つい数週間前、筆者は2019年以来初めてとなる対面式のカンファレンスに出席した。世界最大級のテクノロジー・カンファレンスの1つ「ウェブサミット」のためにリスボンに押し寄せた人の数は4万人を超えた。
当月のアジア株式市場(日本を除く)は上昇し、月間リターンが米ドル・ベースで1.4%となった。投資家の注目は引き続き、インフレ圧力の高まりや米FRB(連邦準備制度理事会)によるテーパリング(量的緩和の漸進的縮小)計画に集まった。
10月の米国債市場は前月に続いて利回りが上昇した。最終的に、月末の米国債利回りは2年物で前月末比0.222%上昇の0.499%、10年物で同0.067%上昇の1.555%となった。中国、韓国、シンガポールでは、2021年第3四半期の経済成長が鈍化を示した。一方、MAS(シンガポール金融通貨庁)は為替政策における自国通貨高誘導の「傾き」(上昇ペース)を引き上げ、またRBI(インド準備銀行)は金融システムから過剰流動性を吸収した。
日本は2000年ごろから、米国でもリーマン・ショック後の2010〜11年ごろから、経済はデフレ(継続的な物価下落)を懸念する状態に陥っていた(日本は一時的にデフレを経験)。現時点、メディアなどでインフレ懸念が話題になっているが、デフレが「懸念」されていたのだから、インフレも「期待」されて良さそうなものだ。ここでインフレが懸念されている理由は、インフレが「供給ショック」から起きているからだろう。
各国中央銀行の直近の政策決定会合は投資家に心待ちにされていた。それまでの市場は、従来の中央銀行のガイダンスが示すよりも早期の利上げを織り込み、インフレが一過性ではなくより厄介で長く続くものになるリスクの高まりを示唆していた。ここ数週間のグローバル債券市場では、短期ゾーンの利回りが上昇する一方で長期ゾーンの利回りが横這いにとどまるか低下しているが、このようなイールドカーブの大幅なフラット化も「政策ミス」の可能性を暗示しているように思われた。
10月31日の衆院選で、自民党は改選前から議席を減らしたものの、単独で261議席を獲得し、「絶対安定多数」を維持した。公明党との連立与党では293議席、改憲勢力の日本維新の会と合わせれば定数の3分の2を上回り、安倍政権以来の政治情勢を継続することになる。
当月のアジア株式市場(日本を除く)は下落し、月間リターンが米ドル・ベースで-4.2%となった。中国の経済成長見通しに対する懸念や米FRB(連邦準備制度理事会)のテーパリング(量的緩和の漸進的縮小)計画が、市場センチメントの主な悪化要因となった。
米国金利の上昇が新興国に悪影響を及ぼすのではないか、という懸念がある。しかし、そもそも「新興国」を一括りに分析することは不適切で、米国との貿易や金融の関係性が弱い国ではあまり影響を受けない。一方、関係性が強い国では、例えば米国への製品輸出が多いブラジル企業が米ドル建て社債を発行している場合、米国金利の上昇で米ドル建て債務の金利負担が増大するようにみえる。
9月の米国債市場は、米FOMC(連邦公開市場委員会)で資産購入の緩やかな縮小がついに11月にも開始されると示唆されたことを受けて、利回りが上昇した。エネルギー価格が急騰している最中に欧州や中国で電力不足がエスカレートしインフレ懸念を駆り立てたことも、利回り上昇を一層促した。一方、中国における停電の発生や恒大集団(Evergrande Group)破綻の可能性に脅かされて同国の経済成長見通しに対する不安が強まったため、リスク・センチメントが悪化した。最終的に、月末の米国債利回りは2年物で前月末比0.067%上昇の0.28%、10年物で同0.178%上昇の1.49%となった。
ボラティリティは、当社がいずれそうなるだろうと予想していた通り高まっている。9月はリスクが再認識されやすい月だが、市場参加者が夏季休暇から戻ったら株式市場が史上最高値になっていたという状況は、近い将来に重大なリスク・イベントが数多く控えている現実とは相容れない。米FRB(連邦準備制度理事会)が遅かれ早かれ実施する予定のテーパリング(量的緩和の漸進的縮小)や、政局からもたらされる債務上限問題のストレス、新型コロナウイルスのデルタ株の感染拡大を受けた経済成長の鈍化など、一部のイベントは予想済みであったが、世界同時に近い形で発生したエネルギー不足はやや予想外であったと言える。