コロナ禍の折、罹患された方、不自由な生活を強いられている方々にお見舞い申し上げます。また、厳しい環境下、対応をされている医療・行政関係者の皆さまに御礼申し上げます。1日も早い終息を祈念いたしております。

ETFの裏の活動、株主として

さて、本日ご紹介させていただきたいのは、上場インデックスファンドTOPIX(1308)を中心とした日本の株式・不動産投資信託(REIT)に投資をする日興アセットマネジメントのETFの裏側の活動です。

日本のETF(上場投資信託)は、連動対象指数(価格)に連動する運用成果を実現させるために、連動対象指数の構成銘柄をその指数構成比率と同じように保有しています。その結果、ETFが保有する株式・不動産投資信託の価格変動と配当の結果がETFの投資成果につながります。また、株式・不動産投資信託を保有することによって、株主等のもうひとつの大きな権利である「株式等の議決権」を持つことになります。その議決権行使に関わる日興アセットマネジメントの活動をご紹介したいと思います。

さらに言うと、ETFは株主優待も受けるのですが、こちらは換金できるものは換金してETFに納めます。換金できないものに関しては寄付をし、寄付できないものは廃棄することになります。

ETF、パッシブ運用の活動が変化

大方のETFのように、指数に連動する運用成果を目指す運用はパッシブ運用(受け身の運用)と呼ばれています。連動対象指数をなぞらえる運用(受け身の運用)ということに由来しているのだと思います。銘柄調査が不要なので、アナリストを使う必要が無く、信託報酬を安くできると言われます。その一方で、銘柄調査・選定を行うアクティブ運用は株式等の適切な市場価格を形成するのに貢献するのに対して、パッシブ運用はアクティブ運用の活動にただ乗りしているという批判を受けることがありました。しかしながらこの数年、パッシブ運用の裏側で運用会社の活動は大きく変化してきています。

変化の背景~JPX日経インデックス400からコーポレートガバナンス・コード、スチュワードシップ・コードへ

長らくの間、投資家、特に海外の投資家の目線から、日本株の欠点はガバナンス(企業統治)が不十分であることだと指摘されてきました。

2014年1月に算出が始まった「JPX日経インデックス400」は、資本効率が良くて、ガバナンスがしっかりした400社で構成される指数です。ガバナンスの良い優良企業は、この指数の構成銘柄に選ばれますから、「ガバナンスを良くしてください」という指数設計者のメッセージが伝わってきます。そして、2014年6月に「『日本再興戦略』改訂2014-未来への挑戦」が閣議決定され、ガバナンスの強化が打ちだされました。それを受けた金融庁・東京証券取引所が上場株式の発行会社に示した企業統治の原則が、コーポレートガバナンス・コードです。その原則には遵守義務は無いのですが、遵守しない場合は説明すべきというものです。その対になるのが、金融庁によって定められた日本株に投資している国内外の機関投資家向けのスチュワードシップ・コード(責任ある機関投資家の諸原則)です。本コードでは、機関投資家は、投資先企業やその事業環境などに関する深い理解に基づく建設的な目的を持った対話などを通じて、当該企業の企業価値向上や持続的成長を促すことにより中長期的なリターンの拡大を図る責務が求められると言っています。建設的な目的を持った対話とは、経営戦略や財務戦略など経営事項に係る議論や提案を指します。企業に人を送りこむようなことはせずに、企業の持続的成長を目的として話し合うといったところでしょうか。

スチュワードシップ・コードは、コーポレートガバナンス・コードと同様、遵守義務は無いのですが、遵守しない場合は説明をすべきというスタイルを取っています。2020年7月末時点で日本のETFの発行会社10社中8社がスチュワードシップ・コードの受入れを表明しています。

日興アセットマネジメントの企業の持続的成長を目的とした対話

日興アセットマネジメントは2016年6月に日本版スチュワードシップ・コードの受入れを表明していますが、この実態は胸を張ってご紹介できるものです。

企業の持続的成長を目的として話し合うと前述いたしましたが、その対象は当社ETFが保有している銘柄の全銘柄になります。2020年7月末現在、株式2,166銘柄と上場不動産投資信託63銘柄です。当社のファンド・マネージャー、アナリスト、アクティブオーナーシップグループ(議決権行使の責任部署)担当者が手分けをして企業の持続的成長を目的とした対話を行います。年間4,000回程度のミーティングを行っているのですが、資本効率や株主還元姿勢、ESG 課題等、各企業の抱える課題を踏まえ、優先順位を付けてメリハリをつけた対話を行っています。この実例は当社のサスティナビリティレポート(P.31)に紹介されています。

2019年サステナビリティレポート(PDF)

なお、ETFは運用行為として、保有株式・不動産投資信託 の貸付を行っています。貸付を行なっている銘柄の中で、不祥事を起こした銘柄やガバナンスに課題のある銘柄等については、その貸付が権利確定日(決算日)を跨ぐ場合には、必ず貸付分を回収した上で保有している全個数の議決権行使をして意思表明を行うようにしています。不祥事を起こした銘柄やガバナンスに課題のある銘柄等は、空売りニーズがあるのか借入ニーズが強く貸株料も高く取れるケースが多いのですが、日興アセットマネジメントでは貸株による利潤よりも議決権行使をして企業の持続的成長を促すことのほうが中長期的には利益が大きいと考えています。

昨今は、株式・不動産投資信託の発行会社側も投資家との対話が重要である認識が広がってきてはいますが、依然として対話に応じて頂けない会社も一部にあります。当社では粘り強く対話に応じるように促し続けています。パッシブ運用で保有するが故に、対話をする活動の恩恵はパッシブ運用だけでなく当社のアクティブ運用にも及んでいます。対話を行うことで、個々の銘柄の将来の経営状況改善につながり、その総体である市場全体の健全化につながることが期待されます。アクティブ運用とパッシブ運用は対立軸で捉えられがちですが共生の関係があるのです。

さて、当社の議決権行使の実態ですが、議決権行使が真に投資家利益に即してなされているか、社外委員メンバーが過半数を占める「スチュワードシップ&議決権政策監督委員会」でチェックします。この委員会は、原則として四半期に一度の頻度で開催されており、議決権行使の在り方や個別議案の行使結果等について、投資家利益の観点できちんと説明できる議決権行使でなければならないという視点で、活発な議論が行われています。2020年4月からは、議決権行使結果について、議案判断「理由」の開示を開始しています。こちらの結果は個別ETF毎でもご覧いただけます。

ファンド別議決権行使結果の開示

日興アセットマネジメントのETF、「三方よし」を目指して

“三方よし=売り手によし、買い手によし、世間によし”という近江商人の商売哲学が広く知られています。持続可能なビジネスを言い表して、昨今、良く言われるサスティナブル、サスティナビリティのことだと思います。

ETFの発行者である日興アセットマネジメント(売り手)は、そのETFの良好な運用クオリティを維持し投資家(買い手)に貢献します。加えて、運用対象の株式等を対象に持続的成長を目的とした対話を行い、その実現を通じた投資リターンの改善により、さらに投資家(買い手)およびその総体である市場(世間)に貢献します。

日興アセットマネジメントのETFの表裏の活動をご理解いただき、引き続きご愛顧をお願いいたします。