アジアの大部分においてインフレ問題が落ち着くなか、利下げに動いた中国を除き域内の大方の中央銀行は足下で政策金利を据え置く一方、米国では経済指標が総じて多少軟化するなかでも依然として追加利上げが示唆されているが、当社ではそれ以上に中国の次の動きを懸念している。
最近、家族とともに行った2週間の中国旅行は、ある種の「帰郷」であった。飛行機、列車、自動車で(東洋の真珠と呼ばれる)上海、青島、合肥、銀川を巡り、外灘(バンド)として知られる絵のように美しいウォーターフロントの遊歩道で有名な上海へと戻った。
不動産投資信託(リート)とは、幅広い不動産セクターにわたり、インカム収入を生み出す不動産物件の所有や資金調達を行う上場法人である。投資家に分散投資効果をもたらすとともに不動産市場への直接投資に比べて必要投資額が小さいリートは、直接購入することなく不動産にアクセスできる素晴らしい手段となっている。
株価に反映された成長見通し格差は拡大し続けている。その背景として、テクノロジーやAI(人工知能)の発達という形での長期的な経済成長が市場全体の方向性を決定付ける材料として優勢な模様である。これは、テクノロジー・セクターが(そして理由は異なるが日本市場も)上昇する一方、他の大半のセクター・地域市場が月間で下落したことからも明らかだ。
機械学習の成長加速が始まるのに伴い、AIで先発優位性を有する大手テクノロジー企業やAIに特化したハードウェアおよびマイクロプロセッサのハイエンド・メーカー、なかでもアジアの企業が有利な立場にあると考える。
5月は米国債のイールドカーブが総じて上方にシフトし、月末の利回り水準は2年物の指標銘柄で前月末比0.397%上昇の4.41%、10年物の指標銘柄で同0.222%上昇の3.65%となった。
この27年間、筆者は毎日スコットランドのファイフとエジンバラのあいだを、地域の象徴となっているフォース橋を渡る小さな通勤電車で行き来している。この日課には馴染んだ心地よさがあり、これからの1日についてじっくり考えたり、帰路では慌ただしい資本市場への対応にまたもや追われた1日からの解放感に浸ったりすることができる。
先進諸国が引き続きインフレと経済成長の低迷に苦しむなか、アジアはインフレが十分に抑制されており、金融政策サイクルが欧米諸国に先駆けてピークを迎えているなど、その見通しの明るさが際立っている。
ヘルスケア・サービスや製品に対する需要に陰りはみられない。世界的に人口高齢化が進んでいる一方、糖尿病やがんなどの慢性疾患の発症リスクを抱える人が増加している。人々の寿命が延び、よりアクティブな人生を送っているなか、治療や予防のための保健サービスのニーズも高っている。
アジアの消費トレンドは、かつて欧米の影響を強く受けると考えられていたが、もはやそうではない。 アジアの消費者は多様な嗜好および影響力を持っており、世界のトレンドをただ吸収するのではなく、影響をおよぼし始めている。アジアのブランドは、この新しいパラダイムに良く対応できる状況にあると当社ではみている。
2022年初頭以降、インフレ・金利ショックから戦争・コモディティ・ショック、英国の年金危機、そして今回の米国の地方銀行危機に至るまで、市場を動かす重大な出来事が立て続けに発生してきた。こういった歴史的な出来事は、予想通り、市場センチメントと株価バリュエーションの重石となった。
4月の米国債利回りは比較的小幅なレンジで推移し、中期債がアウトパフォームした。月末の利回り水準は、2年物の指標銘柄で前月末比約0.02%低下の4.01%、10年物の指標銘柄で同0.05%低下の3.43%となった。
労働力と経済成長が不足している世界において、これら両方を供給できるアジアはより長期的に非常に有利な立場にあるとみている。現在の米国主導の利上げサイクルが終わり、欧米のより脆弱な金融機関の経営不安が払拭されれば、アジアの見通しは明るいだろう。アジア市場は、現在バリュエーションが魅力的な水準にある。
