当月のアジア株式市場(日本を除く)は、ロシア・ウクライナ紛争が嫌気されたのに加え根強いインフレ懸念も重石となって下落し、月間リターンが米ドル・ベースで-2.8%となった。
3月の米国債市場は、米FRB(連邦準備制度理事会)がインフレ抑制への決意を示したことを受け、イールドカーブ全体にわたって利回りが上昇するとともに短期債が長期債をアンダーパフォームした。月末の米国債利回りは、10年物が前月末比0.514%上昇の2.341%となったのに対し、2年物が同0.902%上昇の2.337%となった。
中国経済について、目先の勢いの低下が懸念されている。まず、ウクライナ情勢の緊迫化に伴う原油価格の高騰が、原材料価格上昇による企業の利益率悪化と、ガソリン価格上昇などによる消費への悪影響を及ぼしている。しかし、石油・石炭は自国生産もあり、日本などと比べれば影響は小さいだろう。
安堵感からの相場上昇は常に心強いものだが、必ずしも暗雲が去って「正常な」市場環境に戻ることを示しているわけではない。市場は、①インフレを抑制するための中央銀行による一層の引き締め積極化、②コモディティ分野全体の供給ショックがもたらしているインフレ圧力の高まり、③ロシア・ウクライナ戦争そのものと大規模な対ロシア制裁措置による未知の波及効果など、先四半期に急速な展開を見せたかなり目まぐるしい一連の困難な材料を、まだ消化しきれていない。
3月22日、円が対米ドルで120円台に下落し、2016年2月以来約6年1ヵ月ぶりの円安水準となった。トランプ前政権時に105〜115円程度の幅で推移していた米ドル円がそのレンジ上限を超えるのは、「黒田バズーカ」影響下の市場環境以来であり、さらには、リーマン・ショック(2008年)以前のサブプライム・バブル時代を思い起こさせる水準である。
当月のアジア株式市場(日本を除く)は下落した。ロシア・ウクライナ間の緊張激化の結果、ついにロシアがウクライナ侵攻に踏み切ったことが嫌気されたのに加え、根強いインフレ懸念も株式市場の重石となり、月間リターンが米ドル・ベースで-2.3%となった。
価格上昇は、原油や天然ガスだけではない。日本経済新聞3月4日付「希少資源に調達危機ロシア・ウクライナ産7割依存も」によれば、ロシアやウクライナの依存度が高い自動車の排ガス触媒に使うパラジウム、半導体製造で必要なネオンなどの供給不足・価格上昇が予想されている。
ロシアのウクライナ侵攻とそれに続く世界的な軍事大国を巻き込んだ戦争は、投資家に大きな不透明感をもたらしている。世界各国は協調して非難を示しており、それを裏打ちする懲罰的制裁措置は、ほぼ間違いなくロシア経済に打撃を与えるとともに、世界の需要の大きな重石となる一方でインフレ圧力を高める可能性がある。
2月の米国債市場は利回りが上昇し、月末の水準は2年物で前月末比0.255%上昇の1.43%、10年物で同0.048%上昇の1.83%となった。
紛争と制裁、報復により、貿易面では「ロシアのいない世界」がやってくる。その転換期をスムーズにするためには、財政支出や銀行支援を行う必要がある。足元、株式市場の下げは総じて「政策を催促する」相場と呼んでよい。
帰省できなかった2年間を経てインドに帰り1ヵ月を過ごした私は、そこでの新常態に良い意味で驚かされた。コロナ禍は大きな苦難となってきたが、テクノロジーの普及などを中心にポジティブな変化も引き起こしている。
世界各国の中央銀行が10年で25兆米ドルもの流動性を経済に注入(うち6割超が創出されたのはここ2年)したらどうなるか、立ち止まって想像してみたことはあるだろうか?圧倒的多数の人が「いいえ」と回答するのは、間違いないだろう。
北京での冬季五輪(パラリンピックは3/13まで)が終わり、これからゼロコロナ対策の緩和期待が高まる。ここまでの中国経済は、特に消費面での回復が限定的であった。背景には、コロナ感染防止としての強い行動制限で消費が制約されたことや、不動産業界の不安定さへの懸念から不動産市場にもけん引力がなかったことなどがあった。
米FRBが引き締めサイクルをより積極化させるとの見方の強まりを受けて、米国債は売り込まれた。このことは投資家にとって2022年のこの先何を意味するかという点について当チームの見解を紹介するとともに、アジア債券市場の見通しについて議論していく。
年初のアジア株式市場(日本を除く)は、根強いインフレを受けて米FRB(連邦準備制度理事会)の引き締めサイクルが予想されたよりも積極化するかもしれないとの懸念から、厳しい展開を迎え月間リターンが米ドル・ベースで-3.10%となった。
1月の米国債市場は、米FRB(連邦準備制度理事会)が引き締めサイクルを積極化するとの見方が強まったことを主因に利回りが上昇し、月末の水準は2年物で前月末比0.445%上昇の1.18%、10年物で同0.267%上昇の1.78%となった。
