神山解説

  • 2023年2月28日

vol.37  60歳、あなたの投資の目的は変わります



60歳からは資産の取り崩し世代

投資で一番大事なことは目的の設定と考えます。

個人のライフサイクルの中で投資の目的は変わります。特に会社員のライフサイクルは、定年で大きく変わるでしょう。会社員として報酬を生活の中心にしていた頃の投資の目的は、収入の一部を積み立て、少しリスクを取って将来の消費ため資金を「成長」させることが目的でした。

60歳から65歳は投資目的の変化に悩む時です。定年した人たちは、退職金は手に入りますが収入は減り始めます。子育てや住宅ローンの負担は減る一方、それまで見たことがない高額の資金、つまり退職金をどうしたらよいのか、投資に振り向けるべきなのか、所得減を補い消費に回すか悩むところです。

日本の平均的な企業は、60歳を定年とし、一旦退職させ65歳まで本人が希望すれば再雇用することが多いです。確定拠出年金への資金拠出はなくなりますが受け取りはせず、厚生年金は65歳まで受け取らない(という設定の人が多い)でしょう。多くの場合65歳を超えると(バイトやパートをするとしても)主に労働報酬で生活するのをやめ厚生年金を中心に生活することが多いでしょう。

そのため、退職金を獲得した60歳のあなたに最も大事なことは、投資の目的を「成長」から「取り崩し」に変えることです。

退職後の計画

 

退職金は、年金受給時期以降へつなぐような運用を心がける

退職金をもらう一方で、金額は減るとはいえ再雇用で生活を維持できる給与を受け取る人は、そろそろ投資をしないとな、と考えることが多いようです。

これまで投資をしてこなかった人ほど、投資とはマーケットの勉強をして相場観を獲得し一儲けすること、と勘違いします。しかし、勉強と称してドタバタ売り買いを繰り返す「投資」は、お楽しみのための投機にすぎないでしょう。

しかし、本来成長投資の段階であるはずの現役世代の時に投資をしてきていない60歳以降の投資は、「生活費を取り崩しながらも、長生きするときの潤いのある生活を目指して成長させる」ことが目的です。現役世代に投資を続けてきた人も長生きリスクは同じですが、退職金と共にある程度の投資成果も得られたところが違います。長生きリスクに対応する成長投資を多めに続けながら、一部の投資成果を取り崩しに切り替えることになります。

取り崩しを想定する運用商品の代表は、毎月・隔月分配などの高頻度分配の高配当株式やREIT(不動産投資信託、以下リート)を含む投資信託やETFです。

毎月分配は、市況が悪い時期には、投資元本を減らしてでも特別分配金(元本払戻金)を払うことがあり、「タコ足」などと揶揄されますが、「取り崩し世代」のニーズには合致しています。毎月給与で現金が入ってくる現役世代が分配金の頻度が高い商品を保有すると、分配金を改めて投資に回すので手数料などのコストを勘案すると非効率になります。

しかし、給与などの収入がなくなった世代では、投資資金を生活費に切り替える手段として高配当・高頻度の分配がある投資は有効です。資金の成長は主眼ではないが、取り崩しながらもその残りを少しでも成長に置こうとすることが趣旨です。

リートやリートを含む投信・ETFも、家を貸して家賃をとる大家さんになると考えれば、価格の上昇よりも分配金に興味を持てるはずです。リートは家賃を貯めて他の物件に再投資して成長させるのではなく、メンテナンス費用などを除き原則として投資家に利益を分配するので、取り崩し世代にぴったりなのではと考えます。

退職金をもらった後の取り崩しと投資信託やETFへの投資による分配金

60歳からの投資の目的を決めているか ~神山解説

投資で一番大事なことは目的を正しく設定することです。儲かりたいのは目的ではありません。いつごろ何に使うか、を考えることです。子供の学費などは投資で稼ぐものではありません。多くの場合、老後の生活に潤いを与えることが適切です。

老後とは、給与所得などがなくなるか、とても少なくなることです。60歳から65歳にかけて緩やかに変化する自分の収入と、これまでの投資成果や年金から今後の生活設計を確認し、隔月分配などのファンドで頻繁に分配金が出るものを投資に含めて、生活費への取り崩しと長生きを楽しむ資金の成長との二つの目的を達成するように投資を組み立てましょう。投信やETFは価格だけなく分配金も上下しますから、生活の基礎は年金などで確かなものとし、投資成果を孫への小遣いや旅行日程の延長などに使っていくのはいかがでしょうか。

儲けたいという目的も、自分が納得した投資テーマに合わせた投信などへの投資で少しは実現してもよいと思います。ただし、預金や生命保険などを含むすべての資産の中で限定的な金額でよいと思います。神山 直樹(61歳)

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神山直樹

<解説者>神山直樹(かみやま なおき)

日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト
2015年1月に日興アセットマネジメントに入社、現職に就任。1985年、日興證券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)にてそのキャリアをスタート。日興ヨーロッパ、日興国際投資顧問株式会社を経て、1999年に日興アセットマネジメントの運用技術開発部長および投資戦略部長に就任。その後、大手証券会社および投資銀行において、チーフ・ストラテジストなどとして主に日本株式の調査分析業務に従事。

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