欧米は景気サイクル後期にあり、バリュエーションが割高であるのに対して、アジアはサイクルの初期にあり、バリュエーションが割安となっている。このことは、世界の投資家に優れた分散の選択肢をもたらすだろう。
2024年のインド総選挙では、出口調査予測や市場予想に反して、ナレンドラ・モディ首相率いるインド人民党(BJP)が239議席しか確保できず、単独過半数に必要な272議席に届かなかった。前回の2019年選挙ではBJPが303議席を獲得していたことから、大幅に議席を減らしたことになる。
市場環境はここ1ヵ月で大きく変化した。話題は米国の利下げから利上げの可能性へと変わり、中国株式市場は魅力的なバリュエーションと実効性のある政策実施期待が相まって大幅に上昇している。
アジア全体の重大な焦点となっているのは、引き続き中国の経済および株式市場だ。中国の不動産セクターは、依然として脆弱である。しかし中国株式は、財政および資本市場の両方における追加支援策や市場期待の修正を受けて、2023年末から今年1月にかけて見られたパニック売りから回復している。
中国株式は、バリュエーションが過度に売られすぎの領域にあることから、ある程度短期的な反発があるかもしれない。しかし、当社では中国の主な住宅分野の問題を解決し得る供給サイドの措置など、相場の上昇をより持続可能なものにする幾つかのドライバーについてモニタリングしている。
2023年は市場にとって素晴らしい年であった。とはいえ同年、世界は過去最高気温を記録するとともに、数々の大きな気候災害を目の当たりにした。ハワイの山火事、北アフリカの干ばつ、南米で相次いだ洪水、日照り、地震、土砂崩れなど、数え上げればきりがない。筆者が言いたいのは、中央銀行は短期的には金融リスクや市場をコントロールできるかもしれないが、母なる自然にはかなわないということだ。
インド市場は引き続き魅力的である。企業収益の成長はアジア地域で最も高水準にあり、バリュエーションは過去のレンジの中央近辺で推移しているほか、経済成長は好調でインフレは抑制されている。
運用マネージャーとして、最も重要なことの1つであり、最も難しいことの1つは、誤りを犯したことを認めるタイミングを心得ていることだ。投資において、判断ミスはしばしば起こり得る。綿密なリサーチや投資哲学の厳格な適用、規律あるポートフォリオの実行は、リスクを最小限に抑え、長期的に優れたリターンを生み出すことのできる強固な運用ポートフォリオを構築するのにいずれも重要な役割を果たす手段だが、これらは将来を予測することはできない。
金利がピークを打ち、また米ドルが高値をつけた可能性があることは、市場全般の好材料になる可能性があり、特に流動性の影響を受けやすい市場や利下げ余地が大きい国、ファンダメンタルズのポジティブな変化が見過ごされてきた分野でこのことが言える。重要な転換期を迎えている中国経済は、高度な製造業やテクノロジー、自給自足、海外のよりハイエンドな市場での成長を促進する経済へと軸足を移しており、当社ではこれらの分野を有望視している。
中国は、短期的にはネガティブな材料があるものの、先進製造業やテクノロジーへと軸足を転換しており、引き続き長期投資機会が豊富だとみている。他では、世界で最も有望な成長ストーリーの一部はインドやインドネシアで見出すことができ、また台湾や韓国は半導体産業の回復に伴う緩やかな需要拡大サイクルの恩恵を今後も享受するとみられる。