【第16回】2時間目:大切なのは「大ざっぱで楽観的」でいる努力
インカムの器 。「土台と柱と器」を考えることが、投資先を選ぶこと

株式の柱

  • 2019年05月07日

インカムの器

「ぶれない土台」、「株式の柱」に続いて、最後は「インカムの器」です。インカムとは定期的に入ってくる現金という意味です。残念ながら適切な日本語がなく、あえて英語のまま行かせてもらいます。個人向け国債を持っている方は半年ごとに利払いを受け取っていると思いますが、あれも債券投資のインカムです。個別株式でも配当金が支払われることがありますが、それもインカムと呼びます。

ただ、ここで言う「インカムの器」とは、ズバリ毎月分配型の投信のことを言っています。毎月一定の決算日に分配金を払い出すタイプの投信ですね。最近少しスローダウンしていますが、この10年、いや15年間、日本の投信の主流はこの毎月分配型の投信でした。

中身は色々ですが、多いのは債券かリートですね。それらは投信の中身として持っていれば定期的にインカムが入ってくるわけなので、投信としても定期的に分配金として払い出しやすいわけです。

図:インカムの器

この連載では「何歳でいくらの金融資産を持っていたいか」というゴールから考える投信の買い方の話をしていますよね。これは何も若い人の老後資金計画に限った話ではなく、今60歳の人だって70歳になった時の人生の選択肢を増やすために、10年後のゴールから考えたリスクの取り方をすべきという意味では一緒です。

「インカムの器(毎月分配)」は必要な人だけ。そして分配金は必ず使うこと。

一方で、定期的な現金を作り出して使って行きたいというニーズが、特にシニア世代に多いのも事実です。本当は、コンクリの預貯金を必要に応じて削ればいいんです。流動性(換金性)の高い預貯金にわざわざ置いているというのは、まさにそのためなんですから。でも、コンクリの基礎を少しずつガリガリ削るのも不安と言えば不安かもしれません。だから投信という箱を使いながら、現金を捻出するという「技」がこれ、「インカムの器」の保有です。

くれぐれも、これは「柱」ではないので資産を成長させるためではないし、「土台」でもないので金融資産の多くを占めるベースでもありません。あくまでも「土台」の上に、必要な人が必要に応じて載せる「器」なんです。それからもうひとつ。そうした目的で持つわけですから、出た分配金は使わねば意味がありません。定期的な現金創出のために持っているわけですから。

「土台と柱と器」を考えることが、投資先を選ぶこと

どうでしょう。「土台と柱と器」という考え方で、それぞれの目的に応じた投信を選んでいこうというご提案でした。「土台」と「柱」については、それぞれ2つの大ざっぱな分類方法(前向きバランスvs.守りバランス、丸ごと買いvs.成長産業しばり)もご紹介しました。とはいえ、きっと今のお気持ちは「まぁ概念は分かったけど、結局どの投信を買ったらいいかは分からないよ」といったところではないでしょうか。実際、最後まですべてを自分で決め切るのは相当に大変だと思います。だから多くの人が「売れ筋ランキング」みたいなので決めてしまうんだと思います。

「土台と柱と器」に則った基本方針までは是非自分で考えてみてほしいのですが、その先の「どの商品を充てるか」については、金融機関の担当者に相談するのも選択肢の一つだと思います。ただ、もうお分かりの通り、決して「何も分からないから」とか「今、何が人気なの?」などと聞いてはいけません。今までお話ししてきたような考え方の枠組みを自分なりに持った上で、「こう考えるんだけど、どう思う?」などと聞いてみてください。きっとすごく有意義な相談になると思います。金融機関の方も「お、この人はすごくしっかり考えてるぞ」と、ピリっと気を引き締めて気合の入ったアドバイスをしてくれるに違いありません。

 セミナー実況中継 ~前を向く人の、投資信託~

※本記事は日興アセットマネジメントが「セミナー実況中継 ~前を向く人の、投資信託~」として出版した内容より抜粋したものです。

講師 今福 啓之

講師
今福 啓之(いまふく ひろゆき)

日興アセットマネジメント マーケティンググローバルヘッド
2008年2月に「日興AMファンドアカデミー」を開校、金融商品やサービスについてわかりやすくご説明することの重要性を深く認識し、長年にわたり投資に関する正しい知識を学んでいただけるようなプログラムを推進している。



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