2021年は、世界がCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミック(世界的流行)に対抗すべくワクチン開発を進めるなか、コロナ危機の終わりの始まりとなった年として記憶されるであろうと考える。日本では、パンデミックの影響が後退し経済活動が正常化するにつれ、景気が徐々に回復すると予想している。
米国の資本主義は大きな社会的分断の上に築かれたものだが、時として、それに耐えられなくなり、国民の大部分が反旗を翻すことがある。今回のケースでは、新型コロナウイルス流行の影響で所得格差が広がり、不安がさらに深まった。しかし、過去4年間においては一般大衆が様々に異なる方法で反撃し、互いに争い合う結果に終わった一方、富裕層はかつてないほど栄えた。
中国にとって2020年が波乱に満ちた1年だったと言ったとしても、それは控えめな表現だろう。2019年と2020年を通して、米国からの政治的制裁の猛攻に耐えてきた中国は、2020年の年明け早々に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行に見舞われた。
過去12ヵ月間において、金融市場で議論されるトピックは大きく変わった。論点はマクロ経済指標から、感染者数や入院患者数、ワクチン接種など、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)関連の問題へと移ってきた。
当月のアジア株式市場(日本を除く)は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のワクチンが世界的な景気回復をもたらすとの楽観ムードや米国の追加財政出動、中国の堅調な経済指標を追い風に着実な上昇を見せ、月間リターンが米ドル・ベースで6.8%となった。
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、英国・EU(欧州連合)間の自由貿易協定合意を発表した際、英国の詩人T.S.エリオットを引用して「私たちが始まりと呼ぶものは、終わりであることがよくあります。ですから、終わらせることは始めることでもあります。終わりはスタート地点なのです。」と述べた。
12月の米国債市場では、イールドカーブがややスティープ化した。月末の米国債利回りは2年物で前月末比0.027%低下の0.122%、10年物で同0.075%上昇の0.915%となった。当月は、欧州(特に英国)におけるCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)感染者数の増加や米国の財政出動に関する不透明感をめぐって、投資家の懸念が強まった。
年の変わり目とは、マーケット解説者たちがしまい込んでいた水晶玉を取り出し、来る年の予言をする季節である。しかし、2020年を正しく予測できた者はいなかったであろう。2020年を発端とした出来事が世界に影響を及ぼし続けることは避けられず、2021年の予測の誤差をさらに高くしている。数え切れないほどの「来(きた)る年」の展望レポートは、2021年が2020年とは正反対になると予測している。いろいろな意味で、このような予測が当たることを願うばかりである。既承認、未承認を問わず、多くの新型コロナウイルス感染症ワクチンが、これまでに実施された臨床試験の結果と同様に、新型コロナウイルスの変異種に対しても効果を発揮することを願わずにはいられない。
2020年がパンデミック(世界的流行)の年として記憶されるのは間違いないだろう。金融市場の観点からはCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)はもはや古いニュースと考えたくなるが、ウイルスは経済見通しにとって依然大きなリスクを呈している。
2020年3月ごろに新型コロナウイルス感染拡大を抑える目的で導入した行動制限やロックダウン(都市封鎖)などの影響で世界的に株式やREITの価格が急落(以下、コロナ・ショック)した後、J-REIT市場(以下、REIT)は株式市場に比べて回復が遅れている。