北京での冬季五輪(パラリンピックは3/13まで)が終わり、これからゼロコロナ対策の緩和期待が高まる。ここまでの中国経済は、特に消費面での回復が限定的であった。背景には、コロナ感染防止としての強い行動制限で消費が制約されたことや、不動産業界の不安定さへの懸念から不動産市場にもけん引力がなかったことなどがあった。
米FRBが引き締めサイクルをより積極化させるとの見方の強まりを受けて、米国債は売り込まれた。このことは投資家にとって2022年のこの先何を意味するかという点について当チームの見解を紹介するとともに、アジア債券市場の見通しについて議論していく。
年初のアジア株式市場(日本を除く)は、根強いインフレを受けて米FRB(連邦準備制度理事会)の引き締めサイクルが予想されたよりも積極化するかもしれないとの懸念から、厳しい展開を迎え月間リターンが米ドル・ベースで-3.10%となった。
1月の米国債市場は、米FRB(連邦準備制度理事会)が引き締めサイクルを積極化するとの見方が強まったことを主因に利回りが上昇し、月末の水準は2年物で前月末比0.445%上昇の1.18%、10年物で同0.267%上昇の1.78%となった。
現在のところ、見通しは難しいものとなっている。行く手には引き締めが控えているが、まだ実施されているわけではなく、足元の政策はかなり緩和的なままである。金融・財政ともに極めて緩和的である政策が株価を押し上げたことは確かで、その後の企業の好業績によって株高がさらに進んだ。有機的成長は依然続く可能性があり、特に感染力は強いが毒性は弱いオミクロン型がパンデミック(世界的流行)からエンデミック(より日常的で危機水準の低い特定地域での流行)状態への移行を示すとすれば、世界はようやくコロナ前のような需要を回復することができるだろう。
バリュエーション調整という言葉の意味は、「PERの低下で株価が下落すること」と考えて良い。PER(Price Earnings Ratio)は、“株価÷EPS(1株当たり利益)”で計算され、企業価値(バリュエーション≒株価)が、利益の何倍で評価されているかを知る指標(値が大きいと割高、小さいと割安)である。ここで言うPERの低下は、主に、市場が期待(予想)する利益成長率の低下か、市場が利益成長の鈍化リスクが高まったと感じた時などに起こる。
12月のアジア株式市場(日本を除く)は、米FRB(連邦準備制度理事会)が3月に債券の購入を終了すると述べるとともに、根強いインフレに対処すべく2022年中に3回の利上げ実施を示唆したにもかかわらず、米国株式市場に連れ高となり、月間リターンが米ドル・ベースで1.4%となった。
12月の米国債市場は利回りが上昇し、月末の水準は10年物で前月末比0.066%上昇の1.51%となった。アジアの大半の国では、供給の不足を受けて11月のインフレ圧力が引き続き高まりを見せた。当月、アセアン諸国の中央銀行とインド準備銀行は政策金利を据え置き、自国景気の回復を持続させるべく緩和的環境を維持することとした。中国人民銀行は、RRR(預金準備率)と1年物LPR(「ローンプライムレート」、最優遇貸出金利)を引き下げ、一方で外貨RRRを2.00%引き上げた。その他、中国共産党の最高意思決定機関である中央政治局常務委員会は、2022年の経済における最重要課題として「安定」を強調した。
米国で新型コロナウイルスの新規感染者数が過去最多となるなど、オミクロン株の世界的な感染拡大はニュースの見出しを派手に飾り続けているが、医療崩壊や高い死者数というような悲惨な見通しは今のところ話題になっていない。新変異株のニュースを受けて、各国政府が先手を打つべく規制を強化することにより、またしても世界の需要が阻害され景気回復が妨げられるのではないか、との不安が生じた。
2022年は、世界中の企業や投資家にとって、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みがかつてないほど重要になるとみられる。多くの日本企業がESGへの世界的なシフトのなかで脚光を浴び、ESG情報の開示強化によって現在の脱炭素化推進における価値創造機会に光明が投じられるものと予想している。日本は政治面での安定が想定され、これも2022年に注目される要因の1つとなるだろう。
FOMC(米連邦公開市場委員会)会合の議事要旨は、通常はさほど注目されない。しかし、2021年12月の議事要旨は例外で、市場に驚きを与えた。米国では1月5日(公表日)にNASDAQ100が前日比3.1%下落、NYダウ工業株30種平均(以下、NYダウ)が同1.1%下落、日本では日経平均株価が同2.9%下落(公表日翌日1月6日)した。メディアでは、金融緩和の縮小に向けて前のめりな内容だったことが市場を驚かせたと報じられた。このFOMCショックの原因は、米長期金利(米10年国債利回り、以下同じ)が雇用の改善が十分であることを初めて織り込み始めたことにありそうだ。
2022年にはコロナ禍からの回復というテーマが引き続きシンガポール経済を下支えすると予想している。2022年はシンガポール経済のエンジンである主要分野において成長が広がりをみせ、経済活動の再開が進むなかでサービスセクターがより急速に回復すると予想される。
当社のグローバル投資委員会(GIC)は、年金基金をはじめとする長期投資家のために先進国市場の中期展望に焦点を当てた分析を行っている。GIC の見解では、2022 年はリスク資産にとって厳しいながらも良好な年となるようにみえる。
