「高金利の長期化」シナリオを織り込む市場の調整は、株式と債券の下方相関性が強かった10月をピークに、流れが一巡した感がある。潜在成長率を上回る成長を続けている米国経済が企業収益を堅調に下支えしていることから、当社では「高金利の長期化」は株式にとって必ずしもマイナス材料ではないとの見方を維持している。
景気減速が「そろそろ」やってくるとの一般的な見方に反して、米国経済は堅調な足取りを維持しており、債券利回りは景気の強さに応じて長期金利の再調整が必要という金融の現実を織り込み続けている。この調整は積極的かつ早急に進み、10月初旬にかけては節操のない展開になりつつあった。
米国債10年物利回りが2022年10月の最高水準である4.24%を超えて上昇するなど、市場は「高金利の長期化」を織り込みにいっており、グローバル株式を取り巻いていた熱いセンチメントは中立領域へと後退しつつある。
経済の車輪は前進を続けているが、これは、米FRB(連邦準備制度理事会)の翌日物金利誘導目標が2001年以来の高水準となる5.5%まで引き上げられていることを考えると、多くの人にとって予想外の状況と言えるだろう。
市場のポジショニングがよりポジティブな見通しへとシフトした一方で、マクロ経済の雰囲気は変わっていない。むしろ、株式市場への上昇圧力が根強く続いたことにより、投資家がベンチマークや同業者に大きく遅れを取らないよう株式エクスポージャーの再構築を余儀なくされた格好だ。
株価に反映された成長見通し格差は拡大し続けている。その背景として、テクノロジーやAI(人工知能)の発達という形での長期的な経済成長が市場全体の方向性を決定付ける材料として優勢な模様である。これは、テクノロジー・セクターが(そして理由は異なるが日本市場も)上昇する一方、他の大半のセクター・地域市場が月間で下落したことからも明らかだ。
2022年初頭以降、インフレ・金利ショックから戦争・コモディティ・ショック、英国の年金危機、そして今回の米国の地方銀行危機に至るまで、市場を動かす重大な出来事が立て続けに発生してきた。こういった歴史的な出来事は、予想通り、市場センチメントと株価バリュエーションの重石となった。
3月半ばに米国で地方銀行が破綻して以来、続いてすぐにCredit Suisseが混乱に陥り結果的にUBSとの合併を余儀なくされるなど、市場の状況はかなり大きく変化してきた。政府が迅速かつ大規模な対応を見せる一方、中央銀行はある程度通常運行で金融引き締めに戻るメッセージを発しようとしたが、市場はそれを信じてはいないようだ。
新型コロナウイルスの世界的感染拡大が始まって以来、投資家は資産価格のボラティリティの高まりに直面してきた。状況を混迷させ続けている一因は、コロナ関連の歪みによる経済指標の変動である。さらにここ数ヵ月は、特に米国で、季節外れの天候パターンの影響により経済の先行きを読むのがより困難になっている。
景気見通しは改善しつつある模様で、2023年は前半に景気が鈍化して後半に回復するとの確信が市場で強かった2022年終盤に比べると、大きな変化である。米FRB(連邦準備制度理事会)が積極的な引き締めを行ってきたのは確かだが、資金流動性と民間部門のバランスシートの強さという点からすると、システムには景気刺激策の余波がまだ結構残っていると言えるだろう。