日興アセットマネジメントのETF、上場インデックスファンドのご愛顧、誠にありがとうございます。

新たに設定・上場いたしました上場インデックスファンド豪州国債(為替ヘッジあり)(2843)上場インデックスファンド豪州国債(為替ヘッジなし)(2844)に多くの投資家からお問い合わせをいただき、また、上場後に追加設定も入っており、重ねてありがとうございます。正直、債券ETFに関してはあまり肯定的なご意見をいただけていなかった経験があったのでほっとしました。

さて、今般、お問い合わせをいただいている内容に関しまして、豪州債券そのものに関するというものよりも債券と債券ETFに関するものが見受けられました。また、個人投資家の方にも債券ETFに関心を持っていただけているようでお問い合わせを頂いております。

今回のコラムは、基本的な債券の特性についてまとめて、一般に思い込まれている債券の事実に関して意外な特性があることに触れてみたいと思います。

【債券のおさらい】

私が社会人のスタートを始めた銀行では金融債を発行して資金調達をして、その資金を貸付けるというのがコアビジネスでした。そのため債券とは何かとかいった研修を、新人研修で受けたことが思い出されます。

債券には固定の利札(クーポン)のある利付債券と利札の無い割引債券(ゼロクーポン債)に大別され、その他に利札が変動する債券(変動利付債)があります。国債・社債の多くは固定の利札(クーポン)のある利付債券の形で発行され、既発債が市場で売買されています。

利付債券のキャッシュフローの概念図

利付債券のキャッシュフローの概念図

  • ※上記はイメージ図です。

最近、このような利付債券の概念図を見る機会が無いのですが、下の青い四角部分は債券の額面部分を表わして、上部の三角部分はクーポンを表わしています。例えば、10年満期の利付債で、毎年、1%の金利が払われるとした場合、額面部分は金額(100万円)でクーポンは1万円となります。債券発行後、期日の経過で日々クーポンが積み上がって1年経過すると1万円のクーポンが支払われますので、クーポン部分が直角三角形で表現されているのです。そして10年経過すると額面100万円と最後のクーポン1万円が支払われて債券が償還(消滅)することになります。

信用リスクが無いという前提で、債券は満期まで保有すれば額面で償還されるという説明があります。これ自身は正しいのですが、どうも間違って受け止められていることがあるようです。あくまでも額面で償還されることだけを言っていて、必ずしも投資家の買い付け金額(投資元本)が保全されるという意味ではないということです。新規発行であろうと既発行の債券であろうと、当該債券を入手する価格が額面とはならないことがあることに思いを巡らす必要があります。金利・債券市場の動きの影響を受けて、額面より高い(オーバーパー)価格で買ったり、額面より低い(アンダーパー)価格で買ったりします。安く買う場合はともかく、高く買う場合は満期を迎えて額面金額が払われても元本額に満たない金額しか返ってこないことになるからです。しかしながらオーバーパーの債券は保有する意味が無いと早とちりするのは厳禁です。ここにはクーポン収入があることが考慮されていないからで、オーバーパーの債券を購入しても額面償還による損失をクーポン収入でカバーできればいいのではないでしょうか。クーポン収入にかかる税金に注意する必要がありますが、プラス金利の環境下、あとでも触れますが最終利回り(終利)がプラスになっていればプラスのリターンが享受できます。

利付債券のキャッシュフロー(債券を105万円(オーバーパー)で投資した場合)

利付債券のキャッシュフロー 105万円(オーバーパー)で投資した場合

  • ※上記はイメージ図です。

例えば、前出の債券を105万円(オーバーパー)で投資したとすると、上の図の赤い破線、額面以上の金額で投資したことになります。この投資がどのような意味があるかというと、10年間で投資対象の債券からはクーポン1万円×10回+額面100万円、合計110万円(償還以前に受け取るクーポン収入を再投資しない単利の考え方です)のお金を受け取ることになります。よって110万円>105万円なのでよかったよかったということになります。クーポンを受け取っているのに、債券の償還時に額面と最終クーポンの101万円を受け取って105万円で投資したのに残念と思いがちですが、そのように思わないでください。
ちなみにマイナス金利ということがありますが、それはこの債券、10年間で110万円のお金が受け取れる債券を110万円より高い金額を払って投資することです。

