最近、お問い合わせいただくことが多いのが、「現物株式(株価指数)」と「指数先物」と「ETF」の価格の関係についてです。今回はこのことについてまとめてみたいと思います。

【現物株式(株価指数)の価格】

上場株式であることが前提となりますが、原則、現物株式の価格は売買が成立した値段をいいます。

株式売買に馴染みのある方ならご理解いただけるのですが、その価格は必ずしも売買できる価格ではありません。

例えば、直近、900円の価格がついたある株式があったとします。その株式の売り買い注文が以下のような場合(取引所に発注されている銘柄・値段ごとの売買注文を集約したものを表示したもので、業界用語で「板(いた)」と呼びます)、10株を売ろうとする人は900円という価格で売却できそうですが、50株を売ろうとすると900円では売り切れず、899円で売りに行くか、10株を900円で注文をして残りの40株を買ってくれる人が出てくるのを待つかを選ばないといけません。逆に、この銘柄を買おうとすると、901円以上の値段で買いに行くか、900円で注文を出して売ってくれる人が出てくるのを待つかを選ぶことになります。

図:株式の売り買い注文

また、気配値という値段もあります。これは買いたい、売りたいという注文がある一方、それに見合うような売り注文、買い注文が入らないため、その株式の売買が成立していない状況にあります。

図:株式の売買が成立していない情況

*カ:特別買い気配、ウ:特別売り気配

【株価指数】

株価指数は、複数銘柄の株価を一定のルールでまとめて指数化したものです。複数の株価の塊を一つの数字に表すことで、対象の株式全体の動向を把握しやすくなります。日本株式では日経平均株価やTOPIX、米国株式ではダウ30、S&P500、NASDAQ100が有名です。

株価指数の計算根拠は、指数計算時の最新の株式価格を使います。ただし、気配値が出ている場合は、その気配値を優先して使う指数(日経平均株価、TOPIX)もあります。ここで留意したいのが、NASDAQ100指数の構成銘柄で指数通りの比率(株数)で構成されるような株式バスケットの評価価格です。最新の株式価格だけで評価するか、気配値が出ているものは気配値で評価するか、その違いによって、「指数と同じ構成の株式バスケットの評価価格」と「指数値」にずれが生じることがあります。また、株式が複数市場に上場している場合、価格を採用する市場の違いからずれが生じることもあります。

【指数先物】

先物指数(さきものしすう)とついつい言ってしまうのですが、先物を指数化したものを意図しているのではなく、特定の指数をあらかじめ定めた日に取引時点の約定価格で売買することを約束する取引で、正しくは指数先物(しすうさきもの)と言います。

例えば、NASDAQ100先物(EミニNASDAQ100先物)では、取引日以降の3、6、9、12月の第三金曜日の寄付値で計算されるNASDAQ100指数(清算値、SQ値と呼ばれます)を売買する契約になります。よって、「NASDAQ100指数の構成銘柄で指数通りの比率(株数)で構成される株式バスケット」と「NASDAQ100先物」はSQ値で同価値となり清算できるように作られていますので、裁定が効くことになります。このことから、「指数先物」と「NASDAQ100指数の構成銘柄で指数通りの比率(株数)で構成される株式バスケット」と「NASDAQ100指数」の値動きは、概ね、同じになります。留意しなければいけないのは、指数先物には需給要因による価格のずれが起こり得ることや、現物株式取引と指数先物取引の終了時間の違いからずれが起こることです。

【ETF】

ETFの基本形は、連動対象指数の構成銘柄をその指数の構成比率(株数)で保有するものです。ファンドであるため、現金部分(純粋な現金、未収入金や未払金)があり、純粋に連動対象指数と同様にはならないのですが、この部分を減らして連動対象指数に近づけています。NASDAQ100指数に連動するETFの場合、値動きは、NASDAQ100指数の構成銘柄で指数通りの比率(株数)で構成される株式バスケットと近いものになります。

