ETFの種類と選び方

ETFの種類と選び方

  • 公開日:2023年2月22日

今井 幸英

筆者 今井 幸英(いまい こうえい)
ETFセンター・シニア・アドバイザー

1985年4月 株式会社日本興業銀行入社。みずほフィナンシャルグループ(みずほ総合研究所、興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現 アセットマネジメントOne))を経て、2006年12月 日興アセットマネジメント株式会社に入社、2008年8月よりETFビジネスに従事。2020年11月から現職。2012年、2013年 武蔵大学経済学部 非常勤講師、2014年 学習院大学経済学部 非常勤講師。長い運用商品開発の経験を活かし、ETFの開発、ETFビジネスの推進活動を行っている。

ETFには様々な種類があり、日本だけでなく海外の取引所にも上場しています。英国の著名なETF調査機関のETFGIによると、世界のETFの上場銘柄数はなんと11,073本(2022年11月末時点)となっていて、種類も多岐にわたっています。
その種類と選び方について考えてみたいと思います。

ETFの種類別の特徴と選び方

ETFの種類

ETFを上場市場で分類すると、大まかに国内ETFと海外ETFに分けられます。海外ETFの代表格は米国ETFでしょう。
前出のETFGIでは、ETFを次のように分類しています。

<投資対象資産別>

  • 株式(REIT(リート)に投資するETFが含まれています)
  • 債券
  • コモディティ(金や貴金属、原油などに投資するETF)
  • 通貨(ドル、ユーロなど通貨に投資するETF)
  • バランス(株式や債券など、複数の資産に投資するETF)

<運用手法別>

  • アクティブ(インデックス運用でない、連動対象指数の定めのないETF、銘柄を選択する運用をするETF)
  • オルタナティブ(売り買いを同時にするといった特殊な運用、または特殊な運用対象のETF)
  • レバレッジ(日本では日経平均の2倍の値動きのETFが知られるが、派生商品を使って値動きが大きく出るように作られたETF)
  • インバース(元の資産の逆の値動きになるように作られたETF)
  • レバレッジ・インバース(レバレッジ・インバース=元の資産の逆の値動きが大きくなるように作られたETF)

国内外のETFの種類と数・純資産残高

国内外のETFの種類と数・純資産残高

含む重複上場、ETN (ETFGI調べから日興アセット作成、2022年11月末時点 換算レート$=135円)

初心者におすすめなETFの選び方

まずは、分かりやすく、管理しやすいということから国内ETFで考えてはいかがでしょうか。国内ETFは、日本円で普通の証券口座で売買が可能で、東京証券取引所の取引時間であればリアルタイムに評価額が把握できます。 海外ETFの種類の豊富さは魅力ですが、取引には外国証券投資口座を持っている必要がありますし、取引時間が海外時間で、実質、外貨による売買決済になりますので為替の手数料がかかります。さらに税金処理で確定申告が必要な場合があります。決算書などの開示資料も英語のため、英語力も必要になります。
しかしながら国内ETFでも200本以上の銘柄があって、選ぶのに迷ってしまうかもしれません。そこで値動きがわかりやすい投資対象、たとえば日本株に投資するETFであれば日経225やTOPIXに連動するETF、また、米国株式であればダウ平均やS&P500に連動するETFはいかがでしょうか。これらの指数の上がり下がりは毎日のニュースで耳にするでしょうから、投資したETFがどうなっているか分かりやすいかと思います。分かって、慣れてきたところで投資対象を広げてゆけば良いのではないでしょうか。

初心者におすすめなETFの選び方

ETFの種類別の特徴と選び方

実際に日興アセットの商品を例にETFの種類を説明してみたいと思います。

国内・海外株式のETF

日本株式(国内株式)や海外株式に投資するETFですが、多くは株式の指数(インデックス)の構成銘柄をその指数に採用されている比率に近づけるように投資をするものです。
よってETFの特性は連動対象の指数の特性によりますので、おおまかでも指数の特性を理解してETFを選ぶのが良いかと思います。
たとえば、日本株に投資したいが、代表的な会社に分散投資したいときは日経225 ETF、日本株市場に広く投資したいときはTOPIX ETFといったように選ぶことです。

指数 指数の特性 日興アセットのETFの場合
日経平均株価
(日経225)
代表的な会社に分散したいとき 上場インデックスファンド225
 (証券コード:1330)

上場インデックスファンド日経225(ミニ)
 (証券コード:1578)
TOPIX
(東証株価指数)
日本株市場に広く投資したいとき 上場インデックスファンドTOPIX
 (証券コード:1308)

また、米国株に投資したいときは、ダウ平均ETF、S&P500 ETFになりますが、海外株式に投資するETFでは為替リスクがあります。海外株式に投資するETFには、為替リスクを低減するために為替ヘッジを行うものと行わないものがあります。ニュースで見聞きする海外の株価指数情報には為替変動部分が織り込まれていませんので、それらの動きにイメージが合うものは為替ヘッジをしたものになります。

