神山解説

  • 2024年5月24日

vol.52 新NISAがはじまってもうすぐ半年、いつまで続けるもの?



つみたて投資枠と成長投資枠、どう使い分けるといい?

NISA制度が新しくなり、以前以上に投資に興味を持ってくださる人が増えて良いことだなと思っています。しかし、真面目な日本人がしばしば陥りやすい罠は、何か間違わないか、うまくやらないといけないのではないか、完璧な使い方(使い分け)、これを知らないと損する、のような情報を集めがちということではないでしょうか。

正直なところ、NISAの本質は、枠内の投資の儲け(売却益、配当・分配金)に税金がかからない、という点のみです。それ以上の意味はないので、例えばNISAではこう投資する、NISA以外は違う戦略がある、といったことを考えすぎる必要はありません。投資の目的は税金では変わりません。

<2024年1月からのNISA制度>

2024年1月からのNISA制度 つみたて投資枠:年間120万円 成長投資枠:年間240万円 非課税保有期間:無期限 非課税保有限度額1800万円

※成長投資枠の投資対象商品:REIT、ETFを含む上場株式と投資信託等

引用元:政府広報オンライン

NISAを使うのは「儲けが大きくなりそうな投資から」という使い道だけ分かっていれば、あとはそんなに考えることはありません。投資で一番考えてほしいのは、ご自身の目的(年を取ったら海外旅行に行こうなど消費の目的)、どのくらいのリスクなら許せるか(年間2割くらい価格が変動しても気にしないか、心が揺れて不安な気分になるか)、その二つに応じて、だいたいどのくらいのリターンを長期に期待するか、といったことです。

次に、いまの収入や貯蓄額などから、いまどのくらい投資できるかを考えます。『とにかく投資金額が多い方がいい』としてしまうと、いまを楽しむ余裕がなくなります。なんでもやりすぎは毒ですから、月々の積み立てはいくらくらい、ここまで貯めた額の内、子供の学費のようなある時期にどのくらい使うかを決められているものは投資せず貯蓄にして置き、余裕部分はリスクを取れる投資に回します。

ここまでくれば、『NISAはできるだけ使い尽くす』のがいいわけです。単に税金がない、というだけの話ですから、どんな商品をどんなふうに組み合わせるか(これは神山解説 vol.39 世界株と米国株(S&P500)、どちらかで資産形成するのがいいの?にありますのでご参照のこと)とは基本的に関係ありません。

それぞれの投資枠については、考え方がいくつかありますが、あまり固執しすぎなくていいと思います。会社員であれフリーランスや商店主であれ、投資は毎月いくらという考え方をすることが多いです。そうであれば、積み立てはまず収入から適切な額を当てれば良いですね。

つみたて投資枠と成長投資枠をどう使うといいの?

つみたて投資枠と成長投資枠は、投資しようとしているお金がもう貯まっているのか、月々の積立額がつみたて投資枠を超えているのかといった個々人の資金の動かせる金額や収入のあり方によって変わってきます。くれぐれもお金の投資への入れ方の問題です。すでに投資資金をたくさん持っている人は、利益が大きくなりそうな金融商品がNISA枠に優先されることになります。枠内の投資の人はその点は将来考えればよいでしょう。あとは枠と投資額の兼ね合いで、毎月たくさん投資する人は成長投資枠もつみたて投資枠のように使えます。

つみたて投資枠で購入できる投資信託は成長投資枠ほど多くない(金融庁の基準がある)のですが、グローバルに幅広く投資する株式投信などが多いのでそれを選び、成長投資枠で自分の好みでテーマを選んで投資することもできます。投資対象にもともと好みがある人には選択肢の観点からどちらを使うかを考える必要がありますが、つみたて枠で選べる投信はだいたい成長投資枠でも買えますので、あまり選別をしないでよいと思うのであれば同じでも良い(十分分散投資された商品であれば)。つみたて投資枠では日本だけとか米国だけの単一国などよりもグローバルに投資するものが良いと思います。

積立と取り崩しのタイミングを意識して、投資は老後も続ける

これから投資を始める人がふと気になることに、いつまで投資するのかがあります。長期投資しましょう、老後までずっと保有しましょうと言われますが、どのくらい長期がいいのでしょうか

赤ちゃんが生まれたばかりのご両親は大学の費用を投資で賄おうとしてはいけないのか、老後でないといけないのか。私の結論は「潤いのある引退後の生活」を投資の目的としてほしいので、学費などのあてにするのはあまり良くないと思います(そうしてよいとの金融機関の宣伝も見かけますが)。

NISA口座の投資資金であるかどうかとは関係なく、投資にはステージがあります。積み立てと取り崩しです。仕事をしている現役世代はできるだけ投資額を増やし、仕事がなくなるときに備えるのです。しかし、年金などが最低限の文化的な生活を支えてくれるはずですので、投資の成果は「潤い」部分にあるのです。そうなると、一般に金額としての投資を取り崩すのは、収入がなくなるとき、と設定するのが私のおすすめになります。

ただし、投資は取り崩し(引退世代)になっても続きます。60代の人が80代になるのに20年間もあるのですから、取り崩した残りを長生きの潤いのため投資を継続します。この時には、株式を中心として利益を増やそうとする投資から、リート(不動産投資信託)など分配金が多い商品への投資を増やし、取り崩しと残金の投資がひとつにまとまるようにすることが考えられます。投資の成果は消費して楽しむことで目的を果たすのですから、取り崩しをしながら、しかし長生きに備えて投資を続けるように、投資対象を切り替えていくのが一案です。このようなことはNISAと直接関係ないのですが、NISAを使うほど投資成果の税金分が自分の消費に使えることになるのです。

積立と取り崩しのタイミングを意識して、老後も投資は続ける

ひとまず新NISAを始めてみる ~神山解説

NISAは国が投資の成果について税金を取らないことで、多くの人が投資の成果を享受することを目的としています。

お金持ちほどメリットが大きくならないように、非課税投資の金額枠が決まっています。ですから、NISAという制度については、枠を最大限使って儲かったときの税金を減らすということだけが大事と言えます。仮に利益が出なければもともと投資には税金がかからないのです。

投資で大事なことは自分が投資の目的を明確にし、それにぴったりの金融商品の組み合わせを決めることです。NISAは基本的には投資をすべてその枠で行えばよいし、あふれ出るのであれば、利益の期待が大きいものにNISA枠を優先して使えばよいと考えましょう。

この記事に関連する日興アセットのETF

世界に分散投資ができるETF

1554 - 上場インデックスファンド世界株式(MSCI ACWI)除く日本 (愛称:上場MSCI世界株)

1680 - 上場インデックスファンド海外先進国株式(MSCI-KOKUSAI) (愛称:上場MSCIコクサイ株)

1681 - 上場インデックスファンド海外新興国株式(MSCIエマージング)(愛称:上場MSCIエマージング株)

※上記銘柄は新しいNISA制度の「つみたて投資枠」および「成長投資枠」の対象ETFです。ただし、金融機関によって「つみたて投資枠」の取扱いが異なります。

神山直樹

<解説者>
神山直樹(かみやま なおき)

日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト
2015年1月に日興アセットマネジメントに入社、現職に就任。1985年、日興證券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)にてそのキャリアをスタート。日興ヨーロッパ、日興国際投資顧問株式会社を経て、1999年に日興アセットマネジメントの運用技術開発部長および投資戦略部長に就任。その後、大手証券会社および投資銀行において、チーフ・ストラテジストなどとして主に日本株式の調査分析業務に従事。

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