現在のところ、見通しは難しいものとなっている。行く手には引き締めが控えているが、まだ実施されているわけではなく、足元の政策はかなり緩和的なままである。金融・財政ともに極めて緩和的である政策が株価を押し上げたことは確かで、その後の企業の好業績によって株高がさらに進んだ。有機的成長は依然続く可能性があり、特に感染力は強いが毒性は弱いオミクロン型がパンデミック(世界的流行)からエンデミック(より日常的で危機水準の低い特定地域での流行)状態への移行を示すとすれば、世界はようやくコロナ前のような需要を回復することができるだろう。
バリュエーション調整という言葉の意味は、「PERの低下で株価が下落すること」と考えて良い。PER(Price Earnings Ratio)は、“株価÷EPS(1株当たり利益)”で計算され、企業価値(バリュエーション≒株価)が、利益の何倍で評価されているかを知る指標(値が大きいと割高、小さいと割安)である。ここで言うPERの低下は、主に、市場が期待(予想)する利益成長率の低下か、市場が利益成長の鈍化リスクが高まったと感じた時などに起こる。
12月のアジア株式市場(日本を除く)は、米FRB(連邦準備制度理事会)が3月に債券の購入を終了すると述べるとともに、根強いインフレに対処すべく2022年中に3回の利上げ実施を示唆したにもかかわらず、米国株式市場に連れ高となり、月間リターンが米ドル・ベースで1.4%となった。
12月の米国債市場は利回りが上昇し、月末の水準は10年物で前月末比0.066%上昇の1.51%となった。アジアの大半の国では、供給の不足を受けて11月のインフレ圧力が引き続き高まりを見せた。当月、アセアン諸国の中央銀行とインド準備銀行は政策金利を据え置き、自国景気の回復を持続させるべく緩和的環境を維持することとした。中国人民銀行は、RRR(預金準備率)と1年物LPR(「ローンプライムレート」、最優遇貸出金利)を引き下げ、一方で外貨RRRを2.00%引き上げた。その他、中国共産党の最高意思決定機関である中央政治局常務委員会は、2022年の経済における最重要課題として「安定」を強調した。
米国で新型コロナウイルスの新規感染者数が過去最多となるなど、オミクロン株の世界的な感染拡大はニュースの見出しを派手に飾り続けているが、医療崩壊や高い死者数というような悲惨な見通しは今のところ話題になっていない。新変異株のニュースを受けて、各国政府が先手を打つべく規制を強化することにより、またしても世界の需要が阻害され景気回復が妨げられるのではないか、との不安が生じた。
2022年は、世界中の企業や投資家にとって、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みがかつてないほど重要になるとみられる。多くの日本企業がESGへの世界的なシフトのなかで脚光を浴び、ESG情報の開示強化によって現在の脱炭素化推進における価値創造機会に光明が投じられるものと予想している。日本は政治面での安定が想定され、これも2022年に注目される要因の1つとなるだろう。
FOMC(米連邦公開市場委員会)会合の議事要旨は、通常はさほど注目されない。しかし、2021年12月の議事要旨は例外で、市場に驚きを与えた。米国では1月5日(公表日)にNASDAQ100が前日比3.1%下落、NYダウ工業株30種平均(以下、NYダウ)が同1.1%下落、日本では日経平均株価が同2.9%下落(公表日翌日1月6日)した。メディアでは、金融緩和の縮小に向けて前のめりな内容だったことが市場を驚かせたと報じられた。このFOMCショックの原因は、米長期金利(米10年国債利回り、以下同じ)が雇用の改善が十分であることを初めて織り込み始めたことにありそうだ。
2022年にはコロナ禍からの回復というテーマが引き続きシンガポール経済を下支えすると予想している。2022年はシンガポール経済のエンジンである主要分野において成長が広がりをみせ、経済活動の再開が進むなかでサービスセクターがより急速に回復すると予想される。
当社のグローバル投資委員会(GIC)は、年金基金をはじめとする長期投資家のために先進国市場の中期展望に焦点を当てた分析を行っている。GIC の見解では、2022 年はリスク資産にとって厳しいながらも良好な年となるようにみえる。
アジア諸国は米国の金融政策引き締めを十分に乗り切れるとみられる。政府の財政状況、そして企業の財務状況もより健全である。大半のアジア諸国は西欧諸国よりもデジタル化が進んでおり、また消費についても経済活動再開によって大きく押し上げられるとみられる。
中国株式投資にとって、2021年は様々な指数が異なる道を歩み運命の分かれた年となった。MSCIチャイナ・インデックスは2021年11月時点で年初来18%の下落となっており、同インデックスの構成銘柄に投資することが圧倒的に多いオフショア投資家にとっては苦しい1年となった。一方、上海・深セン取引所の銘柄を中心に投資するオンショア投資家にとっては、相対的に実りの多い年であった。