指数 指数の特性 日興アセットのETFの場合
ダウ・ジョーンズ工業株価平均
(ダウ平均、NYダウ)
米国を代表する優良企業30社を平均して算出する指数 上場インデックスファンド米国株式(ダウ平均)為替ヘッジなし
(証券コード:2235)

上場インデックスファンド米国株式(ダウ平均)為替ヘッジあり
(証券コード: 2562)
S&P500指数 米国を代表する500社程度を対象に算出する指数 上場インデックスファンド米国株式(S&P500)
(証券コード:1547)

上場インデックスファンド米国株式(S&P500)為替ヘッジあり
(証券コード:2521)

ところで、各運用会社から同じ指数に連動するETFが出ていますがどう選んだら良いのか悩むこともあるかと思います。信託報酬料率、流動性など、様々な違いがありますが、市場の競争や改善が進んで違いが少なくなってきています。最終的には、運用は時間がかかるということから信頼のおける運用会社のETFを選ぶということが良いのかもしれません。

日興アセットの国内・海外株式のETF

分類 コード 愛 称 特 徴
国内株式 1308 上場TOPIX 東証上場銘柄に広く分散投資
国内株式 1330 上場225 日経平均に投資するETF
国内株式 1358 上場日経2倍 日経レバレッジインデックスに連動
国内株式 1399 上場高配当低ボラティリティ 高配当と低ボラティリティを目指すETF
国内株式 1481 上場日本経済貢献 設備・人材投資に積極的な企業に投資
国内株式 1490 上場高配当低ボラティリティ(βヘッジ) ロング・ショート戦略に連動
国内株式 1578 上場日経225(ミニ) 小口投資が可能なETF
国内株式 1586 上場TOPIX(除く金融) ダブルギアリング規制を回避
国内株式 1592 上場JPX日経400 JPX日経400に投資、小口投資が可能
国内株式 1698 上場高配当 高配当株(リートを含む)に投資
海外株式 1322 上場パンダ 中国本土株(A株)に投資
海外株式 1547 上場S&P500米国株 米企業500社に投資(為替ヘッジなし)
海外株式 1554 上場MSCI世界株 日本を除く全世界株に投資
海外株式 1680 上場MSCIコクサイ株 日本を除く先進国株に投資
海外株式 1681 上場MSCIエマージング株 新興国株式に投資
海外株式 2521 上場S&P500米国株(為替ヘッジあり) 米企業500社に投資(為替ヘッジあり)
海外株式 2235 上場ダウ平均米国株(為替ヘッジなし) 米企業30社に投資(為替ヘッジなし)
海外株式 2562 上場ダウ平均米国株(為替ヘッジあり) 米企業30社に投資(為替ヘッジあり)
海外株式 2568 上場NASDAQ100米国株(為替ヘッジなし) 米国上場100社に投資(為替ヘッジなし)
海外株式 2569 上場NASDAQ100米国株(為替ヘッジあり) 米国上場100社に投資(為替ヘッジあり)

国内・海外債券のETF

債券に投資するETFです。
債券は国、政府機関、企業などが発行する借用書のようなもので、投資家に期間中クーポン(利金)を払い満期に額面金額を返済するものです。こちらも様々な種類、期間、利回りの債券があります。国内・海外株式のETFと同じように、債券の指数(インデックス)の構成銘柄をその指数に採用されている比率に近づけるように投資するものが多くを占めています。
海外債券のETFについては、海外株式に投資するETFと同様に為替リスクがあります。海外債券に投資するETFにも、為替ヘッジを行うものと行わないものとがあります。ただし、通常、為替ヘッジをするとヘッジコストによって国内金利水準、またはそれ以下の利回りになってしまうことには留意が必要です。相対的に高い海外金利の収入を得るには為替リスクを許容することが必要になります。

日興アセットの海外債券のETF

分類 コード 愛 称 特 徴
海外債券 1486 上場米債(為替ヘッジなし) 米国国債に投資(為替ヘッジなし)
海外債券 1487 上場米債(為替ヘッジあり) 米国国債に投資(為替ヘッジあり)
海外債券 1566 上場新興国債 新興国の国債に投資
海外債券 1677 上場外債 先進国の国債に投資
海外債券 2843 上場豪債(為替ヘッジあり) 豪州国債に投資(為替ヘッジあり)
海外債券 2844 上場豪債(為替ヘッジなし) 豪州国債に投資(為替ヘッジなし)
海外債券 2861 上場フランス国債(為替ヘッジなし) フランス国債に投資(為替ヘッジなし)
海外債券 2862 上場フランス国債(為替ヘッジあり) フランス国債に投資(為替ヘッジあり)

