるはずと考えてよいのではないでしょうか。投資家の判断にはなりますが、高くて買いたくなかった人にとってはちょうどよい考えどころだと思います。

この記事に関連する日興アセットのETF

世界の株式に分散投資ができるETF

1554 - 上場インデックスファンド世界株式(MSCI ACWI)除く日本

新興国の株式に分散投資ができるETF

1681 - 上場インデックスファンド海外新興国株式(MSCIエマージング)

神山直樹

<解説者>
神山直樹(かみやま なおき)

日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト
2015年1月に日興アセットマネジメントに入社、現職に就任。1985年、日興證券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)にてそのキャリアをスタート。日興ヨーロッパ、日興国際投資顧問株式会社を経て、1999年に日興アセットマネジメントの運用技術開発部長および投資戦略部長に就任。その後、大手証券会社および投資銀行において、チーフ・ストラテジストなどとして主に日本株式の調査分析業務に従事。

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