オミクロン変異株が最初に発見された当初、世界のメディアはかなりセンセーショナルな報道を行い、このことが投資家のセンチメントに急速に影響した(皮肉なことに「Delta」と「Omicron」の文字を並べ替えると「media control」になる)。この変異株の本当の性質がまだ正確に把握されていない状況でも、投資家センチメントは少なからぬ打撃を受けた。オミクロン株が他のほとんどのウイルスと同様に、たとえ感染力が強くとも、毒性が低いものになることを願っている。この点について、これまでの感染力が弱い変異株に比べて、デルタ変異株の死亡率が大幅に低いことは明るい材料と言える。
新型コロナウイルス感染拡大の潮の満ち引きとともに2021年を象徴したインフレの加速は、サプライチェーンのボトルネックの表れであるばかりでなく、十分な景気刺激策の継続に伴う需要の拡大も一因となった。一方、米FRB(連邦準備制度理事会)は平均インフレ率を目標とする政策に転換したが、これはつまり、長期平均が目標の2%近くに落ち着くとの前提で、インフレ率の短期的なオーバーシュートを容認するということである。
当月のアジア株式市場(日本を除く)は、新型コロナウイルスの新たなオミクロン変異株の流行拡大によって、世界各国の国境再開計画が見直しを迫られ、景気回復が遅れるかもしれないとの懸念を受けて下落し、月間リターンが米ドル・ベースで-3.9%となった。
あらゆる面で健闘を誇っている国にとって、継続する新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による経済的打撃と戦うなか、2021年は幾分ロープを背に防戦に追われるような年となった。一部では打撃を受けていた(ダウンしていた)かもしれないが、確実に打ち負かされて(ノックアウトされて)はいない。
2022年は世界の経済成長が持続するものの、そのペースはより緩やかなものになると予想される。米国では、旺盛な内需や追加財政出動がGDP成長を下支えしている。米FRB(連邦準備制度理事会)は、景気の回復が続き、特にサプライチェーン関連の問題点が解決されたあとにはその傾向が特に強まるとの見方をしており、2021年11月には資産購入プログラムのテーパリング(段階的縮小)を開始した。
さて、結論から言うと、「一過性」という言葉は存在せず、唯一一過性なのは「一過性」という言葉そのものなのかもしれない。米FRB(連邦準備制度理事会)は、膨張するインフレへの対応として今やテーパリング(量的緩和の漸進的縮小)のペースを倍増させると予想されており、これを受けて債券市場は少なくとも売り込まれるだろうと思われた。 しかし、オミクロン株の登場により話は変わった。
世界の見通しは依然ポジティブだが、新型コロナウイルスの最新の変異株であるオミクロン株の潜在的影響については、特に政府が海外渡航や一部では国内の移動に制限を加えるなど迅速に対応しているなか、あまりよく分かっていないのが現状だ。また、米FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が最近のコメントで、新変異株への懸念から期待されたハト派的傾向ではなくインフレ圧力への対応として敢えてよりタカ派的な姿勢を示したことも、市場センチメントへのさらなる重石となっている。
アジアの信用スプレッドは、マクロ環境と企業の堅調な信用ファンダメンタルズが引き続き追い風となっている。2022年にかけては、アジアの多くの国で経済成長が再び勢いを増すと考える。アジア企業は、収益の伸びが2021年比では若干ペースが落ちるとしても好調さを維持するとみられ、全体として堅調な信用ファンダメンタルズが続くと予想される。
11月の米国債市場は利回りが低下し、月末の米国債利回りは10年物で前月末比0.108%低下の1.45%となった。アジアでは、10月のインフレ圧力がフィリピンを除くほとんどの国で高まった。域内諸国の第3四半期のGDP(国内総生産)は、当該期間における新型コロナウイルス感染者数の増加を受けて前年同期比の成長率が鈍化した。
米国を代表する株価指数の一つであるS&P500は、2020年末から約26%(12月10日現在)、最先端技術を有する企業を多く含む NASDAQ100は約 27%(同)上昇した。米国の株価指数は、新型コロナウイルス感染者数の増加にも拘わらず(医療提供体制が維持されたことなどから)、財政政策などによる支援継続で上昇した。NASDAQ100がS&P500を上回ったことでわかるように、総じてグロース株優位の相場が続いた。
つい数週間前、筆者は2019年以来初めてとなる対面式のカンファレンスに出席した。世界最大級のテクノロジー・カンファレンスの1つ「ウェブサミット」のためにリスボンに押し寄せた人の数は4万人を超えた。
