新NISAの分配金や配当金は非課税?
新NISAの活用方法を解説
- 公開日:2024年8月2日
筆者 今井 幸英(いまい こうえい)
ETFセンター・シニア・アドバイザー
1985年4月 株式会社日本興業銀行入社。みずほフィナンシャルグループ(みずほ総合研究所、興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現 アセットマネジメントOne))を経て、2006年12月 日興アセットマネジメント株式会社に入社、2008年8月よりETFビジネスに従事。2020年11月から現職。2012年、2013年 武蔵大学経済学部 非常勤講師、2014年 学習院大学経済学部 非常勤講師。長い運用商品開発の経験を活かし、ETFの開発、ETFビジネスの推進活動を行っている。
目次
新NISAの配当金や分配金は非課税?
NISA口座で投資した株式からの配当金、ETF・投資信託からの分配金は非課税になります。NISA口座以外の特定口座・一般口座で投資した資産から受け取った配当金や分配金は課税されます。
投資にかかる税金
投資をすることによって得た利益「配当金」「分配金」「値上がり益(売却益)」は課税対象です。
特定口座・一般口座での投資で、源泉分離課税の場合、20.315%が課税されますが、非課税になるNISA口座の投資はたいへんお得な投資になります。
詳細はETF(上場投資信託)の税金をご確認ください。
そもそも分配金とは?配当金との違いは?
分配金とは、投資信託(ETFも投資信託の一種)のような投資家の資金を合同して運用するファンドが決算時に運用によって得られた収益を投資家に分配するお金を指します。一方、配当金は事業会社があげた収益のうち分配されたお金のことを言います。分配の出所によって分配金と配当金の言葉が区別して使われています。分配金と配当金はその原資が収益であることは共通です。また、ファンドや事業会社の総資産から分配されることから、分配(配当)後は分配金(配当金)分だけ価値が落ちます(分配落ち、配当落ち)。次の図もご参考にしていただくと分かり易いかもしれません。
※上記は価格変動が無いと仮定した場合の例示です。
投資信託・ETFの基準価額から分配金が落ちるのは決算日になる一方、市場取引を行うETFと株式の分配金・配当金が落ちるのは決算日の前営業取引日(権利落ち日)になります。 前日引け値から分配金予想額(配当金予想額)を引いたものが権利落ち日の取引のスタート価格(基準値)になります(この日に買い付けても分配金(配当金)が決算日に受け取れないため)。
分配金と配当金の違い
分配金 | 配当金 | |
---|---|---|
支払い主体 | 投資信託・ETF(ファンド) | 事業会社(株式の発行会社) |
原資 | 運用収益等 | 事業収益 |
受取人 | 決算日の受益権保有者 | 決算日の株式保有者 |
落ち日 | 投資信託・ETFの基準価額から分配金額が落ちるのは決算日 市場取引を行うETFは決算日の前営業日(権利落ち日) |
決算日の前営業日(権利落ち日) |
ETFの分配金とは?利回りが魅力のETF銘柄もご参考にしてください。
非課税にならない場合もある?