アジアの銀行は、各国の利上げの規模が小さいこと、金融規制当局による慎重な舵取り、銀行の高い自己資本比率および総資産に占める有価証券投資比率の健全性を勘案すると、現在の世界的な銀行混乱に巻き込まれる可能性は低いと考えられる。このことは、長期的にはアジアの銀行界にとって好材料であり、魅力を高めるものと考えている。
3月半ばに米国で地方銀行が破綻して以来、続いてすぐにCredit Suisseが混乱に陥り結果的にUBSとの合併を余儀なくされるなど、市場の状況はかなり大きく変化してきた。政府が迅速かつ大規模な対応を見せる一方、中央銀行はある程度通常運行で金融引き締めに戻るメッセージを発しようとしたが、市場はそれを信じてはいないようだ。
現地通貨建てアジア債券は、インフレ減速を背景に域内各国の中央銀行が利上げサイクルを終了するのに伴い、好パフォーマンスが予想される。良好なファンダメンタルズ、質の高さを伴う利回り、低い外国人保有比率といった他の要素も、この債券資産クラスの追い風になると考える。
3月の米国債市場はボラティリティの高い展開となった。月末の利回り水準は2年物の指標銘柄で前月末比0.79%低下の4.03%、10年物の指標銘柄で同0.45%低下の3.47%となった。
世界各国が労働力不足の影響もあって成長力が不足する中で、その両方を備えるアジア諸国は、長期的成長のための強固な足場を具備していると考える。現在のアジア株式市場は非常に魅力的なバリュエーション水準にあり、米国が主導している金利引き締めサイクル、及び弱体化している欧米諸国の金融機関の処理が終了した後の先行きは明るくなると考える。
3月上旬、米国のシリコン・バレー銀行(SVB)が突然破綻したことで、投資家はこの破綻が世界中の銀行に波及する兆候の有無を固唾を呑んで見守った。このことは、クレディ・スイス(CS)など、世界の大手銀行の株式、債券の売却を誘発した。CSの問題は、同行の年次報告書の公表直前に米国の規制当局が過年度の財務諸表に関する照会を行い公表延期になったことを契機に一気に深刻化した。
世界的な脱炭素化推進の原動力となれる者は大きなリターンを手にするとみられる。そこで問題となるのは、世界が掲げるネットゼロ目標を達成していくためのツールを構築しているのは誰かという点だが、その答えは現時点そして今後長年にわたってもアジアであると考える。
新型コロナウイルスの世界的感染拡大が始まって以来、投資家は資産価格のボラティリティの高まりに直面してきた。状況を混迷させ続けている一因は、コロナ関連の歪みによる経済指標の変動である。さらにここ数ヵ月は、特に米国で、季節外れの天候パターンの影響により経済の先行きを読むのがより困難になっている。
医療分野における現代最大のブレークスルーの1つとみなされているロボット手術は、世界中で手術方法に革命を起こしている。その躍進が特に著しい中国は、手術ロボット企業にとっての次の成長フロンティアとなる可能性がある。
2月の米国債市場はイールドカーブ全体にわたって利回りが大幅に上昇し、月末の利回り水準が2年物の指標銘柄で前月末比0.62%上昇の4.82%、10年物の指標銘柄で同0.41%上昇の3.92%となった。
3月5日、中国の全国人民代表大会(全人代)の年次総会が開催された。中国の李克強首相(方針発表当時)は、9日間にわたる会議の幕開けとして、2023年の政策方針と主要な経済目標を示す「政府活動報告」を発表した。
当月のアジア株式市場(日本を除く)は大幅に下落して米ドル・ベースの月間リターンが-6.8%となり、前月の上昇分がほぼ打ち消された。米国で市場予想を上回る経済指標が発表されるなか、中国の経済活動再開や金利がピークに達したとの前月の高揚感は短期的なものにとどまり、金利は一段と上昇して高金利がより長期化するとの不安が広がった。
景気見通しは改善しつつある模様で、2023年は前半に景気が鈍化して後半に回復するとの確信が市場で強かった2022年終盤に比べると、大きな変化である。米FRB(連邦準備制度理事会)が積極的な引き締めを行ってきたのは確かだが、資金流動性と民間部門のバランスシートの強さという点からすると、システムには景気刺激策の余波がまだ結構残っていると言えるだろう。