当月のアジア株式市場(日本を除く)は上昇し、月間リターンが米ドル・ベースで1.4%となった。投資家の注目は引き続き、インフレ圧力の高まりや米FRB(連邦準備制度理事会)によるテーパリング(量的緩和の漸進的縮小)計画に集まった。
10月の米国債市場は前月に続いて利回りが上昇した。最終的に、月末の米国債利回りは2年物で前月末比0.222%上昇の0.499%、10年物で同0.067%上昇の1.555%となった。中国、韓国、シンガポールでは、2021年第3四半期の経済成長が鈍化を示した。一方、MAS(シンガポール金融通貨庁)は為替政策における自国通貨高誘導の「傾き」(上昇ペース)を引き上げ、またRBI(インド準備銀行)は金融システムから過剰流動性を吸収した。
日本は2000年ごろから、米国でもリーマン・ショック後の2010〜11年ごろから、経済はデフレ(継続的な物価下落)を懸念する状態に陥っていた(日本は一時的にデフレを経験)。現時点、メディアなどでインフレ懸念が話題になっているが、デフレが「懸念」されていたのだから、インフレも「期待」されて良さそうなものだ。ここでインフレが懸念されている理由は、インフレが「供給ショック」から起きているからだろう。
各国中央銀行の直近の政策決定会合は投資家に心待ちにされていた。それまでの市場は、従来の中央銀行のガイダンスが示すよりも早期の利上げを織り込み、インフレが一過性ではなくより厄介で長く続くものになるリスクの高まりを示唆していた。ここ数週間のグローバル債券市場では、短期ゾーンの利回りが上昇する一方で長期ゾーンの利回りが横這いにとどまるか低下しているが、このようなイールドカーブの大幅なフラット化も「政策ミス」の可能性を暗示しているように思われた。
10月31日の衆院選で、自民党は改選前から議席を減らしたものの、単独で261議席を獲得し、「絶対安定多数」を維持した。公明党との連立与党では293議席、改憲勢力の日本維新の会と合わせれば定数の3分の2を上回り、安倍政権以来の政治情勢を継続することになる。
当月のアジア株式市場(日本を除く)は下落し、月間リターンが米ドル・ベースで-4.2%となった。中国の経済成長見通しに対する懸念や米FRB(連邦準備制度理事会)のテーパリング(量的緩和の漸進的縮小)計画が、市場センチメントの主な悪化要因となった。
米国金利の上昇が新興国に悪影響を及ぼすのではないか、という懸念がある。しかし、そもそも「新興国」を一括りに分析することは不適切で、米国との貿易や金融の関係性が弱い国ではあまり影響を受けない。一方、関係性が強い国では、例えば米国への製品輸出が多いブラジル企業が米ドル建て社債を発行している場合、米国金利の上昇で米ドル建て債務の金利負担が増大するようにみえる。
9月の米国債市場は、米FOMC(連邦公開市場委員会)で資産購入の緩やかな縮小がついに11月にも開始されると示唆されたことを受けて、利回りが上昇した。エネルギー価格が急騰している最中に欧州や中国で電力不足がエスカレートしインフレ懸念を駆り立てたことも、利回り上昇を一層促した。一方、中国における停電の発生や恒大集団(Evergrande Group)破綻の可能性に脅かされて同国の経済成長見通しに対する不安が強まったため、リスク・センチメントが悪化した。最終的に、月末の米国債利回りは2年物で前月末比0.067%上昇の0.28%、10年物で同0.178%上昇の1.49%となった。
ボラティリティは、当社がいずれそうなるだろうと予想していた通り高まっている。9月はリスクが再認識されやすい月だが、市場参加者が夏季休暇から戻ったら株式市場が史上最高値になっていたという状況は、近い将来に重大なリスク・イベントが数多く控えている現実とは相容れない。米FRB(連邦準備制度理事会)が遅かれ早かれ実施する予定のテーパリング(量的緩和の漸進的縮小)や、政局からもたらされる債務上限問題のストレス、新型コロナウイルスのデルタ株の感染拡大を受けた経済成長の鈍化など、一部のイベントは予想済みであったが、世界同時に近い形で発生したエネルギー不足はやや予想外であったと言える。
過去5年間の平均気温は観測史上最も高いものとなった。2020年までの10年間で、地球の地表温度は産業革命前の時代(1850~1900年)と比べて1.09℃上昇した。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、気温上昇が2℃のレベルになると生態系や人間の健康への極めて深刻な影響が想定され、これを回避するためには地球温暖化を1.5℃未満のレベルで安定させることが非常に重要であると警告している。
誰もがインフレを気にしている。中央銀行の高官からパン屋の店主まで、インフレは最も大きな話題のひとつとなっている。多くのコモディティの価格が急上昇しているからだが、上昇の理由は様々で、供給の制約や需要の急増、悪天候などよりどりみどりだ。
