この27年間、筆者は毎日スコットランドのファイフとエジンバラのあいだを、地域の象徴となっているフォース橋を渡る小さな通勤電車で行き来している。この日課には馴染んだ心地よさがあり、これからの1日についてじっくり考えたり、帰路では慌ただしい資本市場への対応にまたもや追われた1日からの解放感に浸ったりすることができる。
先進諸国が引き続きインフレと経済成長の低迷に苦しむなか、アジアはインフレが十分に抑制されており、金融政策サイクルが欧米諸国に先駆けてピークを迎えているなど、その見通しの明るさが際立っている。
ヘルスケア・サービスや製品に対する需要に陰りはみられない。世界的に人口高齢化が進んでいる一方、糖尿病やがんなどの慢性疾患の発症リスクを抱える人が増加している。人々の寿命が延び、よりアクティブな人生を送っているなか、治療や予防のための保健サービスのニーズも高っている。
アジアの消費トレンドは、かつて欧米の影響を強く受けると考えられていたが、もはやそうではない。 アジアの消費者は多様な嗜好および影響力を持っており、世界のトレンドをただ吸収するのではなく、影響をおよぼし始めている。アジアのブランドは、この新しいパラダイムに良く対応できる状況にあると当社ではみている。
2022年初頭以降、インフレ・金利ショックから戦争・コモディティ・ショック、英国の年金危機、そして今回の米国の地方銀行危機に至るまで、市場を動かす重大な出来事が立て続けに発生してきた。こういった歴史的な出来事は、予想通り、市場センチメントと株価バリュエーションの重石となった。
4月の米国債利回りは比較的小幅なレンジで推移し、中期債がアウトパフォームした。月末の利回り水準は、2年物の指標銘柄で前月末比約0.02%低下の4.01%、10年物の指標銘柄で同0.05%低下の3.43%となった。
労働力と経済成長が不足している世界において、これら両方を供給できるアジアはより長期的に非常に有利な立場にあるとみている。現在の米国主導の利上げサイクルが終わり、欧米のより脆弱な金融機関の経営不安が払拭されれば、アジアの見通しは明るいだろう。アジア市場は、現在バリュエーションが魅力的な水準にある。
アジアの銀行は、各国の利上げの規模が小さいこと、金融規制当局による慎重な舵取り、銀行の高い自己資本比率および総資産に占める有価証券投資比率の健全性を勘案すると、現在の世界的な銀行混乱に巻き込まれる可能性は低いと考えられる。このことは、長期的にはアジアの銀行界にとって好材料であり、魅力を高めるものと考えている。
3月半ばに米国で地方銀行が破綻して以来、続いてすぐにCredit Suisseが混乱に陥り結果的にUBSとの合併を余儀なくされるなど、市場の状況はかなり大きく変化してきた。政府が迅速かつ大規模な対応を見せる一方、中央銀行はある程度通常運行で金融引き締めに戻るメッセージを発しようとしたが、市場はそれを信じてはいないようだ。
現地通貨建てアジア債券は、インフレ減速を背景に域内各国の中央銀行が利上げサイクルを終了するのに伴い、好パフォーマンスが予想される。良好なファンダメンタルズ、質の高さを伴う利回り、低い外国人保有比率といった他の要素も、この債券資産クラスの追い風になると考える。