ETFと投資信託・株式との違い

ETFと投資信託・株式との違い

  • 最終更新日:2024年4月22日(公開日:2023年2月22日)

今井 幸英

筆者 今井 幸英(いまい こうえい)
ETFセンター・シニア・アドバイザー

1985年4月 株式会社日本興業銀行入社。みずほフィナンシャルグループ(みずほ総合研究所、興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現 アセットマネジメントOne))を経て、2006年12月 日興アセットマネジメント株式会社に入社、2008年8月よりETFビジネスに従事。2020年11月から現職。2012年、2013年 武蔵大学経済学部 非常勤講師、2014年 学習院大学経済学部 非常勤講師。長い運用商品開発の経験を活かし、ETFの開発、ETFビジネスの推進活動を行っている。

国内上場のETFと投資信託・株式との違いを以下の表にまとめてみました。

投資信託・ETF・株式の違い(取引)

ETFと投資信託の違い

実はETFは投資信託(追加設定・解約ができる追加型投資信託)の一つです。その持分を表す受益権が金融商品取引所に上場している、上場していないというところが本源的な違いです。この違いによって色々な違いが出てきます。売買取引の約定時間、約定価格、信用取引や貸付けの可否、費用というのが投資家の投資成果につながる違いかと思います。
※約定・・・売買が成立すること

ETFと投資信託の違い

1.市場

投資信託協会の2024年3月の統計では投資信託(公募証券投資信託、ETFを除く)は5,685本、純資産残高約150兆円、公募の投資信託で取引所に上場しているETF(上場投資信託)は295本、純資産残高約90兆円となっていて投資家の金融資産形成の重要なツールとして関心を集めています。

パッシブ運用(インデックス運用)とアクティブ運用

運用の仕方で運用成果に違いが出てくるのは容易に想像できるかと思います。その代表的なものとしてパッシブ運用とアクティブ運用があります。パッシブ=「受身の、受動的な」といった意味ですが、日経平均株価(日経225)のような指数の価格変動にファンドの運用成果が連動するような、何らかの指数や価格の動きに合わせて受け身的に運用する手法でインデックス運用とも言います。一方、アクティブ運用は積極的に投資銘柄を選定、入れ替えをして、目標とする運用成果(指数を上回るとか特定以上の運用利回り)を目指すものです。投資信託には多くのアクティブ運用の商品があります。2024年3月末現在、日本の取引所に上場しているETFのほとんどはパッシブ運用(インデックス運用)ですが、11本のアクティブETFがあります(当社調べ)。日本でアクティブETFが上場できるようになったのは2023年のことで、日本のアクティブETFには連動対象指数を定めていないアクティブ運用およびルールベースで運用を行うパッシブ運用のETFが含まれています。

アクティブETFについて詳しくは「アクティブETFとは?」をご覧ください。

2.種類

ETFと投資信託の代表的な種類分けをすると以下の表になります。

投資信託とETFの違い(運用)

3.取引方法

ETFと投資信託の違いで投資家が最も大きな違いを感じるのは取引方法だと思います。
まず、取引ができる金融機関ですが、投資信託の場合は銀行や証券会社でできますが、それぞれの金融機関によって取扱商品に違いがあります。特定の投資信託を購入したいときに扱っていないということがありますのでご注意ください。
一方、ETFが売買できるのは証券会社に限られますが、東証上場のETFであればどこの証券会社からも売買することが可能です。

投資信託・ETFの違い(取引)

次に、投資信託の場合、販売会社である銀行や証券会社で、通常、15:00までに取引の発注をしますが、その取引価格(基準価額)が決まるのは、国内資産に投資をするものは、原則、当日の19:00頃、海外資産等に投資をするものは、原則、翌営業日の19:00頃です。その基準価額は原則毎営業日に1回だけ計算されます。一方、ETFは投信と同じように、通常、15:00までに取引の発注が可能ですが、株式取引と同様にその取引ができれば即座に取引価格が決まります。そのため、取引価格は取引が成立した時間によって違います。特に市場変動が大きくなっているときは、ETFの値動きが大きくなることがあり、取引が成立するタイミングによって、一日の中でも取引価格の違いが大きくなります。


投資信託・ETFの違い(取引時間・取引価格)



