神山解説

  • 2023年10月4日

vol.44 長期で金融商品を保有するときにお伝えしたいこと



売りたくなるのは、投資対象に問題があるかも。

長期投資でも、逃げるべき時があるのではないか、持ちっぱなしでは何かチャンスを逃すのではないかなどの不安から、投資信託を「いつ売ればいいんですか?」という質問をしばしばいただきます。

このような不安が大きいのは、投資対象に問題があるからではと考えています。多くの場合、高いリターンを期待することができそうなテーマ型投資信託や新興国(単一国)に投資をするときに、不安が高まる傾向にあります。

もちろん、その国やテーマがより成長するのかどうかを正確に判断するのは容易ではありません。ファンドマネージャー並みの知識、経験、分析の時間や手間が必要です。仮に別の国に乗り換えても同じ疑念にさいなまれ、分析し、情報を獲得し、自ら判断する必要があります。特に新興国は政治リスクが証券投資に重大な影響を与えますので、国際政治に強くなる必要があるでしょう。

めったにありませんが、当初の投資した理由がなくなるときに手放すのは適切と考えます。例えばエマージングのある国の株式に投資した人がその国の成長に疑念を強めれば、別の対象に投資することが望ましいことになります。

地政学リスクを含むカントリーリスクが国によりまちまちであれば、価格変動リスクを互いに打ち消しあいやすくなります。長期投資の場合、投資先を分散して世界株式に幅広く投資する投資信託であればあれこれ心配する必要は減ります。「人間の努力と工夫」が世界経済を成長させていることについて投資家本人が自信を失わない限り、保有し続けるという選択肢を選ぶことが多いでしょう。

買う理由は明確か。

 

パフォーマンスが悪いときは、投資理由の振り返りと再確認を。

もう少し具体的にお話します。「売る」可能性がある狭い範囲の国やテーマに集中して投資する場合、買った理由を記録しておくとよいでしょう。長期投資を前提とすれば、買う際に目先の景気の上下動を理由にしていないはずです。

例えば、産油国の立場を利用して適切に新しい産業に投資し、中進国から先進国に成長するという理由にピンときてある国の株式インデックスファンドに投資したとします。しかし、石油など化石燃料の使用が制限されてくると、石油があること自体の信頼は揺らぐかもしれません(実際には新興国にとって石油や石炭はまだしばらく重要ですが、一例として説明しました)。このようなハイレベルな判断をして、石油関連よりも他に成長の源を持つ国の株式が欲しくなるとすれば、売り時かもしれません。

ポイントは、長期投資の理由を考え記録し、特にパフォーマンスが悪いときに振り返って投資の理由を再確認し、現状のパフォーマンス悪化がもともとの投資を信じる根拠を壊すものなのか、それとも一時的な低下で、本来信じているところとは関係ないか、ひどく大きな問題ないと思えば、長期投資継続となります。
このような確認作業は、決まった月に行うなど固定的にではなく、投資したファンドのパフォーマンスが悪いときに行ってください。何かおかしいとしても自分の投資の目的を他の手段で実現できなさそうであれば、乗り換える必要はないでしょう。

ただし、自分の自信が揺らがないものの、解約や市場の値動きによってファンドの残高が大幅に減ると、ファンドマネージャーが運用を継続できなくなる償還リスク(信託期間より前に運用が終了すること)があります。償還されると、自分の判断が正しくてもその後のパフォーマンス改善に立ち会えないことになります。残高の急減で残高が非常に少ない場合、類似の他のものにするか、別の投資機会を探すことを一応は視野に入れておきましょう。

投資したファンドのパフォーマンスが悪いときは、投資理由の振り返りと再確認を。

長期投資と分散は切っても切り離せない ~神山解説

結局、パフォーマンスに一喜一憂しないで、世界の人々の努力と工夫の成果を共に獲得するためには、最初にお伝えしたように世界全体への分散投資をお勧めします。自分が強い自信があるテーマであれば、それに投資したり、関連する国に投資しても良いのですが、さまざまな経験したことのない事態について分析し、判断を迫られることになります。

仮に信じる投資先があれば、そのテーマや国に乗ってもいいでしょう。しかし、かなりの専門性を持ってその先行きについて考え続けることが求められます。本来ファンドマネージャーに任せるところを自分でやるということになると自覚していれば、リスクを取ることができると思います。

この記事に関連する日興アセットのETF

海外株式に分散投資ができるETF

1554 - 上場インデックスファンド世界株式(MSCI ACWI)除く日本 (愛称:上場MSCI世界株)

1680 - 上場インデックスファンド海外先進国株式(MSCI-KOKUSAI)(愛称:上場MSCIコクサイ株)

1681 - 上場インデックスファンド海外新興国株式(MSCIエマージング) (愛称:上場MSCIエマージング株)

神山直樹

<解説者>
神山直樹(かみやま なおき)

日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト
2015年1月に日興アセットマネジメントに入社、現職に就任。1985年、日興證券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)にてそのキャリアをスタート。日興ヨーロッパ、日興国際投資顧問株式会社を経て、1999年に日興アセットマネジメントの運用技術開発部長および投資戦略部長に就任。その後、大手証券会社および投資銀行において、チーフ・ストラテジストなどとして主に日本株式の調査分析業務に従事。

【最新のマーケット解説はこちら】
KAMIYAMA Seconds!90秒でマーケットニュースをズバリ解説

●掲載されている見解は当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。また記載内容の正確性を保証するものでもありません。
●当資料に掲載する内容は、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。
●当資料は、投資者の皆様に「上場インデックスファンド」へのご理解を高めていただくことを目的として、日興アセットマネジメントが作成した販売用資料です。
●投資信託は、投資元金が保証されているものではなく、値動きのある資産(外貨建資産は為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、市場取引価格または基準価額は変動します。したがって、投資元金を割り込むことがあります。投資信託の運用による損益はすべて投資者(受益者)の皆様に帰属します。なお、投資信託は預貯金とは異なります。
●投資信託毎に投資対象資産の種類や投資制限、取引市場、投資対象国等が異なることから、リスクの内容や性質が異なります。金融商品取引所に上場され公に取引されますが、市場価格は、基準価額と変動要因が異なるため、値動きが一致しない場合があります。
●リスク情報や手数料等の概要は、一般的な投資信託を想定しており、投資信託毎に異なります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)などをご覧ください。