2010年6月3日
1995年、日本初のETFが登場
日本のETFのスタートは1995年の日経300型上場投資信託です。1980年代後半の日本のバブル崩壊後、市場が低迷していた時期にあたります。現金で設定し、保有有価証券を交換するスキームで、市場活性化策として取り入れられたものでしたが、残高・取引量とも伸び悩み、目的は十分に達成できたとはいえない状況でした。
2001年に株式バスケット拠出型ETFの制度がスタート
その後も日本の株式市場は、不調な時期が続きます。長年、日本の銀行は日本株式の主要保有者でした。銀行は、バブル崩壊後、増え続ける不良債権、株式市場の不調による株式の評価損の増大に苦しんでいました。銀行の健全化が、経済の再生に不可欠なものであることから、銀行の保有株式を買い取る「銀行等保有株式取得機構」を設立、その買い取り株式の市場放出スキームとして日経225やTOPIX型の株式バスケット拠出型のETFの制度が2001年に導入され、本格的なETFの制度がスタートします。しかしながら、株式市場活性化や株式の需給調整のためのものとして制度がスタートしたことから、限定的な株式指数に連動するETFしか組成ができませんでした。よって、当時のETFはTOPIXや日経平均株価、日本株の業種別指数に連動を目指すものしかなく、商品のバラエティに乏しい状況でした。制度スタート直後は、機関投資家の株式バスケットの拠出もあり残高が急伸する場面もありましたが、一巡後は伸び悩む状況が続きました。
2007年、規制緩和がスタート、ETFの商品が多様化
海外市場は好景気を背景に市場が活況を呈す一方、日本の国内市場は元気が無く、国内市場の地盤沈下に政府および取引所の危機感が高まります。海外市場ではETFが市場取引のインフラストラクチャーとして機能することにより市場の活況に繋がっていることから、2007年12月、金融庁の金融・資本市場競争力強化プランにおいてETFの商品多様化の方針が出ました。それによって、特定の株式指数に連動を目指すETFしかできなかったところから指数一般(株式だけでなく債券や商品等)でETF組成の道が開けました。従前の日本株式のETFだけでなく、金価格、中国A株、Jリート等、新しいETFが出始めることとなりました。
さらに、2009年には現金設定・現金償還のETF制度も導入され、一段と新しいETFを組成し易い環境が整いました。それを受けて、グローバル債券、グローバル先進国株式や新興国株式のETFも登場し、また重複上場のETFも増えて、日本市場におけるETFの商品多様化が急速に進んでいます。
変化の兆し
ETFは、比較的コストが安い、高い透明性、高い流動性というメリットがありますが、特に日本の個人投資家にとって長所の多い金融商品です。そのことが、少しずつですが個人投資家の間で広まりつつあります。ブログにETFが取り上げられたり、証券取引所のIRイベントで、ETFの話を聞き、資料をもらいに来る個人投資家がいたりします。従来には見られなかった現象です。当社の設定しているETFの中で、ほとんどを機関投資家に保有されているETFがある一方、最近、保有者の確認ができたものの中には、ほとんどを個人投資家に保有されているETFもあります。
日本の機関投資家の間でも関心が高まるETF
従前、あまりETFに投資をしていなかった年金基金ですが、関心が高まりつつあります。先般、当社の投資顧問部門が年金基金向けにETFセミナーを開催したところ、予想以上の集客となり年金基金の関心の高さが確認できたセミナーとなりました。米国の年金基金がETFを活用していることや、日本のETFの商品多様化が進んできていることから、関心が高くなってきているのかもしれません。
また、東京証券取引所は、積極的にETFの普及活動を行なっていますし、マスコミもよくETFを取り上げるようになってきています。一部の証券会社は積極的にETFを取り上げているところも出てきています。ETFの利点が再認識されればETFを活用する金融機関が増えるのではないかと期待しています。
日本のETF市場のこれから
一般論として、良い商品は普及するものだと思います。もし、普及しないのであれば、何か顧客に受け入れられない要因があるからなのです。翻ってETFを考えてみると、顧客(投資家)の認知が低いこと以外で、普及を阻害している要因は無いと考えております。言い換えると、ETFの商品性そのものに普及を阻害する要因は無いのではないかと思います。そうでなければ他の欧米やアジアの全ての世界のETF市場でも成長するということがないのではないかと思います。 我々、業界の人間の努力不足もあるかとは思いますが、投資家の認知が上がり、日本のETF市場が拡大するのは、明日かもしれませんし1ヶ月後かも、1年後かも、もっと先かもしれません。拡大の時期やそのきっかけが何かはわかりませんが、必ずその日が来ると信じていますし、我々もその日が一日でも早く来るようにがんばります。
以上