【金利が上がると債券価格が下がる=債券の価格とは】

利付債券の性質は上記のように額面とクーポンが決められて固定されています。

もし市場金利が1.5%だとすると、投資家(買い手)の観点からは上記の額面100万円1%クーポンの債券は不利な投資対象になります。投資家は市場金利で運用すれば良いので、債券を額面以下、市場金利の水準に見合うまで価格が下落しないと買いません。一方、市場金利が0.5%だとすると上記の額面100万円1%クーポンの債券はとても有利な投資対象になりますので、市場金利の水準に見合うまで債券価格が上昇しないと保有者(売り手)が売ってくれないので買うことができません。このように市場金利と債券価格は連動するメカニズムがあるのですが、その連動が逆連動になっているのが感覚的にピンとこないのだと思います。

そもそも金利とは何なのでしょうか。お金は様々なものの価値の尺度ですが、金利はお金の現在の価値を表わす尺度です。現在のお金の価値が高ければ、今使うことを我慢する代わりに高いご褒美(金利)を要求するものになりますし、逆に現在のお金の価値が低ければ、それなりの低い金利を要求することになります。また通常であれば期間が長ければ多くの金利を、短ければ相対的に低い金利を要求することになります。(短期金利と長期金利が逆転することもあります。金利の期間構造に触れると説明が複雑になりすぎてしまうため今回のコラムでは長短金利がフラットであるという単純化した仮定を置いています。)

ちょっと視点を変えてみます。債券の発行者(国等)から見れば、債券は額面とクーポンが定型化された借用書で、市場流通できるようにしたものです。市場金利が高い場合、債券の発行者はクーポンを市場金利並みにするか、もしクーポンを市場金利より低く設定したら、債券の額面は固定されているので、額面よりも安い価格で売り出さないと投資家に買ってもらえません。

では債券の価格はどのように考えるのでしょうか。

前出の債券、10年満期の利付債、額面部分100万円、クーポン1万円(年1回払い)を例に考えてみたいと思います。

債券の保有者は1年目1万円、2年目1万円、・・・10年目101万円(額面100万円+クーポン1万円)とお金を受け取ることになり、以下の表の様に展開されます。

例:10年満期の利付債、額面部分100万円、クーポン1万円(年1回払い)を保有

10年目101万円(額面100万円+クーポン1万円)とお金を受け取る

そして、将来受け取るお金は、現在、いくらの価値があるのかを考えます。1年目に受け取る1万円は、今、いくらの価値があるのでしょうか。
ある金額を今の市場金利で運用したら1年後、1万円になるとして、そのある金額を求めるのが割引計算です。1万円÷(1+市場金利)で求められます。2年後の1万円は、1万円÷(1+市場金利)2、・・・10年後は101万円÷(1+市場金利)10となります。累乗になっているのは複利運用をすることになるからです。その現在の価値にしたものを足し上げると当該債券の価格になるのです。

市場金利が1.5%の場合の債券価格

市場金利が1.5%の場合の債券価格

市場金利が0.5%の場合の債券価格

市場金利が0.5%の場合の債券価格

なお、表計算ソフトのExcelを使う方でしたら、債券の価格計算関数(PRICE)がありますので、一度、自分で債券価格の計算をしてみると良いのではないかと思います。

