レバレッジETF・インバースETFとは?
- 公開日:2023年4月12日
筆者 今井 幸英(いまい こうえい)
ETFセンター・シニア・アドバイザー
1985年4月 株式会社日本興業銀行入社。みずほフィナンシャルグループ(みずほ総合研究所、興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現 アセットマネジメントOne))を経て、2006年12月 日興アセットマネジメント株式会社に入社、2008年8月よりETFビジネスに従事。2020年11月から現職。2012年、2013年 武蔵大学経済学部 非常勤講師、2014年 学習院大学経済学部 非常勤講師。長い運用商品開発の経験を活かし、ETFの開発、ETFビジネスの推進活動を行っている。
レバレッジはてこ(梃)のことですが、小さな力で重いものを動かすようなことを表しています。レバレッジETFは、元の投資対象(例えば、日経平均株価やS&P500)の日々の動きの「2倍」などに基準価額が動くように運用するETFです。レバレッジETFに投資する場合、日経平均株価やS&P500のETFに同じ金額を投資するよりも日々の投資価値の変動が大きく、上手くゆけば大きな投資成果が期待できます。そこで、てこ(梃)になぞらえてレバレッジETFと呼ばれています。
一方のインバースですが、「逆の」「反対の」を意味します。インバースETFは、元の投資対象(例えば、日経平均株価やS&P500)の日々の動きの逆、反対に基準価額が動くように運用するETFです。
※上図はイメージです。
レバレッジETF(ブル型)/インバ―スETF(ベア型)の仕組み
レバレッジETFをブル型、インバースETFをベア型と呼ぶことがあります。
ブル・ベアというのは、市場の強気(ブル)と弱気(ベア)を表していて、市場が上昇するときにより価格が上昇して利益が期待できるレバレッジETFをブル型、一方、市場が下落するときに価格が上昇して利益が期待できるインバースETFをベア型と呼ぶことがあります。ブルは雄牛(Bull)が角を下から上へ突き上げる仕草(上昇)、ベアは熊(Bear)が前足を振り下ろす仕草(下落)から来ているとのことです。
さて、レバレッジETFの倍率ですが、海外には1.25倍とか3倍などがありますが、現在、国内ETFのレバレッジ倍率は2倍となっています。日々の基準価額が元の投資対象の2倍の動きになるように、デリバティブ取引※を使ってETFの運用を行います。一般的な手法は投資対象指数の株価指数先物を純資産の2倍になるように買い建てる手法です。通常なら指数採用の銘柄をファンドの純資産100%保有するところを投資対象指数の株価指数先物を200%分保有し、2倍の価格変動を実現するのです。
※デリバティブ取引は元となっている金融資産(今回の例では、株式=日経平均株価)から派生した取引です。指数先物取引は将来の日経平均株価の売買について現時点で約束をする取引で、取引当初に証拠金を払い込むだけで取引ができるなど、取引時に発生する金額は元の金融資産取引よりも少額ですむため、元本以上のより大きな運用ポジションを作ることができます。このように少ない金額で大きな取引を行うことをレバレッジと言います。
例:日経平均株価を投資対象とするETFとレバレッジETFの違い
※上図はイメージです。
※上記銘柄については、個別銘柄の取引を推奨するものでも、将来の組入れを保証するものでもありません。
レバレッジETFのメリット・デメリット
レバレッジETFは、指数先物取引といったデリバティブ取引を行うことで投資元本以上の運用ポジションを保有することになりますので、市場の動きが想定の方向になった場合は多くの収益が期待できる反面、想定の逆の方向になった場合は多くの損失になります。ハイリスク・ハイリターンのETFと言うことができます。しかしながらご留意いただかないといけないことは、投資期間中の運用成果がレバレッジではない普通のETFと比較して必ずしも2倍になるものではありません。
基準価額の値動きのイメージ(日経225が上昇局面の場合)
- ※上記騰落率はすべて、小数第2位を四捨五入。
- ※グラフ・データはあくまでも計算例であり、株式市場全体の値動きと基準価額の関係をわかりやすく、強調して表わしたものです。実際の値動きを示唆したものではありません。
基準価額の値動きのイメージ(日経225が下落局面の場合)
- ※上記騰落率はすべて、小数第2位を四捨五入。
- ※グラフ・データはあくまでも計算例であり、株式市場全体の値動きと基準価額の関係をわかりやすく、強調して表わしたものです。実際の値動きを示唆したものではありません。
レバレッジETFがこのような動きになるのは、毎日、純資産の2倍の指数先物の運用ポジションになるように日々調整しているためです。投資初日に100の元本で200の運用ポジションを維持すれば投資期間中の運用成果は投資初日から見て2倍になるのですが、翌日に純資産が95になっていれば運用ポジションを190にしますし、純資産が105であれば運用ポジションは210になります。ポジションを200に維持するようにすると、途中、追加でETFを保有する投資家は2倍の運用ポジションでないETFを保有することになります。また、ポジションを200に維持するようにする場合、純資産が縮小していたときは過度な倍率のポジションとなり、考えられるケースとして市場の下落によって純資産がマイナスにもなり得ます。このようなことからレバレッジETFでは、毎日、純資産の2倍の先物の運用ポジションに調整するものとなっています。
日興アセットマネジメントのレバレッジETF
現在、日興アセットではこちらのレバレッジ型のETFを設定・運用しています。
コード | ETFの名称 | 連動対象 |
---|---|---|