世界が落ち着こうとしている「ニュー・ノーマル」は、コロナ前の標準とはかなり異なるものになるとみられる。これに含まれるのは、「ウィズコロナ」の生活様式によって形作られる異なる需要パターンや、確固たる政策目的を伴う財政出動の継続などだ。かつてない規模の金融緩和政策はまもなく縮小される見込みで、その過程では、経済と市場が時とともに徐々に顕在化するであろうニュー・ノーマルに順応していくなかで、ボラティリティが高まるとみられる。
中国の不動産開発大手、恒大集団のクレジット・リスクが市場に認識されたことで、日本や米国の株式市場が揺れ動いた。この問題は、大都市やその近郊など一部地域での不動産投資の行き過ぎによる価格高騰を抑えるため、2016年ごろからの中国政府による投資制限に端を発している。
「世界人口は2064年の97億人をピークに減少する――。米ワシントン大は20年7月、衝撃的な予測を発表した」(日本経済新聞8月23日付)。国連が2100年に109億人となるまで増え続ける、と試算してることは良く知られているが、今回の発表内容は、中国をはじめとする新興国の少子高齢化が想定以上に進むという警鐘だ。
当月のアジア株式市場(日本を除く)は上昇した。月初は新型コロナウイルスのデルタ変異株の感染拡大に対する懸念が市場の重石となったものの、月末にかけては米FRB(連邦準備制度理事会)のハト派的な発言や打撃を受けていた中国のテクノロジー・セクターの反発が市場センチメントを押し上げ、月間リターンは米ドル・ベースで2.3%となった。
コロナ後の世界を熟慮するにつれ、物事がかつてのような「ノーマル」に戻ることはないだろうとの見込みが強まってきた。ワクチンは依然新型コロナウイルスに感染する人々が重症化するのを防ぐのに高い効果を上げているが、一方でデルタ変異株は封じ込めるのがより難しいこともわかってきている。世界各国はウイルスとともに生活しながら公衆衛生への影響を最小化する術を学びつつある。この影響として、需要パターンがコロナ前の標準から変化するとともに、最初は力強い持ち直しを見せた景気回復がおそらくはより緩やかなペースで続くことになるとみられる。とりあえず今のところは、各国経済は非常に緩和的な金融・財政政策に依然下支えされている。
8月の米国債市場は、米国の雇用統計が市場予想を上回る雇用の伸びを見せたことを受けて、利回りが上昇した。米FRB(連邦準備制度理事会)の一部高官によるタカ派的発言も利回りの上昇を促した。ジャクソンホール会議にかけても利回りは再び上昇したが、同会議ではジェローム・パウエルFRB議長が同中銀による利上げ時期が先送りされる可能性を示唆した。最終的に、月末の米国債利回りは2年物で前月末比0.024%上昇の0.21%、10年物で同0.087%上昇の1.31%となった。
9月3日昼頃、菅義偉首相退陣(自民党総裁選(以下、総裁選)の不出馬表明)の意向が報じられた。直接の原因は人事の行き詰まりとされているが、新型コロナウイルス対策の不満に起因する内閣支持率の低迷が背景にあろう。
東京で開催された夏季オリンピックは、ここ数週間における有難い気晴らしとなっており、現在の環境下でオリンピックを非常に順調に開催した日本は賞賛に値する。特に、各競技のトップ選手が何年間にも及ぶ準備や計画の成果をみせる姿には、メダル獲得の成否に関係なく心を揺さぶられる。
当月のアジア株式市場(日本を除く)は、中国での個別学習指導事業およびテクノロジー関連セクターへの政府による規制強化を受けて同国株式が売り込まれたことが重石となり、下落して米ドル・ベースの月間リターンが-7.5%となった。域内諸国で新型コロナウイルスの感染者数が再び増加したことも、アジア株式に対するセンチメントを悪化させた。
7月の米国債市場ではイールドカーブがブル・フラット化した。FOMC(連邦公開市場委員会)の会合は大した材料とはならなかったが、資産買入れに関するフォワード・ガイダンスが若干変更され、同委員会の目標に向けて進展がみられたとの見方が示された。ただし、テーパリング(量的緩和の漸進的縮小)の開始に必要な「一段の大幅な進展」には依然至っていない。月末の米国債利回りは5年物指標銘柄で前月末比0.20%の低下、10年物指標銘柄で同0.25%低下の1.22%となった。
当社のリフレ見通しは最近、クロス・アセットのプライシングによって試されている。約1年前にリフレの見込みについて議論をし始めた当初、当社では複数の主要な要因を特定した。その最たるものが、金融・財政政策による大規模な景気刺激策が同時に実施されることに加えて、最終的な経済活動の再開が景気に大きなプラスとなることだった。経済活動は当初のロックダウン(都市封鎖)の終了に伴って力強く回復し、その後も新型コロナウイルスのワクチン接種や「ブルーウエーブ」(民主党が大統領選に勝利するとともに上下院を制すること)選挙を受けた米国の追加財政出動によってさらに押し上げられる、と予想していた。これらの要因が現実化し始めるに従い、リフレ・ポジションは今年の第1四半期を通じて非常に良好なパフォーマンスを示した。
