アクティブETFとは?

アクティブETFとは?

  • 最終更新日:2024年2月8日(公開日:2023年6月12日)

今井 幸英

筆者 今井 幸英(いまい こうえい)
ETFセンター・シニア・アドバイザー

1985年4月 株式会社日本興業銀行入社。みずほフィナンシャルグループ(みずほ総合研究所、興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現 アセットマネジメントOne))を経て、2006年12月 日興アセットマネジメント株式会社に入社、2008年8月よりETFビジネスに従事。2020年11月から現職。2012年、2013年 武蔵大学経済学部 非常勤講師、2014年 学習院大学経済学部 非常勤講師。長い運用商品開発の経験を活かし、ETFの開発、ETFビジネスの推進活動を行っている。

2023年6月、日本のETF市場にアクティブETFの制度が導入され、2023年9月からアクティブETFが東京証券取引所に上場しました。

アクティブETFとは

アクティブETF(正式にはアクティブ運用型ETF、以下、アクティブETF)は、運用の成果を指数・指標に連動させない(インデックス型、パッシブ型ではない)、連動対象の指数・指標を定めない、または、当該指数・指標を上回る運用を目標とするETFです。
海外市場では、すでにアクティブ運用のETFが導入されていて、2023年12月末時点で2,412本、104.7兆円の残高となっています。資金の流入額、流入比率がさらに大きくなってきています。世界的に人気化しつつあるETFで注目が集まっています。

2023年12月末 世界のアクティブETF (ETFGI調べ)

アクティブETF導入による市場への影響

日本の本格的なETF市場は2001年7月に創設され、日経平均株価やTOPIXといった日本株指数に運用成果が連動するインデックスETFとして導入されました。その後、連動対象は日本株式以外の資産、不動産投資信託(「REIT」)、外国株式、外国債券、金などのコモディティに広がりましたが、あくまでも株式指数、債券指数、コモディティ価格といった指数・指標に運用成果を連動させるインデックス型でした。
今回のアクティブETFは連動対象の指数・指標を定めないことから商品設計の自由度が増し、ETFの商品の多様化が進むことが期待されます。NISAの非課税の仕組みはETF投資との相性も良いと思われることから、アクティブETFが個人投資家にETFが普及するきっかけになることも期待されています。

アクティブ運用とは

運用担当者が自律的に運用判断、運用を行う、投資対象を取捨選別して運用することをアクティブ運用と言います。平たく言うと、良い銘柄を選んで投資することで、市場平均を上回ることを目標とする運用です。
一方、アクティブ運用の対義語はパッシブ運用です。
インデックスETFの運用では、連動対象指数・指標に銘柄の入れ替えがあったり、構成比率に変更があると、それに合わせてETFの組入銘柄も入れ替えを行ったり、組入比率を変更する受け身の運用が主流で、パッシブ運用と言います。
インデックス運用において、連動対象の指数・指標の構成銘柄の代表的な銘柄を選んで運用する手法があります。インデックス運用は純粋なパッシブ運用というよりはアクティブ運用寄りの運用を行うものもあって、パッシブ運用とは別概念と整理することもできます。

アクティブ運用とパッシブ運用のイメージ

※上図はイメージです。

アクティブ運用のメリット

✔ 多様な運用目標、多様な運用商品

インデックス運用の指数・指標に運用成果を連動させるという制約が無くなるので多様な運用目標を設定することが可能になります。例えば、市場の代表的な指数より高い運用成果を目指すもの、指数が作り難い複数の資産クラス(株式、債券、REIT、コモディティ等)に投資をするバランス型運用などです。

✔ 柔軟な運用が可能

運用担当者は運用商品のコンセプト、投資制約を遵守しなければなりませんが、その範囲内で銘柄、資産クラスを選択し、組み入れ比率を柔軟に調整することが可能です。市場の変化が激しい昨今、市場の変化に対応できる機能が見直されて、昨今の世界的なアクティブETF人気化の背景にあると言われています。

✔ コスト

アクティブ運用の投資信託はインデックス運用の投資信託よりコストが高くなる傾向があるため、アクティブ運用のメリットでコストを挙げると驚かれる方もいられるかもしれません。インデックス運用ですと指数会社等に支払わなければならないライセンス料がありますが、アクティブ運用では、ベンチマークや参考指標を定めるものでなければインデックスを使うことによるライセンス料を払う必要が無くなります。運用目標の設定に工夫が必要ですが、本格的にローコストなETFを開発するのであればアクティブETFが有利になります。

