日本は2000年ごろから、米国でもリーマン・ショック後の2010〜11年ごろから、経済はデフレ(継続的な物価下落)を懸念する状態に陥っていた(日本は一時的にデフレを経験)。現時点、メディアなどでインフレ懸念が話題になっているが、デフレが「懸念」されていたのだから、インフレも「期待」されて良さそうなものだ。ここでインフレが懸念されている理由は、インフレが「供給ショック」から起きているからだろう。
各国中央銀行の直近の政策決定会合は投資家に心待ちにされていた。それまでの市場は、従来の中央銀行のガイダンスが示すよりも早期の利上げを織り込み、インフレが一過性ではなくより厄介で長く続くものになるリスクの高まりを示唆していた。ここ数週間のグローバル債券市場では、短期ゾーンの利回りが上昇する一方で長期ゾーンの利回りが横這いにとどまるか低下しているが、このようなイールドカーブの大幅なフラット化も「政策ミス」の可能性を暗示しているように思われた。
10月31日の衆院選で、自民党は改選前から議席を減らしたものの、単独で261議席を獲得し、「絶対安定多数」を維持した。公明党との連立与党では293議席、改憲勢力の日本維新の会と合わせれば定数の3分の2を上回り、安倍政権以来の政治情勢を継続することになる。
当月のアジア株式市場(日本を除く)は下落し、月間リターンが米ドル・ベースで-4.2%となった。中国の経済成長見通しに対する懸念や米FRB(連邦準備制度理事会)のテーパリング(量的緩和の漸進的縮小)計画が、市場センチメントの主な悪化要因となった。
米国金利の上昇が新興国に悪影響を及ぼすのではないか、という懸念がある。しかし、そもそも「新興国」を一括りに分析することは不適切で、米国との貿易や金融の関係性が弱い国ではあまり影響を受けない。一方、関係性が強い国では、例えば米国への製品輸出が多いブラジル企業が米ドル建て社債を発行している場合、米国金利の上昇で米ドル建て債務の金利負担が増大するようにみえる。
9月の米国債市場は、米FOMC(連邦公開市場委員会)で資産購入の緩やかな縮小がついに11月にも開始されると示唆されたことを受けて、利回りが上昇した。エネルギー価格が急騰している最中に欧州や中国で電力不足がエスカレートしインフレ懸念を駆り立てたことも、利回り上昇を一層促した。一方、中国における停電の発生や恒大集団(Evergrande Group)破綻の可能性に脅かされて同国の経済成長見通しに対する不安が強まったため、リスク・センチメントが悪化した。最終的に、月末の米国債利回りは2年物で前月末比0.067%上昇の0.28%、10年物で同0.178%上昇の1.49%となった。
ボラティリティは、当社がいずれそうなるだろうと予想していた通り高まっている。9月はリスクが再認識されやすい月だが、市場参加者が夏季休暇から戻ったら株式市場が史上最高値になっていたという状況は、近い将来に重大なリスク・イベントが数多く控えている現実とは相容れない。米FRB(連邦準備制度理事会)が遅かれ早かれ実施する予定のテーパリング(量的緩和の漸進的縮小)や、政局からもたらされる債務上限問題のストレス、新型コロナウイルスのデルタ株の感染拡大を受けた経済成長の鈍化など、一部のイベントは予想済みであったが、世界同時に近い形で発生したエネルギー不足はやや予想外であったと言える。
過去5年間の平均気温は観測史上最も高いものとなった。2020年までの10年間で、地球の地表温度は産業革命前の時代(1850~1900年)と比べて1.09℃上昇した。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、気温上昇が2℃のレベルになると生態系や人間の健康への極めて深刻な影響が想定され、これを回避するためには地球温暖化を1.5℃未満のレベルで安定させることが非常に重要であると警告している。