NISA口座での投資で非課税になるのは、あくまでも日本国内で課税される部分が非課税になります。海外に投資し海外現地で課税されるものは非課税になりません。
米国ETFや米国株
NISA口座で米国ETFや米国株に投資することは可能ですが、米国現地での課税は避けられません。日米租税条約で税率が軽減されていますが米国ETFからの分配金や米国株からの配当金に対して、原則、10%の税金がかかります。NISA口座では日本国内の課税が免除されているので外国税額控除※をすることができません。
※外国税額控除とは、海外の現地課税を日本の所得税の範囲で税金を減免する制度です。NISA口座からの投資では日本国内の課税が無いので減免することができないことになります。NISA口座ではなく特定口座・一般口座の投資であれば外国税額控除が適用でき、確定申告で所得税額から海外の現地課税を差し引くことが可能になります。
分配金・配当金の受取り方法
特に注意しなければいけないポイント
分配金の受け取り方法は3つあります。
- それぞれの証券口座で分配金・配当金を受け取る
「株式数比例配分方式」でないとNISA口座での利益を非課税で受け取ることができません。
ここは特にご注意をお願いいたします。 - ゆうちょ銀行、郵便局等で受取る「配当金領収証方式」や
- まとめて特定の金融機関に分配金・配当金を送って受け取る「登録配当金受領口座方式」では、NISA口座の投資でも分配金・配当金を非課税で受取ることができません。
※分配金・配当金の受け取り方法について、詳しくは証券会社(証券口座をお持ちの場合はお取引のある証券会社)にお問い合わせください。
新NISAで人気の投資
検索エンジンで「新NISAで人気の投資」と検索すると沢山の記事が出てきます。SNSでも沢山の情報が発信されています。概してコストをかけずに幅広く分散投資するインデックス運用の投資が話題の中心かと思います。
個人投資家の中長期の資産形成を目的とした新NISAですので、運用期間が長くなれば長くなるほど負の影響が大きくなるコストは低いことにこしたことはありません。また、分散投資をし、リスク分散することもたいへん大切なことです。しかしながら特定の投資信託に人気が集中しています。その人気にそのまま乗るのもありかとは思うのですが、特定の商品に資金を集中することのリスクも気になるところです。特に金融商品の場合、類似商品が必ずと言ってよいほど存在します。
ちょっと管理は面倒になりますが、それらも併せて投資するのも運用商品(運用会社)の分散の視点も必要ではないかと思います。また、NISAでは分配金が非課税になるころから、個別株投資の配当金や投資信託の分配金に注目した投資にも関心が集まっています。そこで資産クラスや投資コンセプトの違う金融商品(高配当株・REIT)への分散投資を考えるのも有効ではないでしょうか。
さらに言えば、ご自身の運用目的と照らし合わせて齟齬のないものかも今一度ご確認いただくことも大事かと思います。
新NISAで注目のETFは?
注目の集まる高配当ETF
新NISAのつみたて投資枠ではETFを扱う証券会社が限定的で投資がしにくい環境ですが、成長投資枠ではレバレッジ・インバースETFなどの一部のETFを除いて多くのETFに投資することが可能です。そのなかでも高配当ETFに注目が集まっているようです。通常なら分配金・売却益にかかる源泉税20.315%(源泉徴収ありの特定口座(源泉徴収選択口座)を選択している場合)が無いのですから、投資家の関心も高くなるのも道理です。
ただし高配当ETFに関しては、国内株、外国株、株式だけ、または、REITを組み合わせたものに加え、高配当銘柄の選び方も、配当実績、予想配当の高いといったところから様々なものがあります。最終的には投資をされる方の選択によるのですが、ご自身の運用目的と照らし合わせて納得のゆくETFを選んでいただくことが肝要かと思います。
新NISAの成長枠投資は高配当ETFに注目が集まっています~留意点も解説もご参考にしていただけると思います。
まとめ
新NISAの活用方法ということを考える場合、結局はその個人投資家の運用目的は何かということに尽きるのではないのかと思います。中長期の資産形成を考えるのであれば分配金、配当金に着目するよりも資産の成長を着実に考えられるような運用対象を選びたいものです。人気の商品がご自身の投資の目的にかなっているのでしたら良いかと思います。文中でも触れたように運用商品(運用会社)の分散や他の金融商品との組み合わせも考えてみてください。
また、月々の収入を補うような定期収入の獲得を目的とする場合、新NISAの成長投資枠で分配金や配当金が期待できる投資を考えるのは目的にかなった投資かと思います。ただし、分配金を期待して高配当ETFや投資信託に投資する場合、その高配当を実現するための運用対象、投資対象銘柄選定の考え方も様々ありますので、ご自身で共感、納得、信頼できるかといった観点で見ていただくことが必要かと思います。
運用方法については、ETFの運用方法についてもご参考にしていただけると思います。
(以上)
※当ページは、一部個人の見解を含み、会社としての統一的見解ではないものもあります。
[今井監修]ETFのキホンシリーズ
「ETFのキホン」シリーズでは投資家の皆様にETFを良く知っていただいて、より良く活用していただきたいとの思いで書かせていただいています。