1358 | 上場インデックスファンド日経レバレッジ指数 | 日経平均株価の日々2倍の騰落率を指数化した日経平均レバレッジ・インデックスへの連動 |
2239 | 上場インデックスファンドS&P500先物レバレッジ2倍 | S&P500先物指数(エクセスリターン)の日々2倍の騰落率を指数化したS&P500先物2倍レバレッジ日次指数(エクセスリターン) |
上場インデックスファンド日経レバレッジ指数(証券コード:1358)のユニークなところは、通常、200%の日経平均株価指数先物で運用するところ、70%程度を日経平均株価に連動するETFに投資し、残りの130%程度を日経平均株価指数先物で運用するところです。先物指数からは分配が出ないため、レバレッジETFは分配金が出にくいものが多いのですが、当ETFは保有しているETF(日経平均株価に連動するETF)から分配金を受け取ることで、当ETFの受益者に分配しやすい仕組みになっています。
日経平均株価を投資対象とするレバレッジETFと日興アセットの「上場インデックスファンド日経レバレッジ指数」の違い
※上図はイメージです。
一方、上場インデックスファンドS&P500先物レバレッジ2倍(証券コード:2239)に関しては、200%のS&P500先物で運用しています。なお、先物投資に必要な委託証拠金の米国ドルや現金運用で米国債を保有することがあるのですが、当ETFは原則、為替ヘッジをして為替の価格変動の影響を受けないようにしています。
インバースETF(ベア型)の仕組み
市場が下落するときに価格が上昇して利益が期待できるインバースETFをベア型と呼ぶことがあります。国内のインバースETFの倍率は、マイナス1倍とマイナス2倍となっています。マイナス2倍のものはダブルインバースと呼ぶこともあります。
日々の基準価額が元の投資対象のマイナス1倍の動きになるように、レバレッジETFと同様にデリバティブ取引を使ってETFの運用を行います。一般的な手法は指数先物を純資産のマイナス1倍になるように売り建てる手法です。インバースではない普通のETFなら指数採用の銘柄をファンドの純資産100%保有するところ指数先物を100%売り建てることで、マイナス1倍の価格変動を実現しています。
S&P500ETF(為替ヘッジ)とS&P500インバースETFの運用の違い
※上図はイメージです。
※上記銘柄については、個別銘柄の取引を推奨するものでも、将来の組入れを保証するものでもありません。
インバースETFのメリット・デメリット
インバースETFは市場の動きと反対の方向に動くので、市場が下落する場合に収益が期待できる、また、保有資産のヘッジツールとして活用することが可能です。反面、想定の逆の方向になった場合は損失になりますし、ヘッジをすることは、以降、トータルで収益を得る機会を失うことにもなります。また、マイナス1倍といっても投資期間中の運用成果が、インバースではない普通のETFと比較して必ずしもマイナス1倍になるものではありません。
基準価額の値動きのイメージ(S&P500先物指数が上昇局面の場合)
- ※上記騰落率はすべて、小数第2位を四捨五入。
- ※グラフ・データはあくまでも計算例であり、株式市場全体の値動きと基準価額の関係をわかりやすく、強調して表わしたものです。実際の値動きを示唆したものではありません。
基準価額の値動きのイメージ(S&P500先物指数が下落局面の場合)
- ※上記騰落率はすべて、小数第2位を四捨五入。
- ※グラフ・データはあくまでも計算例であり、株式市場全体の値動きと基準価額の関係をわかりやすく、強調して表わしたものです。実際の値動きを示唆したものではありません。
インバースETFがこのような動きになるのは、毎日、純資産のマイナス1倍の先物の運用ポジションに調整しているためです。これはレバレッジETFのところでご説明したことと同じです。投資初日に100の元本で▲100の運用ポジションを維持すれば投資期間中の運用成果は投資初日から見てマイナス1倍になるのですが、翌日に純資産が95になっていれば▲95の運用ポジションにしますし、純資産が105であれば▲105の運用ポジションになります。このため投資期間中の運用成果が、インバースではない通常の100%運用のETFと比較して必ずしもマイナス1倍になるものではないのです。
日興アセットマネジメントのインバースETF
現在、日興アセットではこちらのインバース型のETFを設定・運用しています。
コード | ETFの名称 | 連動対象 |
---|---|---|
2240 | 上場インデックスファンドS&P500先物インバース | S&P500先物指数(エクセスリターン)の日々マイナス1倍の騰落率を指数化 |
上場インデックスファンドS&P500先物インバースについて、運用に関しては、純資産に対してS&P500先物の売り立て(▲100%)投資をしています。なお、先物投資に必要な委託証拠金の米国ドルや現金運用で米国債を保有することがあるのですが、原則、為替ヘッジをして為替の価格変動の影響を受けないようにしています。
以上、レバレッジETF・インバースETFについてまとめました。2倍、マイナス1倍の動きといっているのは、あくまでも翌日までの価格変化を言っていて、2日以上の投資期間になると、2倍、マイナス1倍にならないことにはくれぐれもご注意ください。投資期間が長くなればなるほどこのずれが大きくなることが考えられるので、レバレッジETF・インバースETFは短期運用、短期売買用のETFと言われます。しかしながら、市場見通しに合致すれば有効なETFでもありますので特性を良く理解したうえでお使いいただければと思います。
(以上)
[今井監修]ETFのキホンシリーズ
「ETFのキホン」シリーズでは投資家の皆様にETFを良く知っていただいて、より良く活用していただきたいとの思いで書かせていただいています。