J-REIT(リート)・海外REIT(リート)のETF

REIT(リート)に投資するETFです。J-REIT(ジェイ(ジャパンのJ)-リート)は国内のREITを指します。
REITはReal Estate(不動産) Investment(投資) Trust(信託)を略したもので、まさに不動産投資信託です。この投資信託は不動産物件を保有してその不動産から得られる賃料収入などを分配するもので、一定のルールに沿った分配をすると分配金が非課税になることもあり投資利回りが比較的高いのが特徴です。取引所に上場しているものと上場していない(非上場)のものがありますが、ETFが投資対象としているのは上場しているREITになります。
REIT(リート)ETFは高い分配利回りが期待できるため、機関投資家にも人気のあるETFですが、市場環境によっては株式以上の価格変動リスクがあります。
ところで、日興アセットのJ-REIT(リート)ETFは隔月分配となっています。奇数月決算の「上場インデックスファンドJリート(東証REIT指数)隔月分配型(証券コード:1345)」と偶数月決算の「上場インデックスファンドJリート(東証REIT指数)隔月分配型(ミニ)(証券コード:2552)」を合わせて保有すると、毎月、分配金を受取ることができます。このような活用をされている投資家もいらっしゃいます。なお、JリートETFが隔月分配と分配頻度を高くしているのは、ETFの設定・解約(交換)で分配金が増えたり減ったりする現象(分配金の希薄化・濃縮化)の影響を減らすための仕組みとしているという理由があります。

【ご参考】「分配金の希薄化・濃縮化」について:「コラム もっと知りたいETF No.2 分配型ETFは悪いファンド? 分配変動(希薄化と濃縮化)のコントロール ~上場高配当

日興アセットのJ-REIT(リート)・海外REIT(リート)のETF

分類 コード 愛 称 特 徴
J-REIT(リート) 1345 上場Jリート 日本のリートに投資
J-REIT(リート) 2552 上場Jリート(ミニ) 小口で日本のリートに投資が可能なETF
J-REIT(リート) 2566 上場ESGリート 日本のリートにESG投資ができる
海外REIT(リート) 1495 上場アジアリート 日本を除くアジアのリートに投資
海外REIT(リート) 1555 上場Aリート 豪州のリートに投資

コモディティ(商品)のETF

金などの貴金属、石油など商品(コモディティ)に投資するETFです。
商品(コモディティ)は本来なら金融商品取引所で扱われるものではないのですが、ETFの受益権という有価証券でパッケージすることで金融商品取引所に上場、売買が可能になったものです。個人が投資し難い新たな投資機会を提供したETFと言えます。こちらは債券や株式と違い比較的インフレに強いと考えられる商品です。ただし、債券や株式(それに投資する投資信託、ETF)と違って配当・利払・分配が無いことにはご留意ください。
コモディティ(商品)のETFは主要投資対象というよりは周辺投資として位置づけるのが良く、また、株式・債券といった主要ETFと価格変動特性が違うので分散投資の対象として有効なものかと思います。現在、日興アセットのETFにはコモディティ(商品)のETFはありませんが、株式・債券・リートETFと合わせ持つと良いのではないでしょうか。

レバレッジ型・インバース型ETF

株式などの特定の指数の2倍(レバレッジ=てこの意味)、逆連動▲1倍(インバース=逆連動)、逆連動▲2倍(ダブル・インバース=2倍逆連動)の価格変動になるように先物などのデリバティブ(派生商品)を使って運用するETFで、価格変動性が大きくなるハイリスク・ハイリターンのETFです。
このETFは先物などのデリバティブで運用されるので分配金が出難いETFが多いのですが、日興アセットの「上場インデックスファンド日経レバレッジ指数(証券コード:1358)」は日経225 ETF「上場インデックスファンド225(証券コード:1330)」と先物取引を使って運用していて、日経225ETFからの分配金を分配原資として分配金が出るユニークなレバレッジ型ETFになっています。

なお、レバレッジやダブル・インバースのETFは価格変動性が大きいことや、一方向に相場が動いているときはさらに価格変動性が大きくなること、行ったり来たりする相場展開のときは値段が下がりやすい特性があることには注意が必要です。長期運用より短期売買を行うのに適したETFとなっていますので、ある程度、ETFの売買に慣れた投資家に使っていただくのが良いのではないかと思います。

日興アセットのレバレッジ型・インバース型のETF

分類 コード 愛 称 特 徴
レバレッジ 1358 上場日経2倍 日経平均の約2倍になるように投資
レバレッジ 2239 上場S&P500レバレッジ2倍 S&P500先物の約2倍になるように投資
インバース 2240 上場S&P500インバース S&P500先物のマイナスの動きになるように投資


ETFには多くの種類があることがご理解いただけたと思いますが、ETFの特性は連動対象の指数の特性によりますので、おおまかでもその指数の特性を理解してETFを選ぶこと、また、運用は時間がかかるということから信頼のおける運用会社のETFを選ぶということを心掛けていただけると、投資家の皆様にとって良い運用ができるのではないかと思います。
日興アセットのETF、上場インデックスファンドを投資家の皆様のお役に立てていただければ幸いです。

(以上)

[今井監修]ETFのキホンシリーズ

「ETFのキホン」シリーズでは投資家の皆様にETFを良く知っていただいて、より良く活用していただきたいとの思いで書かせていただいています。