ETFプロバイダーが考えるETFのメリットとデメリット

ETFプロバイダーが考えるETFのメリットとデメリット

  • 最終更新日:2023年11月1日(公開日:2019年11月13日)

今井 幸英

筆者 今井 幸英(いまい こうえい)
ETFセンター・シニア・アドバイザー

1985年4月 株式会社日本興業銀行入社。みずほフィナンシャルグループ(みずほ総合研究所、興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現 アセットマネジメントOne))を経て、2006年12月 日興アセットマネジメント株式会社に入社、2008年8月よりETFビジネスに従事。2020年11月から現職。2012年、2013年 武蔵大学経済学部 非常勤講師、2014年 学習院大学経済学部 非常勤講師。長い運用商品開発の経験を活かし、ETFの開発、ETFビジネスの推進活動を行っている。

最近名前を聞くことも増えてきたETF(上場投資信託)。使ってみたいけど投資信託とどう違うの? 株だと優待があってお得みたいだけどETFにはあるの? など、疑問をお持ちの方も多いはず。今回は、東京証券取引所に上場するETFのメリットとデメリットを解説します。

1.ETFのメリット

ETFのメリットから見ていきましょう。

1-1.リアルタイムで取引できる

ETFは金融商品取引所に上場しているので、証券口座をお持ちであれば取引時間中はいつでも取引が可能です。非上場の投資信託の場合、基本、取引は1日1回となっているのに比べ、ETFは取引時間中であればリアルタイムで何度でも取引できます。たとえば、リーマン・ショックのような急激な相場の変化が起きた場合、投資信託だと、設定または解約の申込み後、基準価額が確定するまでの間、市場価格が変動して思っていた価格から大きく乖離することがあるのに対し、ETFは取引時間内であればすぐに売買注文を出して約定価格を決めることができます。

 

1-2.どの証券会社でも取引できる

投資信託は金融機関によって取り扱いが異なります。ある投資信託を購入するために、取り扱いのある金融機関に新たに口座を開設しなければならないこともしばしばあります。ETFは株取引と同じように、全国の証券会社*でお取引いただくことが可能です。

*お客様の証券売買の取次ぎを行わない証券会社もあります。

 

1-3.手軽に分散投資できる

最近では「分散投資」という言葉を耳にすることが多くなってきました。投資の世界でよく使われる言葉ですが、1つの銘柄や資産に投資をするよりも、値動きの異なる複数の銘柄を組み合わせた方が、リスクが下がり、投資効率が上がるという考え方です。ETFは、さまざまな銘柄を組み合わせて運用されているので、少額から手軽に分散投資ができる金融商品と言えます。

 

1-4.コストが安い

個人が手軽に分散できるツールとして、ETFと投資信託が挙げられますが、一般的に、ETFの方が投資信託よりも信託報酬が低いという特徴があります。

また、ETFは「貸株」という、自分が持っているETFを貸し出す制度を利用することができます。この制度を利用するとETFを貸し出した対価に「貸株料」を受け取ることができます。この収益によってETFの信託報酬分のコストを軽減できる効果があります。ただし、NISA口座は適用外となりますので、ご注意ください。

※将来の貸株金利の支払いおよびその金額について示唆、保証するものではありません。貸株サービスの詳細や注意点などについては、各証券会社のホームページ等をご確認ください。
※有価証券の貸付行為などにおいては、取引相手先リスク(取引の相手方の倒産などにより貸付契約が不履行になったり、契約が解除されたりするリスク)を伴い、その結果、不測の損失を被るリスクがあります。お取引の際は、リスクを充分に認識・検討し、投資家ご自身で慎重にご判断を行なっていただく必要があります。

   

1-5.少額から投資できる

個別株に比べ、ETFや投資信託は最低購入単位が低く設定されています。例えば、トヨタ自動車(7203)は27万円程度*、ファーストリテイリング(9983)は330万程度*と、かなり購入のハードルが高いものもあります。日興アセットのETFであれば、比較的最低購入金額が安いもので、日経平均に連動するタイプの「上場インデックスファンド日経225(ミニ)(1578)」で2,560円程度*、そのほかの銘柄も数千円~数万円程度で購入できるものが中心となっています。

*2023年10月11日時点。手数料などの費用は含みません。
※上記銘柄については、個別銘柄の取引を推奨するものでも、将来の組入れを保証するものでもありません。

2.ETFのデメリット

ここまでは、ETFのメリットに注目してご紹介してきました。でも、本当にそんなに良い事ばかりなの?と思っている方も多いはず。もちろん、ETFにも不得意な部分はあります。詳しく見ていきましょう。