ETFと投資信託の注文と約定時間の関係

※上図はイメージです。

4.費用

ETFと投資信託は、購入(取得)時、保有期間中、売却・解約時に費用がかかります。

購入(取得)時の費用

投資信託の購入(取得)にあたって、通常、既発行の投資信託を入手することはありません。総て新規募集に応じて、新たに発行される投資信託を入手することになり、投資信託や販売会社によって販売手数料がかかることがあります。
一方、ETFの取得では、通常、すでに発行されたETFを買い付けることになり、その売買を仲介する証券会社への売買委託手数料がかかります。ただし、証券会社によっては、一部のETFの売買委託手数料を取らない場合や一部を返金している場合があります。

保有期間中の費用(信託報酬)

投資信託の場合、販売会社(銀行・証券会社)と運用会社と受託銀行(資産管理)に費用(信託報酬)を払います。
ETFの場合は運用会社と受託銀行(資産管理)に費用(信託報酬)を払います。

投資信託とETFの違い(信託報酬)

売却・解約時の費用

投資信託では通常、解約(一部解約)を行います。
ETFは、通常(取引所売買において)、売却を行います。購入(取得)の時と同様にその売買を仲介する証券会社への売買委託手数料がかかります。ただし、証券会社、ETFによっては売買委託手数料を取らない、一部を返金するようなことがあるのも同じです。さらに、ETFは投資信託と同じように解約(一部解約)することも可能ですが、主に大口投資家(機関投資家)によるもので、通常は売却を行います。
なお、投資信託でもETFでも解約(一部解約)の場合、投資信託の信託財産を換金して投資家に資金を返却することになります。換金時には売却コストが発生しますが、継続して保有する投資家にそのコストを負担させてしまうことがあります。これを補填するために解約する投資家には信託財産留保額がかかることがあります。

投資信託・ETFの違い( 手数料(費用))

5.利益

ETFと投資信託は、多くの投資家の資金をまとめて運用し、その運用成果(利益)を持分に応じて等しく分配する制度です。その運用成果は投資対象から受取る利金・配当金(インカムゲイン)と投資対象の売買や価値の上昇によって得られる収益(キャピタルゲイン)、保有株式から得られた株主優待を換価したものや保有株式・債券を貸付けて得られる利益(その他収益)からなります。ETFと投資信託の投資家は、決算時に分配金を受け取ることと売却・解約時に取得時の金額との差額(差損の場合もあり)を利益とします。

ETFと株式の違い

ETFは株式と同じように売買できることが特徴です。冒頭の図の通り、取引所に上場している点や取引方法は共通しています。また、どちらも決算があって分配(配当)をするのでとても似ているようにも思われます。
大きく違う点として、株式は会社の出資持分を表わすものです。出資者(株主)から集めた資金で事業を行い、利益を株主(投資家)に還元するものですが、様々な事業・経営があり個別性が強い投資対象です。
一方のETFは複数の株式や債券等に分散投資して運用成果を投資家に還元するもの(ファンド、投資信託)です。

ETFと株式の違い

1.費用

ETFも株式もその売買にあたって売買仲介をする証券会社に売買委託手数料を払います。
保有期間中の費用に関しては、ETFは信託報酬料率があらかじめ開示されています。一方、株式の場合は決算を受けて開示される開示資料の損益計算書で会社の経費を事後に確認できます。

2.利益

ETFと株式の投資家は、決算時に分配金(配当金)を受け取ることと、売却時に取得時の金額との差額(差損の場合もあり)を利益とします。

ETF・投資信託・株式投資 どの投資がおすすめ?

これがおすすめですと言いたいところなのですが、投資をされる方々の情況や希望はそれぞれですし、将来にならないと結果が分らないものが投資です。ETF・投資信託・株式投資はそれぞれに特徴がありますので、投資家の皆様の情況や希望に沿ったものはどのようなものか考えてみたいと思います。個別銘柄の情報に関心が少ないとか、フォローしきれない場合はETFや投資信託を活用するのが良いのではないかと思います。

ETF・投資信託・株式投資 どの投資がおすすめ?