世界的に、REIT指数は株価指数に対して出遅れているようだ。日米ともに、REIT指数のコロナ・ショック以前の水準におおむね戻ったものの、株価指数はすでにコロナ・ショック以前を超えているからだ。
当月のアジア株式市場(日本を除く)は、域内で新型コロナウイルスの感染者数が最近急増していることなどが重石となり、小幅に下落して月間リターンが米ドル・ベースで-0.1%となった。インフレの加速をめぐる根強い懸念や、米FRB(連邦準備制度理事会)のテーパリング(量的緩和の漸進的縮小)が予想よりも早く実施されるのではとの不安も、市場センチメントを冷え込ませた。
6月の米国債市場では短期債がアンダーパフォームし、イールドカーブがフラット化した。米FRB(連邦準備制度理事会)がよりタカ派寄りのスタンスに転換したことを受けて、米国債のイールドカーブは月半ばに大きくフラット化した。とりわけ、FOMC(連邦公開市場委員会)メンバーの金利予測の分布をチャート化した「ドット・プロット」の中央値によると、前回3月分で利上げが予測されていなかった2023年において、足元では2回の利上げが示唆されている。最終的に、月末の米国債利回りは2年物で前月末比0.107%上昇の0.25%、10年物で同0.127%低下の1.47%となった。
日興アセットのアジア株式チームのメンバーでシニア・ポートフォリオ・マネジャーであるグレース・ヤン氏が、Citywireのアジア部門ベスト・ファンド・マネジャー賞受賞という最近の栄誉の背景にある潜在的理由や、アジアの小型株分野で隠れた珠玉銘柄を発掘することに対する同氏の情熱について語ってくれました。
米国と中国の経済成長は、景気刺激策の効果と繰り延べ需要の当初の勢いが弱まり始めるのに伴い、当面の天井を打ちつつある可能性が高い。中国では、クレジットインパルス(新規与信の対GDP比の伸び率)がマイナスに転じる(通常は景気悪化の兆候)一方で需要の正常化が続いており、実体経済が必要とする分野に信用供与が向かうよう当局が引き続き微調整を行うなか、製造業における需要の膨張から通常の消費パターンへと移行しつつある。米国では、インフラに特化した大規模な財政出動への期待は後退するとみられるが、依然高水準にある過剰貯蓄、雇用の回復、緩和的な金融政策が相まって好調な需要の継続を支えている。
世界の主要国でワクチン接種が進むにつれ、不動産や不動産株式、REIT(不動産投資信託)への興味が高まっている。コロナ禍がまん延する中では、世界のオフィスなどの需要がいったん低下し、さらに既存物件のテナント(特に飲食店など)からの賃料引き下げ要望があった。REITのセクターをみると、コロナ禍で需要が高まった倉庫などロジスティックを除き、オフィスについては、オフィス縮小のニュースが続き、ワクチン接種が進む国々であってもテレワークの影響が見極めにくく、投資への懸念が続いたのだ。
当社では、アジアおよびその他の地域で力強い景気回復が維持されるなか、債券利回りが過度に上昇しない限り、アジアのリートは好調なパフォーマンスが続くとみている。短期的な問題はいくつかあるものの、アジアのリートの見通しは有望であり、同資産クラスに投資するメリットの有効性は依然揺るぎないと考える。
中国でナショナリズム(国家主義)が高まっている。この愛国心の波は長期化し、化粧品メーカーのような消費財セクターから医療機器メーカーや建設機械メーカーなどの資本財セクターまで、数多くの中国企業にとって新しいビジネス機会と収入源を生み出す可能性がある。
金利が上昇すると株価、特にグロース株が下落するという誤った「理論」が拡散したためか、FRB(米連邦準備制度理事会)のテーパリング(中央銀行が市場から国債などを買い入れて銀行などに資金供給する「量的緩和」の買い入れ額を順次減らすこと)や、将来の金利引き上げ予想を根拠に、「グロース株は終わった」という誤解があるようだ。
家でテレビのクイズ番組をみているとき、挑戦者によるどうしようもない誤回答に思わずテレビへ向かって叫んだ経験は誰にでもあるのではないだろうか。信じられない気持ち、フラストレーション、無力感はみな、そうした状況でよく覚える感情だが、少なくとも、最後には笑って楽しい時間を過ごせるのが普通だ。
当月のアジア株式市場(日本を除く)は、域内の複数国での新型コロナウイルス感染者急増に対する懸念や根強いインフレ不安をよそに、同地域で継続中の景気回復をめぐる楽観ムードを追い風として底堅い推移を見せ、月間リターンが米ドル・ベースで1.2%となった。
