神山解説

  • 2022年7月28日

vol.30 いまフランス国債を買う理由



意外に魅力的なフランス国債の利回り水準

フランス国債の利回り水準をよく見たことがある人はそれほど多くないでしょう。10年国債利回りは、6月末時点でフランスは1.92%、ドイツは1.34%であり、フランスがドイツより高い傾向は長く続いています。

2010年の欧州危機でEU*各国のクレジット差が再確認されて以来、ベンチマークであるドイツとの利回り格差が生じています。その中でフランスは経済・外交・軍事などでEUをリードする国であることから、EUの主要債券市場ではドイツに次ぐ低い利回り(高い信頼)で市場に評価されています

EU域内でみると、フランスには大手銀行、世界的な大会社などがあり、経済政策にも信頼感があります。対GDP比でみた債務比率は高い傾向があり、ドイツほど厳しい財政規律を課していない面が、少し高めの利回りとなっている理由かもしれません。

*欧州連合、European Unionの略称。ヨーロッパの政治や経済における国家共同体であり、27カ国が加盟している(2022年6月末時点)

EU

 

エネルギーからみたフランスの優位性

ロシアのウクライナ侵攻で、欧州各国は対ロシア制裁に踏み切らざるを得ず、結果として石油や天然ガスの不足が露呈しています。特にドイツはロシアのエネルギー依存度を高くしていたことで、経済への悪影響が大きいと考えられています。

一方、フランスは原子力を中心に電力を供給しています。つまり、エネルギー面でロシア依存の少ないフランスは、ロシア制裁に関わる地政学リスクにおいて他国と比べて優位性があるといえます。ロシア問題の観点からだけで見ると、フランスの利回りがドイツより高いのは良い投資機会に見えます。

金利が上がるときに、国債を買うのは問題ないのか? ~神山解説

一般に国債に投資する場合、金利上昇は一時的な価値の下落(償還まで保有すれば損失は限定されますが)に繋がります。フランスの場合、欧州中央銀行であるECB の利上げが想定され、短期金利はこれから上昇する可能性がありますが、長期金利は今後のユーロ圏*のインフレをかなり織り込み、すでに上昇したと考えられます。

*EU加盟国27カ国のうち、統一(単一)通貨ユーロを導入している19カ国(2022年6月末時点)で形成される経済圏。ユーロ圏では欧州中央銀行(ECB)が通貨政策を担う。

また、ETF(上場投資信託)や投資信託を用いた債券投資では、償還までの期間が短い債券を売却し新しく償還までの期間が長い債券を買うと、ファンドの利回りが上がることが多いです。金利上昇が穏やかな場合、ファンドのクーポン収入が増えていき、金利上昇の悪影響を打ち消すので、元本保全の力があるといえます。

長期保有と物価の安定(下がる必要はない)により、債券を自動的に入れ替えていくファンドへの投資は債券投資の本質である元本保全(保証はされませんが)と、外国債券投資の目的である日本より高めの金利収入(ただし、リスクが伴います)を実現しやすくなります

いまフランス国債を買う理由

この記事に関連する日興アセットのETF

長期のフランス国債に投資ができるETF

2861 - 上場インデックスファンドフランス国債(為替ヘッジなし)※2022年8月17日上場予定

2862 - 上場インデックスファンドフランス国債(為替ヘッジあり)※2022年8月17日上場予定



神山直樹

<解説者>神山直樹(かみやま なおき)

日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト
2015年1月に日興アセットマネジメントに入社、現職に就任。1985年、日興證券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)にてそのキャリアをスタート。日興ヨーロッパ、日興国際投資顧問株式会社を経て、1999年に日興アセットマネジメントの運用技術開発部長および投資戦略部長に就任。その後、大手証券会社および投資銀行において、チーフ・ストラテジストなどとして主に日本株式の調査分析業務に従事。

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