【第15回】2時間目:大切なのは「大ざっぱで楽観的」でいる努力
株式の柱 ~「丸ごと買い」と「成長産業しばり」

株式の柱

  • 2019年04月22日

株式の柱

さて、家を建てるためには「土台」の上に「柱」を立てなければなりません。金融資産設計においても、将来に向けて資産全体を大きくするには「株式の柱」をしっかりと立てていくことが欠かせません。

人によっては、コンクリの預貯金の上にいきなり株式の柱だけを持つというケースがあってもいいかもしれません。しかし一般に、預貯金以外の金融資産が株式投信だけというのはあまりお勧めできません。金融資産全体が株式市場に影響される度合いが大きくなり、市場環境が芳しくない時にはかなり大きなストレスを抱えることとなるからです。投資期間がたっぷり取れる若い方や、そんなストレスなど何でもない、という覚悟が強い方はコンクリの上に直接「株式の柱」でも構いません。後でお話しますが、実は私自身は今のところ「株式の柱」1本のみ(!)という男気あふれる設計図でやってきています。これについてはまた別の回で。

図:株式の柱

さて、どんな株式投信を「柱」として選ぶべきでしょうか。家の柱を途中で切ったり取り替えたりしないのと同様に、「株式の柱」には、短期間で「とっかえひっかえ」しなければならないようなものは適しません。つまり短期で売買が必要になるようなものは避けるべきです。時間をかけて大きく伸びてくれて、家全体を大きくしてくれる牽引役、エンジン役になってくれるものでなければなりません。

あれこれ取り替えなくて済むためには、まず、国は1つに決め打ちしない方がいいと思います。「何とか日本株ファンド」とか「何とか米国株ファンド」といった「国しばり」はあまりお勧めしません。基本的には世界中の企業に分散される設計のもの、「何とか世界株式ファンド」とか「何とかグローバル株式ファンド」という名前のものがいいと思います。

とはいえ、株式投信も非常に数が多いので、「土台」と同じように、大きく2つに分ける考え方をご紹介しますね。それは「丸ごと買い」と「成長産業しばり」の2つです。

「丸ごと買い」と「成長産業しばり」の2つがある。

「丸ごと買い」とは一般に「インデックスファンド」と呼ばれるもので、簡単に言うと、世の中にあるモノサシと同じ動きをするように設計されたタイプの商品です。

モノサシとはここでは株価指数と呼ばれるものを指しています。日本人に最も馴染みのある株価指数は日経平均株価でしょうか。ニュースでよく耳にしますよね。あれは日本経済新聞社が算出・発表している株価指数なんです。日本経済の温度計、モノサシになるようにと、30以上の業種からそれぞれ代表的な企業を日本経済新聞社が選んだ225社、それを平均して出しているのが日経平均です。

同じような指数が、米国株式なら俗に「ニューヨークダウ」と呼ばれるものなど各国にありますし、先進国とか新興国とか全世界といった、異なるグルーピングのもとで主要企業を選んで算出する株価指数が多く存在しています。指数算出業者という専門の会社などが計算し、数値を発表しています。1つ1つの企業の株価だけだと全体感が見えないので、平均値をもって全体の方向性を把握するのに便利で、まさにモノサシなんです。

しかしこのモノサシ自体は買えません。だって「日経平均」という会社も株式も存在しませんよね。自分で中の225社全部の株式を買えば、まぁ同じことにはなりますが、個人のお客様にとっては現実的ではありません。そこで出番なのがインデックスファンドです。

例えば、日経平均のインデックスファンドは、日経平均株価の日々の値動きと同じように動くよう設計された商品です。ニュースで「本日の日経平均は2%上昇し・・・」と言った日、日経平均のインデックスファンドも2%上昇しているような運用を行ないます。つまり、この投信を買うことで、日本経済を代表する(と日本経済新聞社が考えた)企業の株式をごっそりと「丸ごと買い」することになります。