5月の米国債利回りは比較的狭いレンジでの動きとなった。コモディティ価格の上昇や米国の総合CPI(消費者物価指数)およびPPI(生産者物価指数)上昇率の大幅加速を受けて、インフレ懸念が再燃した。4月のFOMC(連邦公開市場委員会)議事録では、FRB(連邦準備制度理事会)が資産購入の縮小について間もなく協議を開始する可能性があることが示唆された。最終的に、月末の米国債利回りは2年物で前月末比0.019%低下の0.143%、10年物で同0.032%低下の1.596%となった。
経済指標はインフレ率を中心に浮き沈みが激しいものの、金利は低下して大半の「サプライズ」がすでに織り込まれたことを示唆している。これはグロース資産にとってポジティブな材料と言える。イールドカーブが第1四半期に見られたように急にスティープ化するよりも安定する環境の方が、グロース資産のパフォーマンスは良くなるからだ。
リーマン・ショックを経て、2010年ごろから世界は長らくデフレ懸念に見舞われていたが、コロナ・ショックをきっかけに主要国で多額の財政出動が行われ、大部分のお金がいまだに消費者の預貯金として蓄えられていることから、インフレ期待が醸成されつつある。簡単に言えば、巣ごもり消費では使い切れないほどのお金が、今後数年にわたり供給が追いつかなくなるほどの需要を生み出す、ということだ。
「近頃の人はあらゆるものの価格を知っているが、何の価値も知らない」、というオスカー・ワイルドの名言がある。
進歩の代償ということについて言えば、彼の言葉はそれほど事実から離れていない。産業革命以降、確かに人類は相当な進歩を遂げてきた。しかし、これによって犠牲となってきたのが環境である。工業化による経済発展や富の創造は、エネルギー消費量の急増や、それに伴う温室効果ガス排出量の増加をもたらした。こうした温室効果ガス(炭素)の排出は、世界の気温が着実に上昇する一因となってきた。
最初に、「テーパリング(tapering)」の意味がしばしば誤解されているので明確にする。テーパリングとは、「先細り」を意味する taper から派生した言葉であり、量的緩和そのものが終わるのではなく、スピードダウンすることだ。米国の例を見ると、2014年年初から資産購入ペースのスピードダウンを半年ほど続けた後、2015年に入ってから購入額の水準を維持した。2015年12月に利上げを開始したが、保有資産の規模は縮小せず、緩和縮小は大変ゆっくりと進められた。
アジアの小型株は、大型株を長期的にアウトパフォームしてきた実績があるとともに伝統的株式ポートフォリオに優れた分散効果をもたらすことから、長期スタンスの投資家にとって多くの投資メリットがあると考える。
4月の米国債利回りは安定化した。米国の国内経済指標が景気加速を確認する内容となりインフレ指標も市場予想を上回ったにもかかわらず、債券利回りは低下基調に転じた。米FOMC(連邦公開市場委員会)の声明では、金融政策の方向性に関する新たな変更は発表されなかったが、経済見通しについてはより明るいトーンが示された。最終的に、月末の米国債利回りは2年物で前月末比0.001%低下の0.161%、10年物で同0.115%低下の1.628%となった。
当月のアジア株式市場(日本を除く)は、中国その他複数の域内諸国で2021年第1四半期のGDP成長率が市場予想を上回ったことなどを受けて同地域の景気回復をめぐり楽観ムードが広がるなか、まずまずの上昇を見せ月間リターンが米ドル・ベースで2.5%となった。
米国債市場は、今年の各市場にとってリフレ・トレードの重要なバロメーターとなっている。大半の資産クラスは米国債利回りの動きに沿ったパフォーマンスを見せてきており、プラスであれマイナスであれ強い相関性が続いている。第1四半期の最後に1.74%でピークをつけた米国債10年物の利回りが4月は低下に転じ、年初からの激しい下落相場はようやく一息ついている。その波及的影響として、ドルが下落するとともにグロース株が対バリュー株でのパフォーマンスの劣後を一部取り戻した。米国の大手テクノロジー企業の決算内容が好調であったことも、グロース株への資金回帰を促した。
製造業の急回復で銅などのコモディティ価格が上昇し始め、米国経済が正常化すれば労働力不足となり、インフレが起こりやすくなるのでは、といったことが心配されている。さらに、米国でトランプ前政権の緊急対策に加えバイデン政権が追加的に財政を拡大させれば、自粛期間中に溜まっていた飲食などの需要だけでなく世界の総需要も急拡大し、供給が追い付かずにインフレとなる可能性がある(2020/6/25、「コロナ後のインフレを考える」で指摘)。しかし、これらは株価下落をもたらすとは思えない。“経済回復・正常化”→モノの価格・賃金の上昇→インフレ懸念・金利上昇→“経済悪化・株価下落”という因果は、経済回復・正常化⇒経済悪化・株価下落であり、矛盾しているからだ。
