今年3月の上場新興国債(1566)の組成・上場から半年以上もたつと、国内外の他のETF管理会社や取引所の方々から、次のETFはどのようなものを考えているのかとお問い合わせをいただきます。日本のETF市場の発展には新規ETFの開発も大事なのですが、ETFのラインナップがすでにそろってきていますので、組成したETFの利用を促進するための活動も大事になってきていると考えています。機関投資家と指定参加者等を含めた市場関係者(以下機関投資家)や個人投資家の方々にも安心してETFを活用していただくために、日興アセットではETF「上場インデックスファンド」のディスクロージャーを充実させることを努めています。今回はその取組みを2回のコラムにわたりご紹介いたします。

ETF普及の障害 やはり売買高に対する信仰

10月22日、23日と2日間にわたり、韓国取引所がETF導入10周年記念のETFカンファレンスを開催しました。私もパネルディスカッションに参加して、ETFをいかに機関投資家に使ってもらうかという課題について議論をしてきました。私の結論は、まずは機関投資家にETFをより理解してもらうかということにつきると思っています。

韓国のETFの投資家の多くは個人投資家で、機関投資家のETF市場への誘導が喫緊の課題とのことでした。日本のETF市場に関しては、私が把握している限りでは、多くが機関投資家です。はじめに機関投資家によるETFの利用が進み個人投資家にも広がって市場が急拡大した欧米諸国に対し、日本では2007年12月の金融・資本市場強化プランによる規制緩和を受けてETFの商品ラインナップが充実したものの、投資家層の広がりは足踏みを続けていました。ITバブル崩壊、リーマンショックといった金融危機で日本の機関投資家の投資マインドが減退し、リスクオフの状況が続いたことが原因と考えられます。

また、日本も韓国も機関投資家は、国内籍ETFを使った方会計・税金・売買コスト・管理等において有利であるにもかかわらず、海外のETF市場に簡単にアクセスできるために、海外市場、特に米国のETFに投資をしてしまう傾向があります。その主な理由は、国内籍ETFは取引所の売買高が低く、流動性に不安があると思われているからです。この流動性の不安については、ETFの投資先の資産の流動性があれば、ETF市場の指定参加者 の設定・解約プロセスを通じて高い流動性が提供できるという真の流動性が認知されていないことが原因となっています。これは日本、韓国だけでなく、欧米でも同じであり、ETF市場に新規資金が流入しても、その行き先は既存の有名で純資産残高が大きく取引所売買高の大きなETFに集中する原因になっているといわれます。

注: 指定参加者: ETFを、直接、設定・解約する権限を持った証券会社

ETFを理解してもらうために重要な「教育」と「ディスクロージャー」

その解決・打開策を世界各国のETF関係者が模索しているのです。よく言われるキーワードが「教育(Education)」です。「教育」というと上から目線な感じですが、「教育」の議論を聞くたびに、誰が、誰に、何を、どのようにといった具体的に議論されず、うまく実行されていない傾向があると感じていました。

当社では、機関投資家にETFを理解し投資していただくには、正しい情報を直接お届けするというのが、一番有効かつ効果的であると思っています。そこで、当コラムや月刊資本市場、金融財政事情といった専門誌に寄稿することに加え、直接機関投資家にお会いできるときには、ETFの真の流動性等についてご説明をしております。

そこから次に繋がって重要になってくるのが「ディスクロージャー」だと思っています。我々が機関投資家にETFについてご説明した内容を、その後機関投資家が確認することが必要となることがあります。機関投資家の投資の意思決定プロセスには、いくつかの理解と承認の段階を経て、最終的には経営の承認を得ることとなります。このプロセスの間に、機関投資家が確認できる情報をウェブサイトに開示しておくことが必要だと考えています。当社のウェブサイトには、機関投資家との会話で把握できたニーズをどんどん反映させています。

日興アセットマネジメントのウェブサイトで提供しているディスクロージャー

下記のリストは、当社の機関投資家のニーズを反映して行なったディスクロージャーです。日本語のウェブサイトに加え、英語でもほぼ同じレベルの開示を行なっております。

  1. (1) ETFの保有銘柄(ポートフォリオ)の日々エクセルデータ開示
  2. (2) 設定用バスケットのエクセルデータ開示
  3. (3) ETFの会計処理について(法人投資家向け)の資料掲示
  4. (4) ETFの決算カレンダー掲示
  5. (5) ETFの設定・交換(解約)不可日の掲示
  6. (6) バーゼルIIデータ(投資信託資産構成内容)の開示
  7. (7) 英訳交付目論見書の掲示
  8. (8) 決算短信の主要項目の英語併記

(1)(2)などのデータに関しては、機関投資家の方からご要望があればFTPサーバ経由でのデータ提供も可能です。このサービス開始の背景ですが、(1)ETFの保有銘柄(ポートフォリオ)の日々開示の要請が強くあって、国内他社に先駆けて対応していました。その対応を見た東京証券取引所が、この開示データを使って推定純資産価格(i-NAV: アイナブ、インディカティブNAV)を計算・公表することを計画され、FTPサーバ経由のデータ提供の依頼がありました。当社では、ETFの取引インフラを整備することが市場の発展には必要とのことからこれらデータ開示・提供に関するシステムの整備をいたしました。 このように充実した情報をウェブサイト上で開示できたと思っていたのですが、ETFの先駆的な市場である米国のETFに及ばない点が思わぬところにあったのです。

日興アセットのディスクロージャーの充実は続きます。

ETFコラム No.25