飲みニケーションから動き出した新ETF

平成最後の1月に入って、社内の若手と夕食に行ったときのことです。ちょっと前の社内会議で議論になった新商品の話になりました。それは金銭信託型JリートETFを立ち上げるというものです。

昔からのアイデア

金銭信託型JリートのETFについては、7年以上前から設定を考えたことがありました。日本株の現物型と金銭信託型ETFでは、税制上、特定株式投資信託と上場証券投資信託と区分が異なることから益金不算入制度の対象、非対象の違いが出てきます。一方、Jリートの現物型と金銭信託型ETFでは、両者共に上場証券投資信託に区分され違いはありません。また、Jリート現物の場合、金融機関のような機関投資家はキャピタルゲインを債券等売買損益勘定で損益を計上しますが、JリートETFも同様に計上するのが多いと聞いています。金銭信託型JリートETFは損益確定の場合に、売却でなく解約を行う場合には、私募投信と同じように配当収益で計上できる可能性もあると会計士の先生から聞いています(実際の取扱いについては、会計士や税務専門家等にご確認ください)。このような背景から金銭信託型JリートETFは現物型以上に需要が期待できるのではないかと考えていました。

アイデア実現のハードル

しかしながらどうしても気になる点があります。それはJリートの流動性です。現物型のJリートETFの場合は指定参加者と呼ばれるETFの販売会社がJリートのバスケットを用意し、また、引き取ってくれるので、ETFの投資対象の資産の流動性が、直接、ETFの設定・解約に問題になることはないのですが、金銭信託型になるとETFの管理会社(運用会社)が設定・解約の際に投資対象資産を売買しなければならず、その流動性の問題が切実になります。大口の設定・解約が入った場合、その投資対象資産が買付・売付きれなくなる事態が想定されるためです。

ハードルクリアの施策

7年前、当時はJリートの貸出者があまりいなかったこともあって証券市場参加者から上場インデックスファンドJリート(東証REIT指数)隔月分配型(1345)からJリートの貸出をしてもらえないかとの打診がありました。Jリートの貸借市場が成長すれば流動性が改善するはずです。当該ETFの信託約款では保有Jリートの貸出はできるようになっていたもののETFの管理システムがJリートの貸出に対応していませんでした。貸出ができれば貸株料で信託報酬の一部穴埋めも可能で、投資家にとってもいいはずです。まずは、上場インデックスファンドJリート(東証REIT指数)隔月分配型(1345)が保有Jリートを貸出できるようにして、市場環境、流動性の改善を見てから金銭信託型JリートのETFを考えようと思いました。2015年下期にはJリートの貸出を始められたのですが、上場インデックスファンドJリート(東証REIT指数)隔月分配型(1345)への資金流入が堅調だったこともあり、金銭信託型JリートETF立ち上げの意識が薄れていました。

蘇る昔からのアイデア

2019年1月 社内会議の席で、若手社員から金銭信託型JリートETFの立ち上げの提案がありました。その場ではJリート売買の流動性の懸念を伝えて議論を中断しました。そして冒頭に紹介したその若手と夕食に行ったとき、再度、熱く提案をしてくるではないですか。自分が気付くアイデアは必ず他人も思いつくということだとも感じました。思い立ったら吉日なのかもしれないなと思い始めていました。

新ETF組成の背景

当社の上場インデックスファンドJリート(東証REIT指数)隔月分配型(1345)は2008年10月21日上場、2番目に古いJリートに投資するETFで、多くの機関投資家に投資していただいているという印象のあるETFです。実は、ここのところ解約が続いて、投資家が利益確定を行っているのが見受けられます。利益確定を行った機関投資家は簿価通算を避けるために当社の上場インデックスファンドJリート(東証REIT指数)隔月分配型(1345)には再投資をしないで、他社の新しいJリートETFを買い付けているのが見受けられます。新しい、特徴のあるJリートETFを立ち上げなければいけないのではないかとの思いがありました。また、新しいJリートETFのご要望も、時折、いただいていましたし、流動性の問題もJリート借入先の存在に目途がついていましたので、夕食会の翌朝、開発にGOを出しました。

投資家ニーズを取り込み、日興アセットのETFノウハウを投入

さて、金銭信託型JリートETFを立ち上げるのにあたって、まず検討しなければならないのは連動対象指数の決定です。昨今は古くからある東証REIT指数以外のJリート指数も発表されて、それに連動するETFも立ち上げられています。そこで投資家のニーズヒアリングを進めたのですが、馴染みのある東証REIT指数の要望が大方でした。また、指数の特性を分析すると、浮動株調整後時価総額加重型指数である東証REIT指数がもっとも流動性の制約が小さい指数であることもわかりました。ただ、原資産のJリートの流動性に制約があるので1日30億円を設定・解約の上限とすることになりました。しかしながら東証REIT指数を新しい金銭信託型JリートETFの連動対象指数とした場合、既存の上場インデックスファンドJリート(東証REIT指数)隔月分配型(1345)と同じ連動対象指数になるので、商品差別化をしっかりしないといけません。そこで、金銭信託型ETFの特徴として設定・解約単位を少額にすることが可能なので、投資家から要望のあった取引所取引単位を少額にすることにしました。最初は当初1口=1,000円としていたのですが、3,000円以下までは取引所の呼び値が1円なので、当初1口=2,000円として呼び値の影響(取引所売買スプレッド最小値)を10ベーシスから5ベーシスの影響に圧縮させました。また、機関投資家の要望には分配金受け取りの頻度を下げて(隔月⇒四半期)というのもありましたが、分配金の希薄化の影響(コラムNo.2をご覧ください)が出やすくなってしまうので、ここは隔月分配を貫きます。そして個人投資家から要望のあった、既存の奇数月決算ETFと決算日をずらした偶数月隔月決算のETFにして、既存のETFと併せ持つことによって毎月分配金をお受け取りいただけるようにしました。

このように投資家のご要望をETFの仕様の随所に取り込みました。新しいETF、「上場インデックスファンドJリート(東証REIT指数)隔月分配型(ミニ)(2552)」は古くて新しい挑戦のETFです。投資家の皆様に受入れられることを願っています。なお、「上場インデックスファンドJリート(東証REIT指数)隔月分配型(ミニ)(2552)」の上場承認をいただいた週に日本のETF業界関係者で会食をする機会がありましたが、その場で大手証券会社のETF推進担当者が、その系列運用会社の人に、「投資家のニーズをちゃんと伝えていたのに日興アセットに先を越されたではないか」と言っておられました。各社が投資家ニーズの把握と商品開発に力を入れているのがひしひしと伝わってきました。これからも投資家ニーズをとらえた商品開発に注力しなければならないと気が引き締りました。

引き続き日興アセットのETF上場インデックスファンドのご愛顧を宜しくお願いいたします。