【第12回】2時間目:大切なのは「大ざっぱで楽観的」でいる努力
資産運用は100%自分のため、でいい

資産運用は100%自分のため、でいい

  • 2019年04月01日

「企業を応援」でなくていい。資産運用は100%自分のため、でいい。

株式投資や資産運用の本質の話ついでに、少し脱線していいですか。資産運用の、特に株式投資の話でたまに出てくる考え方に「あなたの投資で企業を応援、社会に貢献」といったフレーズがありますが、私すごく気になるんです。例えば、ある企業の株式を買うということは、その企業を応援することであり、投資は社会を良くする素晴らしい行為なんだ、といったフレーズです。

大きな意味では間違っていないのですが、一般のお客様に聞くと、自分が投資したそのお金がその企業にそのまま振り込まれているかのように思っている人が大半なんです。でもそれは間違いです。株式市場でどこかの企業の株を買ったところで、あなたのその投資資金はその会社には行きません。売った人に行くだけです。

この点を明らかに誤解させるような、あるいは誤解したまま喋ったり書いたりしているものが世の中に多く見られます。確かに「あなたの投資資金がその企業を応援し育てることになる」というのは共感を得やすい話です。しかし事実はこうです。株式市場には毎日取引が行なわれる「流通市場」と呼ばれるもの以外に、新規の株式発行や株式公開が行なわれる「発行市場」と呼ばれる概念としてのマーケットが存在しています。

ある企業が新工場を建設するために資金が必要で、銀行から借り入れるのが利息がもったいないから自力で資金調達したいと考えた場合に、その企業は新株発行(増資)に踏み切る、それが発行市場です。「ウチの株を新たに発行するから誰かこの値段で買ってくれないかね?」というわけです。あるいは、新しく若い企業が、事業を大きくするためにそれまでの身内だけの出資者のお金だけでは足りないから、広く不特定多数の株主を募っていわゆる上場(じょうじょう)、株式公開をするという場合です。こうした、既上場企業の新株発行や、若い企業の新規公開に応じて株式を買う場合の振込み金額は、そのまま企業に届きます。

しかし私は、そうした「自分のお金が何かの役に立つから投資する」という考え方は違うのではないかと思います。自分の将来設計のために、資本市場を賢く利用してやるというエゴイズムでいいんです。だって自分のお金だし、自分の人生設計なんですから。

社会の役に立つとPRしている企業だからといって、その株式を買うことが、自分自身の人生設計に役立ってくれるかは分かりません。特に「途中のストレスを無視して最後に笑う」資産運用をしようという場合、個々の企業に必要以上に深入りする必要は、必ずしもないと考えています。

市場は突然上がるもの。だからずっと居続けるのが賢明。

そういえば、そうした「長期スタンスの重要性」に関しても、最近気になることがあります。それは「長期投資が大事と言われてきたが、何も考えず長く持つのではダメ。必要に応じた見直しも必要だ」というもので、大いに違和感を覚えます。

ぼーっとした長期投資でなく、色々考えながら長期投資すべきというのは確かに格好いいのですが、実際には相場動向に翻弄された売買に陥ってしまう可能性が高いです。この前話を伺ったお客様なんて、ここ2年ほどは同じ投信を3ヵ月と保有したことがないとのことでした。毎回買い換える度に利益が乗っているからいいんだと仰っていましたが、聞いてみると利益といっても本当に僅かなんです。5%とか10%未満とか。そんな薄い利益で売却して、次の投信の購入時手数料に2%とか3%を支払っているなんて、どう見ても理屈が合いません。

それにいつまでも好回転が続くとも限りません。もしかすると、「ここぞ」という大きな上昇の前に売却してしまっていたり、小さく利益を重ねてはいても次の1回ですべて持って行かれたりして、手数料とストレスと、ヘタすると損だけが溜まっていく皮肉な状況になる恐れがあります。

実際、証券市場というのは突然大きく上がることがあり、出たり入ったりしている中でその上昇を捉えることができないケースを多く見ます。「市場は突然上がるもの。だから出たり入ったりを繰り返すのでなく、概ね大丈夫だと思うならずっと居続ける方が賢明」というくらいの感覚を、私達はお勧めしたいと思います。

 セミナー実況中継 ~前を向く人の、投資信託~

※本記事は日興アセットマネジメントが「セミナー実況中継 ~前を向く人の、投資信託~」として出版した内容より抜粋したものです。

講師 今福 啓之

講師
今福 啓之(いまふく ひろゆき)

日興アセットマネジメント マーケティンググローバルヘッド
2008年2月に「日興AMファンドアカデミー」を開校、金融商品やサービスについてわかりやすくご説明することの重要性を深く認識し、長年にわたり投資に関する正しい知識を学んでいただけるようなプログラムを推進している。



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