当社のグローバル投資委員会(GIC)は、年金基金をはじめとする長期投資家のために先進国市場の中期展望に焦点を当てた分析を行っている。GIC の見解では、2022 年はリスク資産にとって厳しいながらも良好な年となるようにみえる。
アジア諸国は米国の金融政策引き締めを十分に乗り切れるとみられる。政府の財政状況、そして企業の財務状況もより健全である。大半のアジア諸国は西欧諸国よりもデジタル化が進んでおり、また消費についても経済活動再開によって大きく押し上げられるとみられる。
中国株式投資にとって、2021年は様々な指数が異なる道を歩み運命の分かれた年となった。MSCIチャイナ・インデックスは2021年11月時点で年初来18%の下落となっており、同インデックスの構成銘柄に投資することが圧倒的に多いオフショア投資家にとっては苦しい1年となった。一方、上海・深セン取引所の銘柄を中心に投資するオンショア投資家にとっては、相対的に実りの多い年であった。
オミクロン変異株が最初に発見された当初、世界のメディアはかなりセンセーショナルな報道を行い、このことが投資家のセンチメントに急速に影響した(皮肉なことに「Delta」と「Omicron」の文字を並べ替えると「media control」になる)。この変異株の本当の性質がまだ正確に把握されていない状況でも、投資家センチメントは少なからぬ打撃を受けた。オミクロン株が他のほとんどのウイルスと同様に、たとえ感染力が強くとも、毒性が低いものになることを願っている。この点について、これまでの感染力が弱い変異株に比べて、デルタ変異株の死亡率が大幅に低いことは明るい材料と言える。
新型コロナウイルス感染拡大の潮の満ち引きとともに2021年を象徴したインフレの加速は、サプライチェーンのボトルネックの表れであるばかりでなく、十分な景気刺激策の継続に伴う需要の拡大も一因となった。一方、米FRB(連邦準備制度理事会)は平均インフレ率を目標とする政策に転換したが、これはつまり、長期平均が目標の2%近くに落ち着くとの前提で、インフレ率の短期的なオーバーシュートを容認するということである。
当月のアジア株式市場(日本を除く)は、新型コロナウイルスの新たなオミクロン変異株の流行拡大によって、世界各国の国境再開計画が見直しを迫られ、景気回復が遅れるかもしれないとの懸念を受けて下落し、月間リターンが米ドル・ベースで-3.9%となった。
あらゆる面で健闘を誇っている国にとって、継続する新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による経済的打撃と戦うなか、2021年は幾分ロープを背に防戦に追われるような年となった。一部では打撃を受けていた(ダウンしていた)かもしれないが、確実に打ち負かされて(ノックアウトされて)はいない。
2022年は世界の経済成長が持続するものの、そのペースはより緩やかなものになると予想される。米国では、旺盛な内需や追加財政出動がGDP成長を下支えしている。米FRB(連邦準備制度理事会)は、景気の回復が続き、特にサプライチェーン関連の問題点が解決されたあとにはその傾向が特に強まるとの見方をしており、2021年11月には資産購入プログラムのテーパリング(段階的縮小)を開始した。
さて、結論から言うと、「一過性」という言葉は存在せず、唯一一過性なのは「一過性」という言葉そのものなのかもしれない。米FRB(連邦準備制度理事会)は、膨張するインフレへの対応として今やテーパリング(量的緩和の漸進的縮小)のペースを倍増させると予想されており、これを受けて債券市場は少なくとも売り込まれるだろうと思われた。 しかし、オミクロン株の登場により話は変わった。
世界の見通しは依然ポジティブだが、新型コロナウイルスの最新の変異株であるオミクロン株の潜在的影響については、特に政府が海外渡航や一部では国内の移動に制限を加えるなど迅速に対応しているなか、あまりよく分かっていないのが現状だ。また、米FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が最近のコメントで、新変異株への懸念から期待されたハト派的傾向ではなくインフレ圧力への対応として敢えてよりタカ派的な姿勢を示したことも、市場センチメントへのさらなる重石となっている。