できるだけリスクを回避したい人(分散投資)

初めて投資をする方は、特に価格変動が大きいものに投資をすると気が気でなくなる方もいらっしゃるかと思います。しかしながら将来の資産形成には投資は避けて通れないもので必要な選択肢となるでしょう。ご自身の総資産の中で投資に回す資金量を良くお考えいただいたうえで、投資対象を比較的価格変動の少ないものを選んで投資するのはいかがでしょうか。
投資理論にポートフォリオ効果というものがあります。値動きの違う運用対象を複数投資すると値動きが打ち消されあって全体としては比較的マイルドな値動きになることを言います。分散投資とも言って、投資信託やETFはこの分散投資がなされたものになっています。株式も大企業(大型株・成熟企業)は複数の事業を手掛けていて、ある意味、分散投資をしていますが、投資信託やETFほどは分散されてはいません。

できるだけリスクを回避したい人 (分散投資)

海外株式に興味がある人

日本株より海外、代表的には米国の株式に、より収益期待を持たれる投資家も多いかと思います。しかしながら個別海外株投資に関しては、言語(開示書類が英語であること)、外国証券取引口座の開設、税金処理、銘柄選定、とハードルが低くはありません。日本国内の投資信託とETFは個別海外株式投資に比べ比較的ハードルが低く取り組みやすいかと思います。なお、海外上場の海外株ETFという選択肢もありますが、個別海外株とほぼ同じハードルがあります。

海外株式に興味がある人

リアルタイムに売買したい人

日本の代表的な取引所である東京証券取引所のETFと株式の取引時間は9:00-11:30、12:30-15:00となっています。市場価格の変動を利用してリアルタイムに売買して、短期で値鞘を得ようとされる投資家もいらっしゃいます。
取引時間中、ETFと株式は値段を見ながら1日のうち何回でも機動的に売買するこが可能ですが、投資信託は一日に1回発表される基準価額での取引になりますのでリアルタイムの売買はできません。

リアルタイムに売買したい人

積立投資をしたい人

積立投資は買付を時間分散して投資する手法で、一時的な資金負担が大きくないので投資を始めやすいことや市場下落時には比較的多くの口数が買えることになり平均買付単価をならすといった買付タイミングによるリスクを分散できるという特徴があります。定期的な収入の一部を運用に回す現役世代の運用、資産形成に最適な手法と思います。
投資信託は最低買付金額を1円としたりして積立投資がしやすくなっていますが、ETFや株式は、原則、最低買付単位を1円にすることが出来ないことから、一部の証券会社で行われている「るいとう(株式累積投資)」の仕組みが無いと累積投資がしにくいものになっています。投資家の中には、投資信託で積み立てて、まとまった金額となったらETFに乗り換えるリレー投資をする方もいられます。

積立投資をしたい人

長期運用をしたい人

長期運用は金融資産形成のための運用手法として有用なものだと思います。株式は投資家に事業利益を還元するもので、本来、株式の発行会社の成長に投資するものですが、それには時間がかかりますから長期投資が必要です。投資信託とETFは株式や債券等に投資するファンドです。債券は国などが発行する借用証書のようなもので、期中、金利(クーポン)を払い、満期に額面金額を返すというものですので、時間の経過により収益が発生するものです。よって、株式や債券等に投資する投資信託とETFも長期投資に親和性があります。さらに、投資信託とETFは分散投資されていますので、長期間にあっては特定銘柄の破産等があってもその影響が限定的で済みます。

長期投資したい人

銘柄を選びたい人

2024年3月末時点で、ETF295本、ETFを除く公募投資信託5,685本(投資信託協会)、株式3,938社(東京証券取引所)となっています。それぞれ様々なものがあり選択肢があります。なかでも株式はその個別性が強いので選ぶ楽しみがあります。また、その選択によって大きく投資成果が違う可能性が高いので、狙った投資成果をあげるために銘柄を選びたい方にはぴったりだと思います。一方、ETFや投資信託は、その投資方針により類型化され、値動きも分散投資効果により株式よりは値動きがマイルドになる傾向があり、投資テーマや運用会社(運用者)を選んで投資をする、また、連動対象指数を選んで投資をすることができ、株式の個別銘柄選択とは違った目線での銘柄選びが可能になります。

銘柄を選びたい人



以上、ETFと投資信託・株式には様々な特性がありますが、ETFは投資信託と株式の両方の性格を持っていることに気づかれたのではないかと思います。投資信託なのだけれど取引所に上場しているので株式のようにリアルタイムで取引ができるのです。投資目的を達成するためにETFや投資信託のご理解に繋がれば幸いです。

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(以上)

[今井監修]ETFのキホンシリーズ

「ETFのキホン」シリーズでは投資家の皆様にETFを良く知っていただいて、より良く活用していただきたいとの思いで書かせていただいています。