写真:今井とS&P株価指数委員会委員長 ブリッツァー氏

今井とS&P株価指数委員会委員長 ブリッツァー氏

S&P株価指数委員会委員長 デビッド・ブリッツァー氏にお会いしました

先日、S&P社のブリッツァー氏が来日されて、当社で直接お話を伺う機会に恵まれました。蝶ネクタイが似合う柔和で温厚な印象の方でした。また、極めて優等生的な発言をされていて、悪く言えば面白い発言が引き出せない状況でした。というのは、S&P株価指数委員会委員長の立場であれば、指数に採用されたい企業から巧みなアプローチを受けるのではないかと想像していたので、意地悪くもそのようなアプローチが指数採用に影響するかどうか質問してみました。しかしながら、S&P社の指数分析チーム内の情報管理が徹底していて、公表にいたるまでは情報を外部に出さないことを、シカゴ・マーカンタイル取引所(S&P社の大口顧客)がS&P500指数に採用されるときの例をあげて、ブリッツァー氏は力説されていました。また、経営層からも指数分析チームの独立は徹底されており、企業からアプローチはあっても、社長ですら指数分析チームに影響力を行使できないことをお話しされていました。ブリッツァー氏の人となりを見ると、規律正しく運営が行なわれていることもうなずけると感じた次第です。

指標はETF組成に欠かせないもの

さて、日本のETFの組成において、最も欠かせないものは指標です。どの指標に連動させるのかを決めるのがETF組成のスタートになります。

取引所の上場規程に、投資信託財産等の一口当たりの純資産額の変動率を特定の指標の変動率に一致させるよう運用することが、上場承認の要件として定められていています。特定の指標に連動させるインデックス(パッシブ)運用のものでなければ上場できないということになります。そのため特定の指標に2倍の動きをするようなレバレッジ型のETFや逆の動きをする逆連動型のETFは指標が無いため、日本では組成することができません。指標が作られれば組成できる可能性はありますが、海外では販売現場でトラブルとなった事例が多く、日本で組成するのはよく検討する必要がありそうです。なお、上場規程に『指数(インデックス)』ではなく、特定の『指標』と記述されているのは、指数(インデックス)だけでなく商品価格を含む金融指標に連動するETFも上場できるようにするためです。

指標には大変多くのものがあり、同じアセットクラスにおいても各指数会社からそれぞれ発表されています。日本株式でいえば日経平均株価、東証株価指数(TOPIX)、MSCIジャパン インデックス等です。また、新しい投資コンセプトのETFを組成しようとする際には、指数会社に指標を作ってもらうことがあります。当社のETFでは、日本初のエコETFである上場グリーンチップ35(1347)の連動対象指数である「FTSE日本グリーンチップ35指数」がその例です。

同じアセットクラスの指標選びでも慎重に行ないます

既にある指標の中から選ぶ場合、投資家の方々に受け入れていただけるETFを組成するためにも、普及している指標を選ばなくてはならないというのは説明が不要のことと思われるかもしれません。ただ、普及している指標という場合、よく知られている指標と投資家に受け入れられている指標とは必ずしも一致しないと思っています。米国株式市場の指標のダウ平均株価とS&P500指数の関係がそれにあたる典型例ではないかと思います。
ETFを組成する場合、投資家に投資してもらい、ファンドが成長すること(発行済口数が増えていくこと)も、流動性があること、市場で売買して値段がつくことも重要です。日本の市場に米国株式のETFを組成しようとした場合、日本の、特に個人投資家にはダウ平均株価の方がよく知られている指標なので、値付きはよくなるのではないかと思われます。しかし、ダウ平均株価は大変有名な指標ですが、指数の構成銘柄数が少ないことや単純平均値であることによる特性から、運用のための指標(ベンチマーク)としては投資家に広く受け入れられているとは言い難いと思います。一方、S&P500指数は全世界の多くの投資家に米国株の運用のための指標(ベンチマーク)として広く受け入れられている指標です。ニューヨークに上場しているこの指標に連動するETFであるSPDRは、1日の売買金額が1兆円を超えます。これはなんと東京証券取引所の1日の売買金額に匹敵する水準です。当社もコラムNo.9でご紹介しましたようにS&P500指数に連動するETF 上場S&P500米国株(1547)を10月に設定・上場いたします。SPDRの時間外取引のヘッジや裁定取引の対象となって活発な売買がされることを期待しています。

質の高いETFをご提供するために

S&P500指数といえば、経済指標、また証券投資理論研究の材料として活用され、その影響力の大きさは言うまでもありません。そのような指数を運営していくのにあたって、規律が維持されていなければ、指数に対する信頼が失われて、社会に大きな損失を与える可能性があることをデビッド・ブリッツァー氏は強く認識されています。S&P500指数は現在のような形になったのが50年以上前の1957年ですから、その指数の運営に多くの方々の長きに亘る規律の維持と努力によって指数が運営されてきたことは容易に想像できます。

まだまだ普及途上の日本のETF市場ですが、S&P500指数を始め、質の高い指標に連動する質の高いETFを設定・上場し、日本のETF市場の発展の一助になる努力を継続しなければならないと、デビッド・ブリッツァー氏との面談で感じました。

以上