- 2024年3月26日
vol.49 ついに日銀がマイナス金利解除。金利のある世界はどうなる?
これから世の中はどう変わるのか
金利のある世界が来る、と言われるようになりました。そもそも金利がない世界とは本来おかしな世界です。マイナス金利というのは始まるまではそもそも可能なのかすら分からないほどでした。もちろんマイナス金利は銀行と日銀の間にだけあったもので、預金やローン金利がマイナスにはなりませんでしたが。
金利がある普通の世界が来るからと言って、投資の対象やあり方を大きく変える必要はないでしょう。債券の価格が下がりやすくなりますが、短期債や預金で元本保全を図っても良いでしょうし、長期的には債券ファンドに高い金利の債券が含まれるようになるので、緩やかな金利上昇では円債のファンドであってもあまり大きな損失につながらないでしょう。
金利がない世界とある世界の一番の違いは、金利が経済の新陳代謝を生み出すことにあります。金利がゼロであれば、売上が大きく落ち込んでいる会社でも、金利を返さなくてよいので(実際にゼロになった会社はないでしょうが)、赤字でなければ生き残ることができます。一見幸せなようで、強くなるべき会社が十分シェアを獲得できず、だれも儲からない経済になります。金利がある世界では、競争は厳しくなります。しかし、弱い会社のシェアを強い会社に渡せば、強い会社はもっと人を増やし、設備を増強するでしょう。金利を払っても利益がある会社が増えることで、経済が筋肉質になります。賃金を引き上げてでも従業員を増やして会社の規模を大きくできます。
退職金に頼らないという雇用環境が日本に必要
このためには、労働市場の流動性が高くなる必要があるでしょう。弱い会社の従業員がその会社にしがみつくしかない場合、コロナ禍のような嵐でひとたび景気が悪化すれば、政府は雇用調整金などで雇用を守ろうとしてしまいます。会社が社会保障機関になると、景気悪化を調整せずに、そのまま現状維持でやり過ごそうとしてしまいます。しかし、これをヒトが余っているときに改革しようとするのは難しいです。
いまのように経済が回復し、転職者の平均給与が上がるようなときに、パートやアルバイトがもっと働けるように、正規雇用者が退職金を当てにして一つの企業だけに頼らないように、税制改革が求められます。このように、経済を支える企業の経営が筋肉質になることを支援するような政策が待たれます。
クララが立ち上がる日 ~神山解説
アルプスの少女ハイジの友達にクララがいます。彼女は、長く病気でしたが、車いすが壊されることをきっかけに立ち上がり歩けるようになります。裏返すと、病気はある程度治っていたのに自分に自信がなく、なかなか立ち上がれなかったように見えます。これは、いまの日本経済に似ています。
日本は、コロナショック時の各国政府の財政出動による外需の拡大とコロナ禍からの正常化による内需の急回復で、ヒト・モノ・カネが余剰から不足に転換する状態になっていました。つまり、賃金を引き上げ、設備を増やし、売上を増やせる時期がきていたのです。23年はそれでもなかなか賃金上昇が加速せず、設備投資も増えませんでした。経営者には売上が増える自信がなかったのかもしれません。
ところが、23年10-12月に急激に設備投資が増えました。GDP成長率はこの時期マイナス成長だと思っていたら、設備投資が急に立ち上がってきました。さらに、春闘の結果、ベースアップが想定以上に高い水準になりそうで、24年は給与増加が物価上昇を上回りそうです。いよいよクララは立ち上がりつつあります(まだ賃金の上昇の成果は従業員に行きわたっていませんが)。24年には、賃金上昇がインフレを超えることでさらに消費が拡大するとみています。
クララは立ち上がるだけではなく、その後一人で歩き出します。日本経済も、例えば金利のある世界で企業の合従連衡が進む、企業が人手不足で人を取り合い、労働市場の流動性が高まるなど、景気が悪くてできなかった筋肉質な経営への体質改善が進めば、輸出に頼らなくとも自らの力で歩けるようになるはずなのです。それはもうすぐ見えてくると期待しています。
この記事に関連する日興アセットのETF
日本企業に分散投資ができるETF
1308 - 上場インデックスファンドTOPIX(愛称:上場TOPIX)1330 - 上場インデックスファンド225 (愛称:上場225)
1578 - 上場インデックスファンド日経225(ミニ) (愛称:上場日経225(ミニ))
1592 - 上場インデックスファンドJPX日経インデックス400 (愛称:上場JPX日経400)
1481 - 上場インデックスファンド日本経済貢献株 (愛称:上場日本経済貢献)
<解説者>
神山直樹(かみやま なおき)
日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト
2015年1月に日興アセットマネジメントに入社、現職に就任。1985年、日興證券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)にてそのキャリアをスタート。日興ヨーロッパ、日興国際投資顧問株式会社を経て、1999年に日興アセットマネジメントの運用技術開発部長および投資戦略部長に就任。その後、大手証券会社および投資銀行において、チーフ・ストラテジストなどとして主に日本株式の調査分析業務に従事。
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