誰もがインフレを気にしている。中央銀行の高官からパン屋の店主まで、インフレは最も大きな話題のひとつとなっている。多くのコモディティの価格が急上昇しているからだが、上昇の理由は様々で、供給の制約や需要の急増、悪天候などよりどりみどりだ。
世界が落ち着こうとしている「ニュー・ノーマル」は、コロナ前の標準とはかなり異なるものになるとみられる。これに含まれるのは、「ウィズコロナ」の生活様式によって形作られる異なる需要パターンや、確固たる政策目的を伴う財政出動の継続などだ。かつてない規模の金融緩和政策はまもなく縮小される見込みで、その過程では、経済と市場が時とともに徐々に顕在化するであろうニュー・ノーマルに順応していくなかで、ボラティリティが高まるとみられる。
中国の不動産開発大手、恒大集団のクレジット・リスクが市場に認識されたことで、日本や米国の株式市場が揺れ動いた。この問題は、大都市やその近郊など一部地域での不動産投資の行き過ぎによる価格高騰を抑えるため、2016年ごろからの中国政府による投資制限に端を発している。
「世界人口は2064年の97億人をピークに減少する――。米ワシントン大は20年7月、衝撃的な予測を発表した」(日本経済新聞8月23日付)。国連が2100年に109億人となるまで増え続ける、と試算してることは良く知られているが、今回の発表内容は、中国をはじめとする新興国の少子高齢化が想定以上に進むという警鐘だ。
当月のアジア株式市場(日本を除く)は上昇した。月初は新型コロナウイルスのデルタ変異株の感染拡大に対する懸念が市場の重石となったものの、月末にかけては米FRB(連邦準備制度理事会)のハト派的な発言や打撃を受けていた中国のテクノロジー・セクターの反発が市場センチメントを押し上げ、月間リターンは米ドル・ベースで2.3%となった。
コロナ後の世界を熟慮するにつれ、物事がかつてのような「ノーマル」に戻ることはないだろうとの見込みが強まってきた。ワクチンは依然新型コロナウイルスに感染する人々が重症化するのを防ぐのに高い効果を上げているが、一方でデルタ変異株は封じ込めるのがより難しいこともわかってきている。世界各国はウイルスとともに生活しながら公衆衛生への影響を最小化する術を学びつつある。この影響として、需要パターンがコロナ前の標準から変化するとともに、最初は力強い持ち直しを見せた景気回復がおそらくはより緩やかなペースで続くことになるとみられる。とりあえず今のところは、各国経済は非常に緩和的な金融・財政政策に依然下支えされている。
8月の米国債市場は、米国の雇用統計が市場予想を上回る雇用の伸びを見せたことを受けて、利回りが上昇した。米FRB(連邦準備制度理事会)の一部高官によるタカ派的発言も利回りの上昇を促した。ジャクソンホール会議にかけても利回りは再び上昇したが、同会議ではジェローム・パウエルFRB議長が同中銀による利上げ時期が先送りされる可能性を示唆した。最終的に、月末の米国債利回りは2年物で前月末比0.024%上昇の0.21%、10年物で同0.087%上昇の1.31%となった。
9月3日昼頃、菅義偉首相退陣(自民党総裁選(以下、総裁選)の不出馬表明)の意向が報じられた。直接の原因は人事の行き詰まりとされているが、新型コロナウイルス対策の不満に起因する内閣支持率の低迷が背景にあろう。
東京で開催された夏季オリンピックは、ここ数週間における有難い気晴らしとなっており、現在の環境下でオリンピックを非常に順調に開催した日本は賞賛に値する。特に、各競技のトップ選手が何年間にも及ぶ準備や計画の成果をみせる姿には、メダル獲得の成否に関係なく心を揺さぶられる。
当月のアジア株式市場(日本を除く)は、中国での個別学習指導事業およびテクノロジー関連セクターへの政府による規制強化を受けて同国株式が売り込まれたことが重石となり、下落して米ドル・ベースの月間リターンが-7.5%となった。域内諸国で新型コロナウイルスの感染者数が再び増加したことも、アジア株式に対するセンチメントを悪化させた。
