神山解説

  • 2023年3月24日

vol.38 金に投資するときの考え方



金の価格はどういう理由で動くの?

米ドル建ての金価格を動かす大きな二つの要因は、米ドル金利と米国株の上下動です。

例えば、アメリカの景気悪化で金利が低下する場合、米ドルに預ける理由が減るので、金利に左右されず価値を保存できる金のような商品に投資資金が向かいやすくなります。金利が低いと預金の金利がインフレに勝てないので、金への期待が高まるというわけです。

もう一つは、株式市場のリスクの敏感度が高まる景気悪化、株価下落、PER(株価収益率)低下に対して、金価格が高くなりやすいとされています。これは金利への反応と同じで、米ドルを避けるためとみられます。

ロシアや中国の中央銀行が外貨準備に金を買い続けていますが、これは金の値動きにあまり影響を与えていません。金価格の上下動は概ね金融取引であって、実物の需給の影響は短期的には小さいとみています。

金(ゴールド)の価格はどういう理由で動きやすいのか

 

金をとりまく世界の見方

金と世界情勢との関係では様々なことが言われています。
石油、金、インフレをまとめて見る70年代の考え方を思い出して現在に当てはめるのは、すこし時間の無駄かもしれません。

また、地政学リスクの高まりで金価格が上昇するとの考えもありますが、実際にはアメリカ本土が大きな打撃を受けるような事態でなければ、短期的・心理的な懸念からの動きだけでしょう。

ウクライナへのロシアの侵攻でアメリカが一時的にインフレとなる場面では、金利上昇がインフレよりも遅い時期には金価格が上昇しましたが、アメリカのインフレが落ち着くと金価格には低下圧力がかかりやすくなりました。

つまり、米ドル建ての金価格は、アメリカの経済や地政学的問題に関わりますが、日本に住む人にとっての地政学リスクに十分対応する投資対象とはみていません。現実に米国本土全体を覆うような危機はこれまで起きていないので、地政学リスクのヘッジツールとしても効果は限定的です。

金と世界の状況

分散効果を意識した金投資を ~神山解説

金の投資の一番の価値は、ポートフォリオの中での分散効果です。

金そのものが価値を生み出す仕組みを持っていないので、株式のように人間の努力と工夫が企業活動を通じて配当になるといった投資商品ではありません。債券のように約束した金利の支払いもありません。

米ドル建ての金価格は米国の状況により変動しやすいですが、米国の景気が悪いと為替は円高になりやすいので、日本からの投資では、価格の上昇が為替と相殺されるケースが多く、必ずしも思ったような成果につながるのでもありません。

また、直近のシリコンバレーバンクやクレディスイスがもたらす市場の不安と金価格の上昇には一時的な関係はありますが、金は長期投資の観点でリターンを追求すると言うよりも、一時的な資産価格のブレのバランスを取ってくれる金融商品と位置付けます。そのため、金からのリターンよりもポートフォリオのぶれを小さくする機能に注目して、自身の投資対象にするかどうかを考えましょう。

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神山直樹

<解説者>神山直樹(かみやま なおき)

日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト
2015年1月に日興アセットマネジメントに入社、現職に就任。1985年、日興證券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)にてそのキャリアをスタート。日興ヨーロッパ、日興国際投資顧問株式会社を経て、1999年に日興アセットマネジメントの運用技術開発部長および投資戦略部長に就任。その後、大手証券会社および投資銀行において、チーフ・ストラテジストなどとして主に日本株式の調査分析業務に従事。

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