Series3. ファンドを選ぶ前に

10. 割高・割安という概念
PERだけは知っておきましょう。

投信が12,000円になったことだけで「もう割高だ。買えない」と思うのは正しくありません。しかし、昔1,000円だったある企業の株価が気付けば1,200円になった時は少し検討の余地があります。それを検討するツールを「バリュエーション」と言います。「割高/割安分析のためのモノサシ」という意味です。

最も使われるのが利益と比較するモノサシで、「PER」(ピーイーアール/株価収益率)というものです。簡単に言えば、今の株価は「今年の利益の何倍まで買われているか」を示す倍率で、過去の経験則では15倍~18倍あたりが多く、10倍台前半だと(企業の利益に比べて)割安、20倍に近かったり超えたりすると割高とされます。

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投信を使った資産運用を考える私たちは、投信の中身の株式の一つひとつをPERで分析をする必要などありませんが、式が意味するところは理解しておきたいのです。例えば、もし株価が2割上がって1,200円になった時、利益も2割増えているならPERは以前と変わっていないことに気付くでしょう。つまり、1,200円の今の株価は割高になったとは言えないのです。

ある投信の中に入っている株価のPERの平均値が、例えばずっと20倍程度で推移しながら基準価額が上がっていたとします。その基準価額は「もう高い。もう買えない。一旦売った方が?」なのでしょうか。とんでもない。組み入れられた株式は利益の増加を伴なって株価が上がっているわけですから、割高どころか極めて健全な基準価額の上昇なのです。前に買えた人なら、今追加購入しても構わないということを意味しているのです。

PERの式から分かるもうひとつ

PERの式を算数的に展開すると、株価=利益×PERとなります。下でPERを「ムード」と置き換えたのは、個々の株価に結果的に与えられているPERは、市場の楽観/悲観度合いを反映していると言えるからです。

例えばある企業の利益予想に一切の変化がなくても、どこかの国の偉い人が変なことを呟けば短期的な投資家は急に弱気になり、買いよりも売りが多くなることで株価は下がります。
これはつまり、変わらない企業の利益に対して、勝手に市場参加者の「ムード」がトーンダウンしただけということです。優良な銘柄を安い株価で買いたいと思っているファンドマネージャーが喜んで買いに入るのは、実はそういう時なのです。

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