7月の米国債市場ではイールドカーブがブル・フラット化した。FOMC(連邦公開市場委員会)の会合は大した材料とはならなかったが、資産買入れに関するフォワード・ガイダンスが若干変更され、同委員会の目標に向けて進展がみられたとの見方が示された。ただし、テーパリング(量的緩和の漸進的縮小)の開始に必要な「一段の大幅な進展」には依然至っていない。月末の米国債利回りは5年物指標銘柄で前月末比0.20%の低下、10年物指標銘柄で同0.25%低下の1.22%となった。
当社のリフレ見通しは最近、クロス・アセットのプライシングによって試されている。約1年前にリフレの見込みについて議論をし始めた当初、当社では複数の主要な要因を特定した。その最たるものが、金融・財政政策による大規模な景気刺激策が同時に実施されることに加えて、最終的な経済活動の再開が景気に大きなプラスとなることだった。経済活動は当初のロックダウン(都市封鎖)の終了に伴って力強く回復し、その後も新型コロナウイルスのワクチン接種や「ブルーウエーブ」(民主党が大統領選に勝利するとともに上下院を制すること)選挙を受けた米国の追加財政出動によってさらに押し上げられる、と予想していた。これらの要因が現実化し始めるに従い、リフレ・ポジションは今年の第1四半期を通じて非常に良好なパフォーマンスを示した。
世界的に、REIT指数は株価指数に対して出遅れているようだ。日米ともに、REIT指数のコロナ・ショック以前の水準におおむね戻ったものの、株価指数はすでにコロナ・ショック以前を超えているからだ。
当月のアジア株式市場(日本を除く)は、域内で新型コロナウイルスの感染者数が最近急増していることなどが重石となり、小幅に下落して月間リターンが米ドル・ベースで-0.1%となった。インフレの加速をめぐる根強い懸念や、米FRB(連邦準備制度理事会)のテーパリング(量的緩和の漸進的縮小)が予想よりも早く実施されるのではとの不安も、市場センチメントを冷え込ませた。
6月の米国債市場では短期債がアンダーパフォームし、イールドカーブがフラット化した。米FRB(連邦準備制度理事会)がよりタカ派寄りのスタンスに転換したことを受けて、米国債のイールドカーブは月半ばに大きくフラット化した。とりわけ、FOMC(連邦公開市場委員会)メンバーの金利予測の分布をチャート化した「ドット・プロット」の中央値によると、前回3月分で利上げが予測されていなかった2023年において、足元では2回の利上げが示唆されている。最終的に、月末の米国債利回りは2年物で前月末比0.107%上昇の0.25%、10年物で同0.127%低下の1.47%となった。
日興アセットのアジア株式チームのメンバーでシニア・ポートフォリオ・マネジャーであるグレース・ヤン氏が、Citywireのアジア部門ベスト・ファンド・マネジャー賞受賞という最近の栄誉の背景にある潜在的理由や、アジアの小型株分野で隠れた珠玉銘柄を発掘することに対する同氏の情熱について語ってくれました。
米国と中国の経済成長は、景気刺激策の効果と繰り延べ需要の当初の勢いが弱まり始めるのに伴い、当面の天井を打ちつつある可能性が高い。中国では、クレジットインパルス(新規与信の対GDP比の伸び率)がマイナスに転じる(通常は景気悪化の兆候)一方で需要の正常化が続いており、実体経済が必要とする分野に信用供与が向かうよう当局が引き続き微調整を行うなか、製造業における需要の膨張から通常の消費パターンへと移行しつつある。米国では、インフラに特化した大規模な財政出動への期待は後退するとみられるが、依然高水準にある過剰貯蓄、雇用の回復、緩和的な金融政策が相まって好調な需要の継続を支えている。