2021年は大半のアジア諸国の国内総生産(GDP)成長率が堅調に回復し、アジア企業のファンダメンタルズが安定的ないし若干改善することに支えられて、今後数カ月の間はアジアクレジットのスプレッドが徐々に縮小すると予想される。
2020年は大半の人々にとっては忘れてしまいたい年であったであろう。しかし、新型コロナウイルス感染症が経済に与えた打撃が大きかったにもかかわらず、市場のパフォーマンスはかなり好調だった。豊富な流動性をもたらした大規模な金融・財政刺激策がパフォーマンスの最大の原動力であったとはいえ、短期的にはまだ楽観視できる状況かもしれない。金融システムに残る潤沢な流動性によって解き放たれるかもしれない繰り延べ需要を踏まえると、2021年以降はワクチンが普及するにしたがい需要が通常水準を超える可能性があるだろう。
2020年は、新型コロナウイルス感染症が引き起こしたパンデミックにより経済が急速に閉鎖され、一時的とはいえ、世界の経済活動が事実上停止するなど、市場にとって驚きに満ちた年であった。その結果、安全と言われる資産までも含め、金融市場のすべての資産クラスが極端なボラティリティを示した年になった。
2021年の株式市場を、日米それぞれの「コロナ・ショックからの回復」「さらなる上積みの可能性」の観点からみた上で、リスクを確認しよう。
2020年のコロナ・ショックは誰にも予想できなかったものの、回復の道筋は多くの市場参加者が昨年 4-6 月に想定していた通り進んだ。経済は新型ウイルスの新規感染者数の増加に左右されず、主要先進国は医療崩壊を避けつつ、行動制限をコントロールしながら生産活動を再開させ、国内消費の支援を続けた。その結果、非接触型関連を中心にモノの消費が回復し、一部の国ではサービス消費の回復もみられるようになった。
当月のアジア株式市場は力強い上昇を見せた。その要因となったのは、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のワクチン開発が良好な進展を見せたこと、ジョー・バイデン次期米大統領の政権下で米国とアジアの関係が改善するとの期待が高まったこと、アジアの幾つかの国で経済指標が市場予想を上回ったことであった。アジア株式(日本を除く)の月間市場リターンは米ドル・ベースで8.0%となった。
筆者は先日、「もし大臣になったら何をするか」と質問をいただいたので、考えてみた。まずコロナ・ショックに対する安倍→菅政権の対応に違和感は少ない。そもそも新型コロナウイルスの影響を予想することが難しい中、行動制限と補助金の組み合わせは当然の対応だったと思う。
経済指標は欧米におけるより最近のロックダウン(都市封鎖)を受けて軟調さが続く可能性が高いが、一方で市場は、近く実用化されるワクチンがこの悪夢のようなトンネルの先にいわゆる光をもたらしていることから、賢明にも当面の暗闇の先を見通している。当社では、2021年にかけて、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミック(世界的流行)がバックミラーのなかでゆっくり遠ざかっていくのに従い、世界はある程度「常態」と言える状況に徐々に戻っていくとみている。それに伴う需要の加速は、非常に緩和的な金融政策と財政政策による依然比較的気前の良い支援からシステムにじゃぶじゃぶと流れ込み続ける潤沢な流動性によって、一段と拍車がかかるだろう。
11月の米国債市場ではイールドカーブがフラット化した。米国大統領選挙後、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)ワクチンの良好な臨床試験結果を受けて投資家心理が回復したことから、リスク資産市場は上昇した。その後、欧米におけるCOVID-19感染者数急増のニュースを受けて当面の景気悪化リスクが強まったため、米国債利回りは月上旬の上昇分を一部吐き出した。最終的に、月末の米国債利回りは2年物で前月末比0.006%低下の0.149%、10年物で同0.034%低下の0.841%となった。
中国は、コロナ禍の影響から経済が大幅に落ち込んだものの、感染拡大の初期段階で行動制限等の措置を素早くとったことにより、現状、生産など経済活動は他国に先駆けて正常化しつつある。