神山解説

  • 2023年1月25日

vol.36 今年どうみる?Jリート市場



Jリート市場と日銀

Jリート市場はここ数年間を通して見ると株式市場と比べて冴えない動きです。Jリート市場の動向を示す東証REIT指数のパフォーマンスは、2022年では8%程度の下落、2022年12月末から2023年1月第2週までも3%程度の下落でした。

2022年12月に日本銀行(以下、日銀)の唐突な長期金利誘導幅の拡大があり、一部で緩和姿勢の後退とJリート買付額*の縮小懸念に繋がりました。しかし1月の政策決定会合で長期金利誘導幅の拡大とは別の緩和政策の拡充が示されて、緩和後退の懸念は一旦なくなりました。Jリート市場は今年前半は、日銀の政策意図を掴みきれずに価格変動が大きくなりそうです。しかし、後半は落ち着きを見せてくると考えています。

* 日本銀行は一定の条件のもと2010年12月よりJリート(不動産投資法人投資口)の個別銘柄の買付を行っています。
  指数連動型上場投資信託受益権等買入等基本要領 : 日本銀行 Bank of Japan (boj.or.jp) 

INFLATION/DEFLATION

 

金利が上昇しても世界のリート市場への影響は限定的

昨年の世界のリート市場の下落の主因は世界的な金利上昇懸念、つまりリートの金利負担増大懸念でした。通常リート資産の半分程度は負債で支えられていますので、金利上昇で負債の返済額が増えることで目先の分配金が減る恐れがあるからです。

ただし、長期的には、金利が上がる理由はインフレなので、賃料を引き上げることができるはずです。米国ではオフィスの賃料は1年更新のケースも多く、比較的早く既存のオフィスなどの家賃の引き上げが進んでいきます。日本であれば2年程度かかると考えられます。

世界的なインフレとアメリカなどの金利上昇は今年前半に落ち着く(金利が下がらないが、ある時点から上昇しなくなる)でしょう。アメリカFRB(連邦準備制度理事会)の利上げが3月までに頭打ちとなり、6月ごろまでに日銀の動きが緩やかと分かれば、リートや金利市場に負債コスト面からの安心感が戻ると見ています。

Jリート市場不振の理由として、コロナ禍からの回復の遅れがありました。オフィス全体の空室率が高止まりし、賃料の引き上げも困難なケースが見受けられました。市場は金利上昇で短期的には負債コスト増大をリートの悪材料と考えますが、インフレを背景とした家賃改定が進む今後2年程度のうちには、分配金の回復が期待されます。
価格下落により、昨年末3.9%程度となったJリートの分配金利回りは、賃料改定のある2年程度先まで見越せば、分配金の増加で価格が戻るとみています。そのため、今後の投資環境の改善を前提とすれば、Jリートは長期的に割安と考えます。

世界のリート市場

リート投資は分配金利回りありきで考える ~神山解説

リート投資は、価格上昇を狙うと言うよりも、分配金利回りの高さが大事だと考えます。たとえばアメリカのリートは金利に比べて分配金利回りが十分高くない状態が続いていますが、これを乗り越えるためには、FRBの金利政策が引き上げから横ばいに転じることが待たれます。

一方で、日本では、短期金利の引き上げはまだ先で、長期金利誘導幅の拡大も緩やかであり、あっても0.5%から0.75%に上昇する程度だと見られます。すぐにとは言いませんが、仮に日銀のJリート買付額が減るような政策変更があっても、Jリートの分配金利回り上昇で銀行などの買付が増え、価格下落はあっても一時的だと見ています。

この記事に関連する日興アセットのETF

Jリートに分散投資ができるETF

1345 - 上場インデックスファンドJリート(東証REIT指数)隔月分配型 (愛称:上場Jリート)

2552 - 上場インデックスファンドJリート(東証REIT指数)隔月分配型(ミニ) (愛称:上場Jリート(ミニ))

2566 - 上場インデックスファンド日経ESGリート(愛称:上場ESGリート)

神山直樹

<解説者>神山直樹(かみやま なおき)

日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト
2015年1月に日興アセットマネジメントに入社、現職に就任。1985年、日興證券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)にてそのキャリアをスタート。日興ヨーロッパ、日興国際投資顧問株式会社を経て、1999年に日興アセットマネジメントの運用技術開発部長および投資戦略部長に就任。その後、大手証券会社および投資銀行において、チーフ・ストラテジストなどとして主に日本株式の調査分析業務に従事。

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