「丸ごと買い」のメリット・デメリット

これが1つめの「丸ごと買い」というタイプです。一般的な株価指数はその範囲の中の幅広い業種を対象にしています。自動車産業だけとか電機産業だけの株価指数というのは一般的ではありません。さっき説明した日経平均のように、自動車も電機も鉄鋼も、と幅広い業種を対象とし、それぞれの中での主要企業の株価をピックアップして平均するわけです。したがって、この「丸ごと買い」のメリットは偏っていないこと。大企業を押さえられること。デメリットは、非成長産業にも結果的に投資していること。大企業以外のユニークな企業は外れてしまうこと。

「丸ごと買い」のメリット・デメリット

「成長産業しばり」のメリット・デメリット

もうひとつは「成長産業しばり」。さっきの「丸ごと」の逆で、自分で「長期ならなおさら、成長しない産業は避けたいし、成長する産業の企業に投資したい」という考え方です。ちょっと上級編ですね。だって成長する産業とか衰退する産業について考えなければならないんですから。

毎回しつこく言っている「覚悟」と同じなんですが、この「これは長期投資に値する成長産業だな」と決めるのはお客様自身である必要があります。もちろん、金融機関の担当者に色々教えてもらってもいいんですが、最後は自分で決めなくてはなりません。まぁ「丸ごと買い=全産業でいいや」という決断だってお客様自身ですべき、という意味では一緒ですけどね。

さて、その「しばり」をする産業を決めた後は、その中でどの企業に投資するかしないかは、当社のような運用会社の判断に委ねるタイプが一般的です。例えばここ数年、インターネット、AI、ロボット技術など、情報技術や先端技術関連の企業の成長が著しいですよね。お客様自身が「例えば鉄鋼から造船から銀行にも投資する『丸ごと買い』ではなく、この分野は成長するだろうから、『株式の柱』にはこの分野しばりで行こうじゃないか」と決めたとしたら、その中でどの企業の株式をいくらで買っていくらで売るか、あるいは他の銘柄に入れ替えるかなどについては、その投信のファンドマネージャーに任せるということです。

「成長産業しばり」のメリットは、自分の納得感が高くなり愛着が持てること。これ、意外と大事です。しばろうとしばるまいと、株式市場全体が下落する時って、乱暴に言えばどの株式も下がってしまいます。その時「成長産業しばり」の投信を持っている方は強いんですよね。例えば「トランプの発言で全部下がってはいるけど、この産業は成長するんだから関係ないさ」という風に、ストレスに耐えられる場合が多いようです。

その産業の将来に惚れている方ほど、多少の値動きのストレスにめげずに保有を続け、結果的に成功しているというケースをよく見ます。そして当然ながら、成長産業にしばっている分、その産業が首尾よく成長する場合、リターンは「丸ごと」よりも相応に大きくなることが考えられます。

デメリットは当然ながら、その産業がうまく行かないこと。しばっているだけに被害は甚大です。ただ、産業がうまく行くか行かないかって、そう短期で結論の出るものではないんですよね。株式投資の視点だと、どうしても短期目線になりがちですが、当然ながらそこで戦っている企業は投資家の比ではないくらい真剣にビジネスを行なっているはずですし、その結果だってすぐに出ないことも多いわけじゃないですか。このビジネスと株式投資の時間軸の違いは常に思い出すべき大事なポイントです。私達はつい性急にリターンを求めてしまいますが、企業が成長するのには元々長い時間がかかるんですから。

「成長産業しばり」のメリット・デメリット

 セミナー実況中継 ~前を向く人の、投資信託~

※本記事は日興アセットマネジメントが「セミナー実況中継 ~前を向く人の、投資信託~」として出版した内容より抜粋したものです。

講師 今福 啓之

講師
今福 啓之(いまふく ひろゆき)

日興アセットマネジメント マーケティンググローバルヘッド
2008年2月に「日興AMファンドアカデミー」を開校、金融商品やサービスについてわかりやすくご説明することの重要性を深く認識し、長年にわたり投資に関する正しい知識を学んでいただけるようなプログラムを推進している。



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