アジア諸国は米国の金融政策引き締めを十分に乗り切れるとみられる。政府の財政状況、そして企業の財務状況もより健全である。大半のアジア諸国は西欧諸国よりもデジタル化が進んでおり、また消費についても経済活動再開によって大きく押し上げられるとみられる。
中国株式投資にとって、2021年は様々な指数が異なる道を歩み運命の分かれた年となった。MSCIチャイナ・インデックスは2021年11月時点で年初来18%の下落となっており、同インデックスの構成銘柄に投資することが圧倒的に多いオフショア投資家にとっては苦しい1年となった。一方、上海・深セン取引所の銘柄を中心に投資するオンショア投資家にとっては、相対的に実りの多い年であった。
オミクロン変異株が最初に発見された当初、世界のメディアはかなりセンセーショナルな報道を行い、このことが投資家のセンチメントに急速に影響した(皮肉なことに「Delta」と「Omicron」の文字を並べ替えると「media control」になる)。この変異株の本当の性質がまだ正確に把握されていない状況でも、投資家センチメントは少なからぬ打撃を受けた。オミクロン株が他のほとんどのウイルスと同様に、たとえ感染力が強くとも、毒性が低いものになることを願っている。この点について、これまでの感染力が弱い変異株に比べて、デルタ変異株の死亡率が大幅に低いことは明るい材料と言える。
新型コロナウイルス感染拡大の潮の満ち引きとともに2021年を象徴したインフレの加速は、サプライチェーンのボトルネックの表れであるばかりでなく、十分な景気刺激策の継続に伴う需要の拡大も一因となった。一方、米FRB(連邦準備制度理事会)は平均インフレ率を目標とする政策に転換したが、これはつまり、長期平均が目標の2%近くに落ち着くとの前提で、インフレ率の短期的なオーバーシュートを容認するということである。
当月のアジア株式市場(日本を除く)は、新型コロナウイルスの新たなオミクロン変異株の流行拡大によって、世界各国の国境再開計画が見直しを迫られ、景気回復が遅れるかもしれないとの懸念を受けて下落し、月間リターンが米ドル・ベースで-3.9%となった。
あらゆる面で健闘を誇っている国にとって、継続する新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による経済的打撃と戦うなか、2021年は幾分ロープを背に防戦に追われるような年となった。一部では打撃を受けていた(ダウンしていた)かもしれないが、確実に打ち負かされて(ノックアウトされて)はいない。
2022年は世界の経済成長が持続するものの、そのペースはより緩やかなものになると予想される。米国では、旺盛な内需や追加財政出動がGDP成長を下支えしている。米FRB(連邦準備制度理事会)は、景気の回復が続き、特にサプライチェーン関連の問題点が解決されたあとにはその傾向が特に強まるとの見方をしており、2021年11月には資産購入プログラムのテーパリング(段階的縮小)を開始した。
さて、結論から言うと、「一過性」という言葉は存在せず、唯一一過性なのは「一過性」という言葉そのものなのかもしれない。米FRB(連邦準備制度理事会)は、膨張するインフレへの対応として今やテーパリング(量的緩和の漸進的縮小)のペースを倍増させると予想されており、これを受けて債券市場は少なくとも売り込まれるだろうと思われた。 しかし、オミクロン株の登場により話は変わった。
世界の見通しは依然ポジティブだが、新型コロナウイルスの最新の変異株であるオミクロン株の潜在的影響については、特に政府が海外渡航や一部では国内の移動に制限を加えるなど迅速に対応しているなか、あまりよく分かっていないのが現状だ。また、米FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が最近のコメントで、新変異株への懸念から期待されたハト派的傾向ではなくインフレ圧力への対応として敢えてよりタカ派的な姿勢を示したことも、市場センチメントへのさらなる重石となっている。
アジアの信用スプレッドは、マクロ環境と企業の堅調な信用ファンダメンタルズが引き続き追い風となっている。2022年にかけては、アジアの多くの国で経済成長が再び勢いを増すと考える。アジア企業は、収益の伸びが2021年比では若干ペースが落ちるとしても好調さを維持するとみられ、全体として堅調な信用ファンダメンタルズが続くと予想される。
11月の米国債市場は利回りが低下し、月末の米国債利回りは10年物で前月末比0.108%低下の1.45%となった。アジアでは、10月のインフレ圧力がフィリピンを除くほとんどの国で高まった。域内諸国の第3四半期のGDP(国内総生産)は、当該期間における新型コロナウイルス感染者数の増加を受けて前年同期比の成長率が鈍化した。
米国を代表する株価指数の一つであるS&P500は、2020年末から約26%(12月10日現在)、最先端技術を有する企業を多く含む NASDAQ100は約 27%(同)上昇した。米国の株価指数は、新型コロナウイルス感染者数の増加にも拘わらず(医療提供体制が維持されたことなどから)、財政政策などによる支援継続で上昇した。NASDAQ100がS&P500を上回ったことでわかるように、総じてグロース株優位の相場が続いた。