【金利上昇期に債券投資?】

さて、昨今の経済情勢から市場金利が上昇するのではないかということで、金利上昇期に債券投資なんてと思う方もいらっしゃるかもしれません。

債券価格が金利の推移でどのように変わるか見てみたいと思います。前出の例の債券ですが、市場金利がどんどん上昇していく、極端な例ではありますが、債券の発行時1%の市場金利が毎年1%ずつ上昇するような場合、どのような価格推移になるか計算したのが以下の表およびチャートになります。

例:債券の発行時1%の市場金利が毎年1%ずつ上昇する場合

債券の発行時1%の市場金利が毎年1%ずつ上昇するような例

例:市場金利と債券価格の変化(債券の発行時1%の市場金利が毎年1%ずつ上昇する場合)

市場金利と債券価格の変化

このチャートを眺めて、債券の価格形成のメカニズムは本当に面白いなと思います。まずは金利の上昇で価格は下落するのですが、5年後に底を打って10年後の額面価格に向かって価格が上昇に転じます。金利の上昇で債券価格が下落する力が働く一方、債券の発行後、時間の経過とともに額面金額に収束するように価格が動くことによります。

逆に金利が低下する場面ではどのような値動きになるのでしょうか。

これも極端な例ではありますが、債券の発行時の市場金利が12%で毎年1%ずつ低下する例です。債券のクーポンも市場金利と同じ12%で発行されたとしています。

例:債券の発行時の市場金利が12%で毎年1%ずつ低下する場合

債券の発行時の市場金利が12%で毎年1%ずつ低下する例

例:市場金利と債券価格の変化(債券の発行時の市場金利が12%で毎年1%ずつ低下する場合)

市場金利と債券価格の変化

金利の低下に伴い、債券価格は上昇しますが債券価格は6年後にピークを打ち、10年後の償還価格に向かって価格が下落します。
債券の価格は金利の上下によって逆連動で上下するという特性に加えて、債券の償還日に向かって価格が額面金額に収束してゆくことをご理解ください。そのため金利が上がっていても債券価格が上昇することもありますし、金利が下がっていても債券価格が下落することもあります。

【債券に投資することの意味】

多くの人は長短金利差を見て、短期金利運用より有利な運用手段と考える方が多いのかもしれません。長期金利が短期金利よりも高い状態(順イールド)であればそうですが、逆の短期金利のほうが高い状態にもなります(逆イールド)。また、金利の上下の方向感に相場を張るツールと考える方もいられると思います。ちょっと見方を変えると債券運用は金利運用のヘッジ手段ではないかなと思います。
前出の1%クーポンの10年債で、金利が毎年1%ずつ上昇する例を、再度、見てみたいと思います。

例:1%クーポンの10年債で、金利が毎年1%ずつ上昇する場合

債券の発行時1%の市場金利が毎年1%ずつ上昇するような例

債券と市場金利は連動性がありますので、市場金利が1%のときに1%クーポンの10年債、残存期間10年の債券の価格は上記の表のように100万円です。

債券の投資尺度に、当該債券を償還まで保有したらどのくらいの利回りで保有することになるのかを表わす最終利回り(終利)があります。100万円でクーポン1%の額面100万円の債券は終利1%ですが、10年後の満期まで投資すると運用利回りは1%になります。これは、途中、市場金利が変化しても変動しないことになります。例えば、5年後、市場金利が6%のときに78.94万円でこの債券(残存期間5年)の終利6%で、満期まで投資すると6%の運用利回りになります。市場金利は様々な要因で上下しますが、運用利回りを固定(ヘッジ)したい場合に債券は有効なツールであることがお分かりいただけるのではないかと思います。

債券にはまだまだ他にも面白い特性がありますが、次回以降で、以上の債券の特性を踏まえて複数銘柄の債券を保有する債券ETFの特性を考えてみたいと思います。

引き続き日興アセットのETF、上場インデックスファンドのご愛顧、よろしくお願いいたします。

※債券に関する考え方を示すことを目的としたものであり、特定の商品の利回り等を保証・示唆するものではありません。税金・手数料等は考慮していません。