2-1.複数資産への分散投資をしたい場合、現在の日本のETFでは投資家自身で組み合わせを考えないといけない

ETFは、複数の銘柄を組み合わせて組成されていますが、基本的に株、債券、リート、コモディティ(金・原油など)のように資産クラスで分かれています。分散投資の考え方で言えば、異なる資産クラスにもバランスよく分散投資をするのが望ましいのですが、現在、ETF1本で全ての資産クラスをカバーするETFがないため、投資家ご自身で組み合わせを考える必要があります。
逆に組み合わせを考えて、相場観を活かして適宜入れ替えをしたい、という方にはETFがおすすめです。一方で、投資信託には、バランス(マルチアセット)ファンドといって複数の資産をあらかじめ組み合わせた商品があり、1本で全てお任せしたい、という方にはこちらがおすすめです。

日興アセットにはバランスファンドの投資信託も多数ご用意がございます。
日興アセットマネジメント ファンド情報

 

2-2.リバランスのお任せはできない

「2-1.複数資産への分散投資をしたい場合、現在の日本のETFでは投資家自身で組み合わせを考えないといけない」でご紹介した“さまざまな資産を組み合わせバランス良く投資をする手法”は「ポートフォリオ運用」と呼ばれ、長期の資産運用をする上でとても重要な考え方です。適切な組み合わせと割合で資産を保有し、資産の見直しや割合の調整(リバランス)をすることが必要なときがありますが、ETFを利用して自分で組み合わせる場合、これらもご自身で行っていただく必要があります。
一方、バランス型の投資信託では、ファンドマネージャーが資産配分の見直しや調整を行ってくれるので、リバランスまでお任せしたい場合はこちらを検討するのが良いでしょう。

 

2-3.複利効果が期待できない

「複利効果」という言葉をご存じでしょうか。運用で得た利益(利息や配当など)を再び投資に回すことで利息が利息を生み、お金が増える効果のことで、長期で運用を行うほど効果が大きくなる傾向があります。投資信託であれば、分配金を再投資する選択が可能なため、その場合、自動的に分配金の再投資が行われ、複利効果が期待できます。
一方、ETFの場合、分配金を自動で再投資してくれる仕組みはなく、決算時に全て現金で支払われてしまうため、ご自身で再投資していただく必要があります。

 

※国内籍ETFの場合

 

2-4.積立投資ができない

長期投資は始めたいけど、毎月少額ずつ手作業で購入しつづけるのはなかなか億劫、という方や、購入するタイミングがわからない、という方向けに各金融機関が提供しているのが、毎月決まった額を購入し、積み立ててくれる積立投資のサービスです。あらかじめ毎月一定の金額を設定しておけば良いだけなのですが、ETFの積立投資に関しては、2023年10月現在、対応している証券会社がまだまだ少なく、自動積立投資がし難い投資対象です。

「ETFは積立投資ができる?」ではETFの積立投資について解説しています。

 

2-5.株主優待がない

ETF、投資信託問わず、株主優待を受け取ることができません。株主優待を受け取るには、実際にその株主優待を実施している企業の株を保有する必要があります。たとえその企業の株が、投資したETFや投資信託の組入銘柄に入っていたとしても、ETFや投資信託の形で間接的に保有しただけでは優待の対象になりません。

※投資信託は、投資信託を運用する「委託会社」と、集めた資産を保管・管理する「受託会社」が役割を分担し、運営を行っています。信託財産は受託会社において分別管理されています。投資信託での投資先企業の株主は「受託会社」である信託銀行となり、株主優待も信託銀行が受け取ります。受け取った株主優待は、投資信託協会で定められたルールに則り、原則として換金できるものは換金し信託財産に繰り入れられます。

3.まとめ

ETFのメリット、デメリットをご理解いただけたでしょうか?投資に正解はないので、ご自身にあった商品を、一番使いやすい方法で投資していくことが、長く投資と付き合っていく方法だと言えます。
ETFは、比較的手数料が安く、取引所に上場していることから、長期の資産運用向きの金融商品と言われています。ETFの特性をご理解いただき、投資をご検討いただく際に参考にしていただければ幸いです。

日興アセットは、今後もより一層の商品の充実に努め、皆さまに幅広い投資機会を提供してまいります。



(以上)

記事内でご紹介したETFについて
1578 - 上場インデックスファンド日経225(ミニ)(愛称:上場日経225(ミニ))
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[今井監修]ETFのキホンシリーズ

「ETFのキホン」シリーズでは投資家の皆様にETFを良く知っていただいて、より良く活用していただきたいとの思いで書かせていただいています。