1月の米国債市場は利回りが低下し、月末の利回り水準が2年物の指標銘柄で前月末比約0.226%低下の4.203%、10年物の指標銘柄で同0.366%低下の3.511%となった。
20世紀初頭に16億人程度であった人間の塊は、人口ボーナスや技術革新など、いくつかの幸運もあり、高水準の経済成長の下で昨年80億人に達しました。人々の暮らしは安定し、今世紀半ばまでの人口漸増も見込まれています。
2023年のアジア株式市場(日本を除く)は好調な出だしとなり、当月の米ドル・ベースの月間リターンは8.2%に達した。中国株式に対する投資家センチメントの回復が支援材料となった。米国では、CPI(消費者物価指数)上昇率が6ヵ月連続で鈍化し、インフレ圧力が弱まり始めているとの期待が広がった。
世界第2位の経済大国である中国にとって、2022年は過酷な年だった。第4四半期になるまで厳格な新型コロナウイルス対策を維持し、それによって企業の活動が妨げられ経済成長が抑制された。
季節の移り変わりによって自然は時が流れていくことを思い出させてくれる。それはラッセル家でも同じである。筆者の末っ子はもうすぐ18歳になるが、彼が週末に夜更かしをしている姿は、我が家にも変化がやって来ることを知らせてくれている。自分が人生の新しいステージへと向かっていることに気づかされる。
2022年はインフレが上振れした年であったが、2023年は先進国の多くにとってリセッション(景気後退)の年になるだろうとの強力なコンセンサスが形成されつつある模様だ。投資家は強い確信を抱いているようだが、これは経済指標がコロナ禍の混乱した影響を依然受けており予測困難であることとは相容れないように思われる。おそらく、過去のリセッションを先取りしたのと同じ先行指標が同様の警告を示すだろうが、今回の「コロナ禍の10年」ではそのような予測に伴う不確実性がより大きくなると考えられる。
当月のアジア株式市場(日本を除く)は小幅に下落し、米ドル・ベースの月間リターンが-0.2%となった。米FRB(連邦準備制度理事会)は大方の予想通り0.50%の利上げを実施し、中国は新型コロナウイルス関連の制限を緩和する措置を発表した。
12月の米国債市場は利回りが上昇し、月末の利回り水準が2年物の指標銘柄で前月末比約0.12%上昇の4.43%、10年物の指標銘柄で同0.27%上昇の3.87%となった。
中国債券市場は時価総額が現在140.26兆元(約19.7兆米ドル)、世界第2位の規模の債券市場であり、無視するには規模が大きすぎる存在と言える。
11月の米国債市場は利回りが概して低下し、月末の利回り水準は2年物の指標銘柄で前月末比0.173%低下の4.312%、10年物の指標銘柄で同0.443%低下の3.607%となった。アジア諸国の10月のインフレ圧力はまちまちとなった。マレーシア、インドネシア、韓国、フィリピンの中央銀行は11月に政策金利を引き上げた。
新型コロナウイルスの世界的大流行や欧州での戦争勃発を受けて地政学的リスクやグローバル化に対する見方が改められているなか、自国市場に特化する企業がより多い日本は恩恵を受けてくものと考えられる。インフレの加速を受けてディスインフレや低賃金の流れが止まる可能性があり、そうなれば日銀による金融緩和策の見直しへの道が開かれるだろう。
米国の10月のインフレ率が市場予想を下回るというポジティブ・サプライズが、今のところドルのモメンタムをきっぱりと断ち切る重要なきっかけになった模様だ。その後の1ヵ月で、米ドル指数は5%以上下落している。米FRB(連邦準備制度理事会)がすぐに緩和政策に転換すると予想されるわけではないが、米ドルの動きは、米国に有利だった相対的経済成長ストーリーが、中国の需要回復を中心に世界の他の国々に注目が集まるものへと少し変化したことを反映しているのかもしれない。
