はじめての投資Q&A

  • 2019年09月26日

投資のあとに何かする必要はありますか?

投資初心者

当連載では、これから投資を始めようと考えている資産形成世代のみなさまのお悩みや投資のギモンについて、日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト神山直樹がお答えしていきます。 これまで、投資対象や投資方法について詳しく学んできました。今回は実践編のお悩みとして、「投資をしたあと」についてがテーマです。具体的にどうしたらいいのか、一緒に考えていきましょう。

資産状況のチェックはしたほうがいいの?

目的と年齢によりますが、資産形成世代が引退後の潤いのある生活のために投資する場合、1年に1回程度、投資先の評価損益を確認するくらいでよいと思います。確定拠出年金に入っていらっしゃれば1年に1回のレポートが送られてくることが多いと思いますが、そのような機会にご自身の運用状況が全体でどうなっているのか考える頻度がよいのでしょう。

投資を始めるときに、「1年でどのくらい値上がりするか」といったように、値上がりそのものを目的として1年程度の投資期間を想定している方もよく見かけますが、その場合はもっと頻繁に投資状況を見直して、短期的な景気サイクルやニュースへの反応を把握したほうが良いかもしれません。ただ、この連載では「投資は将来の“潤いのある生活”のため」と当初よりお伝えしてきましたので、投資をするときに値上がり益だけを目的として、頻繁に見直しをすることをおすすめするわけではないです。

 

保有する投資商品の評価額で、損失や利益が出たらどうしたらいいですか。

よくある間違いは、損失よりも利益が出たときです。投資を始めて利益が出ると、多くの人は「はやく利益を確定したい、売りたい」と思います。しかし、投資の目的が変わらなければ売る必要がないことが多いです。

例えば、引退世代が、債券よりも高い利回りが期待でき、基本的に償還がない想定でREITに投資したとしましょう。金利低下などでREITに人気があつまり価格が上がると、評価益が大きくなって売りたくなります。このあとまた価格が下がって、買った時の価格に戻るかもしれないと思うからです。しかし、これは心理的なものであって、正しい考え方ではありません。
一度売ってしまうと、同じもの(この場合はREIT)は当初買った時の値段ではもう手に入れることはできないのです。同じものを買うためには、高い値段を払わなければなりません。仮にいったん売って後から値下がりすることを予想したとしても、その予想が当たらなければもっと高い値段で買うことになります。つまり、いつの間にか「長期で利回りを得る」目的が、「目先の動きを当てて儲ける」に変わってしまいます。もしそのままREITを持っていれば、そのまま安定した分配金が期待できたかもしれませんが、売却してしまえばそれはなくなってしまいますね。つまり、将来的に生み出すキャッシュフロー、ここで言うと今後得られるであろう利回りのことは一切考えていないことになります。一時的な評価損失も逆に考えれば同じことです。

投資の目的が変わったり、同じ目的でよほど新しい商品が開発されたりしない限り、長期投資をする中での売買の必要性は低いです。評価損益で売買することは、市場を当てることと同じと思ってよいと思います。利益や損失が出たときは、最初の目的に立ち返ってみましょう。

現役世代が投資したあとに、気を付ける点はありますか。

投資したとたんに市場が大きく動いたり、ニュースの中でもネガティブな話ばかりに目がいったりして、後悔したり悩んだりすることがあります。景気減速や後退、世界の紛争、家族や友人の不用意な「助言」などもしばしば心を乱します。

しかし、投資の目的は引退後の“潤いのある生活”ですから、現役世代であればそんな先の引退後のことを誰も予想できないはずです。つまり、たいがいのニュースや景気(サイクル)は、これからの投資期間からみれば短期的なはずです。個人投資家の長期投資の基本は、世界全体の経済が長期的に人間の「努力と工夫」で成長を続ける、と信じる点にあります。これはニュースにはなりませんね。もし世界中の様々な資産に幅広く投資をしていれば、時間が味方をすることに信頼を置いてよいと思います。


まとめ

投資をしたあとは時間が味方になる。目先の評価損益にとらわれず、当初の投資の目的を忘れずに!



【次回】マーケットニュースの本質や注意点が知りたいです(2019年10月24日掲載予定)



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神山直樹

神山直樹(かみやま なおき)
日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト
2015年1月に日興アセットマネジメントに入社、現職に就任。1985年、日興證券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)にてそのキャリアをスタート。日興ヨーロッパ、日興国際投資顧問株式会社を経て、1999年に日興アセットマネジメントの運用技術開発部長および投資戦略部長に就任。その後、大手証券会社および投資銀行において、チーフ・ストラテジストなどとして主に日本株式の調査分析業務に従事。

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