なお、ETFは1日に一回算出される基準価額で設定・解約されます。基準価額は投資対象株式の引け値で計算されます。よって「NASDAQ100指数の構成銘柄で指数通りの比率(株数)で構成される株式バスケット」に近い構成銘柄を持つETFにも裁定機会があることになります。


以上のNASDAQ100を例とした「現物株式(株価指数)」と「指数先物」と「ETF」をまとめると以下のような関係になります。

図:現物株式(株価指数)と指数先物とETF

【指数先物とETF】

では、実際の値動きはどうでしょうか。NASDAQ100先物(EミニNASDAQ100指数先物)と上場インデックスファンド米国株式(NASDAQ100)為替ヘッジあり(2569)の2020年12月1日8:00から12月3日17:20までの価格の動きを以下のチャートにしました。

ちなみに、NASDAQ市場の立会時間は、日本時間の午後11:30から午前6:00(プレ・アフターマーケットをつなげると午後6:00から翌日の午前8:00)になります。NASDAQ100先物(EミニNASDAQ100指数先物)は、日本時間の午前8:00から翌日の午前7:00までになります(夏時間になると1時間早まります)。東京証券取引所のETFの取引時間とNASDAQ100先物の取引時間が重なっているところがポイントです。

先物の価格変化にETFの価格変化がついていっているのがお分かりいただけるかと思います。ETFの価格は先物の価格を織り込みながら動いています。

NASDAQ100先物と上場インデックスファンド米国株式(NASDAQ100)為替ヘッジあり(2569)の日中価格推移

※信頼できる情報をもとに日興アセットマネジメントが作成。
※グラフは過去のものであり、将来の運用成果などを約束するものではありません。

ETFがこのような値動きになるには2つのことが重要です。1つ目はマーケットメイカーの働きで、2つ目はETFが設定・解約できるオープン・エンド型のファンドであることです。

マーケットメイカーは、先物の値段を勘案し、当該ETFの現在値を推定して取引所の板にETFの売り買いを提示します。ETFの買手にETFを売り渡し、価格変動を避ける(ヘッジ)ために先物を買います。逆にETFの売手があれば、ETFを買って先物を売ります。ETFの売り買いは、マーケットメイカーを介して先物の売り買いにつながり、ETFの価格は先物の価格に連動することになるのです。マーケットメイカーの手元のETFが不足すれば設定して、ETFが過分であれば解約することになり、ETFの需給に合わせて市場流通量が調整されるので、ETFの値動きが先物、現物株式(株価指数)に連動してゆくことになります。

機関投資家の先物を利用したETF売買

ETFの連動対象株価指数に指数先物がある場合、日本では日経平均株価やTOPIXになりますが、ETFそのものの板、値段で発注せずに指数先物の板、値段で発注する場合や、先物の売り建てや買い建てとETFを交換する取引(EFP: Exchange for Physical)が行われています。流動性、値段の細やかさや取引量が潤沢な先物を利用して円滑にETF取引を行う一つの手法になっています。


以上、見てきたように「現物株式(株価指数)」と「指数先物」と「ETF」の価格の関係は同じような価格変動推移になることがご理解いただけたのではないかと思います。新設のETFはまだ売買が活発でないことや値動きの履歴の蓄積が十分でないこともありますが、連動対象の株価指数そのものや先物の値動きで当該ETFの特質も十分に推測することができます。そのように連動対象の株価指数そのものや先物の値動きを見ていただくのも良いかと思います。

新しいETFを組成するときに重要なのは、ETFを取り巻く環境をより良く整備できるかということです。日興アセットマネジメントは、2001年7月の上場インデックスファンド225(1330)以来、ETFの組成・運用を行ってきています。最新の上場インデックスファンド米国株式(NASDAQ100)為替ヘッジなし(2568)上場インデックスファンド米国株式(NASDAQ100)為替ヘッジあり(2569)にも長年培ったノウハウを投入しております。

引き続きより良いETFを作ってゆきますので、日興アセットのETF、上場インデックスファンドをよろしくお願いいたします。