アクティブ運用のデメリット

✔ 運用目標の実現性

良く知られている事実として、市場の代表的な指数より高い運用成果を目指す運用目標を達成しているアクティブ運用商品が少ないことがあります。運用目標の達成は単年度で成し遂げられるものではないので、中長期で判断しないといけないことに加えて、事前にその成果が分からないということがあります。良いアクティブ運用商品を選ぶのにあたって、運用目標の整合性と運用会社の実績や評判から判断しなければいけませんが、正直、たいへん難しい課題です。

✔ 運用の経過確認が必要

アクティブ運用は運用担当者の自由度が高い反面、しっかりと運用されているか定期的な確認が必用になります。
市場全体の動き、期待とは違う運用成果になることがあり、運用リスクを取ることになります。

✔ コスト

アクティブ運用のメリットでコストを挙げていて、デメリットでも挙げますが、アクティブ運用は、比較的、運用会社の報酬が高い場合があります。また、インデックス型ETFと比較すると同じ運用商品が出しにくいところがあって価格競争が起きにくく、結果、コストが下がりにくいということがあります。

アクティブETFはこんな人におすすめ

運用に付加価値(より高い運用成果)を期待する人

例えば、電気自動車関連の投資テーマがあって、それに関連する株式で運用したいような場合を考えてみましょう。
アクティブETFであれば、運用担当者が調査情報に基づいて、電気自動車関連銘柄に投資をすることになるかと思います。グーグルやアップルなど情報通信業、あるいはソニーやダイソンなど電機メーカーが電気自動車ビジネス参入に参入してきています。これらの銘柄も投資対象にできるかと思います。
インデックスETFは連動対象指数が必用ですが、指数を開発してから組成することになります。まず、指数の銘柄選定方法や算出方法を決める必要があります。先程の電気自動社関連の投資テーマを例にすると、電気自動車関連の業務がどのくらいあって、その業務から得ている収益がどの程度かということから指数に入れるのかを決めるのですが、明確にそのような情報(セグメント情報と言います)は必ずしもすべての会社から得られるものではありません。また、新技術や先のソニーのような会社が出てきてもすぐに投資対象にできず、投資のチャンスを逃すかもしれません。

例 ソニーの開示資料からは電気自動車ビジネスに関するものは読み取れない

※上記銘柄について、売買を推奨するものでも、将来の価格の上昇または下落を示唆するものでもありません。また、当社ファンドにおける保有・非保有および将来の銘柄の組入れまたは売却を示唆・保証するものでもありません。



アクティブETFとインデックスETFの組入れ

インデックスETFは期待された運用成果から外れることが少ない安定的な運用が期待できる一方、アクティブETFは機動的な運用できます。運用失敗のリスクもあるのですが付加価値(より高い運用成果)が期待できます。

アクティブETFの運用目標に賛同できる人

アクティブETFの運用目標、運用方針が投資家ご自身の考えに合う、賛同できる方であることは大切だと思います。ここでご留意いただきたいのは、アクティブETFの名前だけで判断してはいけないことです。アクティブETFの運用目標、運用方針は必ず目論見書に記載がありますので必ずご覧ください。アクティブETFの発行会社(運用会社)のホームページに交付目論見書、請求目論見書が掲示されています。なお、ETFは投資信託とは違って、通常の市場での売買取引をする場合は目論見書が販売会社から交付されません。

アクティブETFの運用会社(運用担当者)の運用力に期待する人

期待ができなければ、そのアクティブETFに投資することができないのは当たり前ですね。



今回はアクティブETFについてまとめてみました。日本のアクティブETF導入に関しては、世界の有力ETF会社、また、ETFを発行していない日本の運用会社も関心が高いようです。おそらくアクティブETF導入をきっかけにETFの運用会社が増えて、また、ETF商品の多様化が進み、競争環境が厳しくなると思いますが、投資家の立場からは好ましい状況になるかと思います。当社も投資家の皆様にお役に立てていただけるアクティブETFを開発して行きたいと思います。ぜひ、アクティブETF、インデックスETFを資産形成のツールとしてご活用いただければと思います。

(以上)

[今井監修]ETFのキホンシリーズ

「ETFのキホン」シリーズでは投資家の皆様にETFを良く知っていただいて、より良く活用していただきたいとの思いで書かせていただいています。