本日、2011年2月21日、当社20本目のETF「上場中国関連株50(1556)」の上場承認を東京証券取引所から頂戴しました。このETFは同取引所100本目のETFとなりました。今回は、このETFの開発裏話をしたいと思います。

日本株に無関心な世界の市場関係者

2009年9月下旬、中国(上海)への出張を初めて1人でしました。上海空港から市内に向かう道は交通事故で渋滞した上に、クーラーがなく窓を開けたタクシーは上海万博に向けた道路工事でほこりがもうもうとする中走るため、汗とほこりにまみれてしまいました。さらに市内を歩いているときには、スクーターにぶつけられるといったこともありました。そんな中国に来たのは、中証指数有限公司(China Securities Index Co.)主催の指数大会に参加するためでした。上場パンダ(1322)の連動対象指数のCSI300は中証指数有限公司が算出している指数の最も代表的な指数です。その指数大会の内容は、中国国内の運用、証券取引規制に関する議論から中国証券市場の新指数開発に関するものでした。参加していたのは、中国の金融規制当局、中国本土内の取引所、証券会社、運用会社に加えて、アジア各国の取引所、世界各国の名立たるETF運用会社でした。日本の運用会社からは当社だけで、ちょっと寂しく、中国を中心とする業界の盛り上がりから取り残されてしまっているような印象を受けました。

さて、指数大会の議題となっていた新指数については、環境関連インデックスの議論が中心でした。大会の休憩時間や昼食時間に参加者と意見交換をする際に、2009年4月に立ち上げた環境関連日本株の上場グリーンチップ35(1347)を紹介すると、大方の反応は「環境関連のテーマはいいのだが、日本株は関心がない」というものでした。海外の市場関係者が日本株への関心がないということを再度痛感させられ、また世界の目がいかに中国に向かっていることも痛感させられました。

日本株を売り込みたい

指数大会会場からの帰り、雨が降ってきたこともあり、タクシー乗り場は長蛇の列でした。タクシーを待っていたときのことです。車寄せの近くに、交通規制でコンクリートの土台に埋められた標識のため道幅が狭くなっているところがありました。そこへドイツ製の黒塗り高級車が入ってきましたが、直前で一旦停止したものの、その標識で道幅が狭くなっているところに無理やり突っ込んできました。ポコッという音が聞こえ、標識も揺れているのですが、そのまま車体を擦らせながらすり抜けていきます。車体の傷をみて、おそらく雇われ運転手であろう彼の首を心配した一方、何か中国人の「突破力」といったものを感じさせられました。指数大会では、世界の市場関係者が日本株に関する関心がないということで打ちのめされた気分になっていたのですが、不思議なことにその光景を見たことをきっかけに、何か日本株を世界に売り込む方法はないか、突破する方法はないかといったことを考え始めました。

中国になじみのある日本企業の指数を作る

指数大会の翌日、上海現地の証券会社を訪問して情報交換をしました。その席で、上場グリーンチップ35(1347)を中国の投資家(機関投資家・個人投資家)に売り込むことを想定してブレインストーミングをしました。中国の投資家は自国の経済に自信を高めているところで、海外投資といっても中国経済に関係の深い香港株(中国本土の人にとって香港株は外国株なのです)くらいしか関心がなく、日本株は全くといったところで、昨日の指数大会のときと同じ受け止められ方でした。しかし、構成銘柄の中で中国に進出して、なじみのある個別銘柄を前面に出して上場グリーンチップ35(1347)を紹介するアイディアが出たところで、中国経済にエクスポージャーのある日本株を集めて指数を作り、ETFとして商品化できないかということに思い至りました。

日本に戻ってから、早速この中国関連株指数の検討を始めました。上場グリーンチップ35(1347)にちなんで、我々の開発コード名は「チャイナチップ」です。まずは、地域別売上で中国が多い企業の抽出が可能か考えたのですが、これがなかなか難しいのです。日本企業のデスクロージャーは、以前に比べかなり詳細になされるようになってきているものの、地域別売上の開示では、地域別だったり、国別だったり、企業によってまちまちです。イメージに近い銘柄の切り出しが難しく、数社の指数会社と相談したのですがなかなか進展しませんでした。途方に暮れていたところ、日経平均株価(日経225)を算出している日本経済新聞社であれば、新聞社でもあり詳細な企業情報を保有しているので、なんらかの解決方法があるのではと藁にもすがる思いで同社のインデックス事業室に相談したところ、まさに同じ狙いで新指数の企画を練っていたとのことで、開発の検討をしていただけることになりました。さすがの日経新聞社でも、中国関連株指数はかなりの難題だったようです。しかしながら、日経紙面に掲載された記事件数で銘柄をスクリーニングするといった新聞社ならではのアイディアを投入して、また指数開発の終盤(2010年9月)には日中関係がぎくしゃくし、この指数のETFの商品化に暗雲が立ち込めるといった、様々な難題を乗り越えて、「日経中国関連株50指数」の開発、「上場中国関連株50(1556)」の組成に至りました。

日本株の魅力を追いかける

本日、上場承認をいただいた上場中国関連株50(1556)は、日本株のETFであり、基本的には指数採用銘柄を指数の組入れ比率どおりに組み込むという完全法で運用するETFです。当社のETFとしては20本目、日本株(日本株を中心とする)のETFとしては10本目になります。日本のETF運用会社としては、日本株の魅力を再発見してもらうことは必須と思い、日本株ETFの開発を続けてきました。上場グリーンチップ35(1347)、上場高配当(1698)に続く3本目の日本株のテーマ型ETFになります。また、中国関連ETFとして見た場合、上場パンダ(中国A株:1322)、上場チャイナ株(中国H株:1548)に続く3本目のETFになります。

日本と中国は、地政学的にも経済的にも切り離せない関係なのは誰しも否定できない事実ではないかと思います。当社にも中国出身の社員が多数おりますし、当ETFセンターにもおります。みな、熱心かつ有能なスタッフで、日々の議論で触発されています。元々、欧米に関心の強かった私ですが、上場パンダ(1322:上場2008年4月11日)の開発以降、中国への関心が強くなり、日中の近代史書籍を何冊か読みました。日中両国のスタンスによって史実の捉え方が異なり、度々日中関係が円滑にいかない背景を少しは理解できたような気がします。また、昨年半年中国語を勉強してみました。初級英語の”This is a pen.”程度のレベルしか理解できませんが、発音・イントネーションが平坦な日本語と違って、その複雑かつ豊かなことに驚かされ、中国語を認識したことによって、家の近くにも中国から来ている方が思った以上に多くいることに気づきました。そして昨今好調な業績が報道されている多くの企業には、中国での事業活動の成功によることが多いことに気づきます。日本と中国の関係は深まりこそすれ、薄れるということはないのだろうと思います。そこで、日本人の投資にとって「中国」というキーワードは永続的なもので、上場中国関連株50(1556)はタイムリーな設定であり、永続的な投資ツールになることを期待しています。