「どんなものであれ、風の中にいる方がよい」。これこそが、バイクに乗ることと車を運転することの違いだ。まだ納得がいかないだろうか。作家ロバート・パーシグは著書「禅とオートバイ修理技術(Zen and the Art of Motorcycle Maintenance)」のなかで、「バイクで走っていると、景色にフレームがない。
2022年は世界中でインフレが拡がり、各国の中央銀行は金利の大幅な引き上げによりインフレをコントロールしようとした。その結果、株価算定に用いる割引率が上昇し、キャッシュおよび債券の金利が低いことを背景に唱えられていたTINA(「株式に代わる投資先がない」)や「実物資産に代わるものがない」時代が終焉を迎えた。
2021年の後半以降は、オフィシャルキャッシュレート(OCR)がパンデミック時の緊急的水準である0.25%から上昇しており、先物価格を見る限り2023年半ばまでに5.25%に達することになっているなど、債券投資家にとっては厳しい時期となっている。
2023年は類をみない年になる。これまでに類をみない時代に突入しつつあるなか、投資家は、以前の景気・金融市場回復局面に基づく従来型のモデル、特に1990年代中盤以降最も効果を発揮してきたモデルにあまり頼るべきではない。
当月のアジア株式市場(日本を除く)は大幅に反発し、米ドル・ベースの月間リターンが18.8%となった。月末に、米FRB(連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長が金融政策の引き締めペースを鈍化させる可能性を示したことを受けて、市場センチメントが改善した。
明けない夜はない。米国の物価上昇は2022年の夏場にピークを打った模様で、インフレというトンネルの終わりにようやく明かりが見えつつあり、グローバル債券にとって最近の記憶で最も困難な時期の1つが終わりを迎えようとしている。
023年は良好なマクロ環境が引き続き信用ファンダメンタルズの追い風になるとみている。新型コロナウイルス関連支援を実施する必要性が低下していくなか、アジア諸国の財政赤字は徐々に縮小すると予想される。
英国では11月から12月にかけて、ほとんどの家庭がクリスマス・プレゼントへの子供たちからの(ときに非現実的な)期待と、家計の経済的な現実に折り合いをつけることに終始する。株式市場も同様に期待と現実が入り混じっており、特に2022年はそれが顕著となっている。
2022年のことは忘れた方がいいのかもしれない。しかし、資本市場に携わる者にとっては、貴重な教訓を学んだこの年を決して忘れることはできないし、忘れるべきでもないだろう。インフレが猛烈な勢いで復活し、特に10年超続いた過剰な緩和政策(その最たるものがコロナ禍を受けた大規模な金融緩和および財政出動)の急速な解除と相まって、あらゆる資産クラスに大きな痛手をもたらしている。
2022年の中国の状況は不気味なほど2021年に酷似しており、同国株式は2年連続で主要国中パフォーマンスが最も低い市場の1つになろうとしている。世界では多くの国が経済活動の全面的な再開に踏み切ったが、中国はゼロコロナ政策に固執し、ロックダウン(都市封鎖)と大規模な新型コロナウイルス検査の実施は3年目に突入した。
世界の投資資産にとって過去数十年で最悪のパフォーマンスとなった2022年は、重大な転換点として記憶されるかもしれない。リターンがプラスとなった資産クラスは稀だったが、シンガポール株式は一面マイナス・リターンだらけのなかでなんとか数少ないプラス・リターン市場の1つとなることができた。
2022年は、インフレの高騰に拍車をかける打撃が起こり、世界の各中央銀行がタカ派姿勢にシフトした結果、金融環境が大幅に引き締められるとともに米ドルが非常に大きく上昇した。米FRB(連邦準備制度理事会)は、2022年2月以降にFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標を合計3.75%引き上げ、総合インフレ率はすでに減速の兆候をみせつつある。