パーム油企業への投資は物議を呼ぶか、それとも好機をもたらすか。本稿では、パーム油セクター、そして同セクターが直面している重大なESG問題について詳細に考察する。結論から言うと、当社では、ESG面のポジティブな変化はパーム油企業にとって大きなチャンスとみており、持続可能性に関するゴールに向けて尽力し、自ら掲げたESG目標を上回る成果を挙げている銘柄への投資をめざしている。
以前、「シリコン・サイクルはスーパー・サイクルへ」(2018/3/20、リンクあり)で、シリコン・サイクルはスーパー・サイクルになりそうだ、という考えを示した。ここでは、その後の状況を確認し、当時からみれば“スーパー・サイクル化した”と考えられる要因を報告する。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)で大騒ぎとなった2020年を経て、2021年の世界の経済成長はワクチン接種のポジティブな進展と政府による継続的な対策を背景に回復すると予想される。しかし、回復ペースは国によって差が生じるとみられるとともに、新型コロナウイルスの再流行の不安は根強く残っており、ついに危機を脱したなどと言うのは僭越だろう。
当月のアジア株式市場(日本を除く)は、根強いリフレ懸念や世界的な債券利回りの上昇といった逆風材料がCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)のワクチン接種進展に伴う地域経済の回復期待を上回ったことから、利益確定売りに押されて月間リターンが米ドル・ベースで-2.5%となった。
3月の米国債市場ではイールドカーブのスティープ化が一層進んだ。米国で国内の経済指標が予想を上回る好調さを見せたこと、1.9兆米ドルの景気対策パッケージが議会で可決されたこと、新型コロナウイルスの日次感染率が低下するなかでワクチン接種率が上昇したことを受けて、市場では向こう数四半期における経済成長の加速の織り込みが進んだ。最終的に、月末の米国債利回りは2年物で前月末比0.032%上昇の0.162%、10年物で同0.335%上昇の1.742%となった。
米国の新たな景気刺激策と新型コロナウイルスのワクチン接種の概ね順調な進行がリフレの動きを下支えし、景気の回復がそれをすでに示しているなかで、リフレ・トレードは市場動向からみると少々消耗してきているようだ。しかし、当社では足元の動きを終わりというよりは小休止とみている。米国債利回りの上昇に加えて米国の好調な経済成長見通しがドルのサポート材料となっており、ドル高は通常ディスインフレ効果をもたらす。当社ではそのような当面の追い風要因を受けてドルに対する見方を引き上げたが、この動きが長期にわたって続くとは考えていない。
米国の財政政策(経済対策)は、民主党政権であるバイデン政権となって拡張的になると考えて良いだろう。ただし、3月に成立した約1.9兆米ドルと、今後審議される約2兆米ドルなどの政策はまったく性格が異なることに注意したい。
しばしばメディアの解説などで、「理論株価の考え方では“金利上昇で株価が下がる”ので、株式市場は金利上昇を懸念する」と指摘されるが、ファイナンス理論の観点から、このような表現を使うべきではないだろう。
当月のアジア株式市場(日本を除く)は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のワクチンが域内に景気回復をもたらすとの楽観ムードが投資家のあいだで続くなか、上昇して米ドル・ベースの月間リターンが1.2%となった。
2021年3月に導入されるEU(欧州連合)のサステナブル・ファイナンス開示規則は、資産運用のやり方を大きく変えることになるだろう。同規則には運用会社のESG(環境・社会・ガバナンス)懸案事項への取り組みに関する新たな開示要求が含まれており、当社ではこれを心から歓迎する。
年初に好調なスタートを切ったグローバル株式市場は、2月には今年最初の難局にぶつかった。大半の国の株式市場は年初来で依然プラス・リターンを維持しているものの、程度こそ異なれ高値から反落している。この主因は債券イールドカーブの大幅なスティープ化で、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミック(世界的流行)の真っ最中においてその恩恵を最も受けてきた市場に悪影響を及ぼしている。テクノロジー株の占める割合が大きいナスダック指数は10%の調整に見舞われ、年初来の上昇分をすべて吐き出した。バリュー色の強い「復興」株をより多く含む市場全体の指数は、相対的に良好なパフォーマンスを見せている。
長らく低迷してきたインフレが再加速する可能性を受けて、2月の米国債利回りは大幅に上昇した。米国の好調な経済指標、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)ワクチンに関するポジティブな動向、米国の財政支出拡大見込みが重なり、インフレ懸念の高まりを招いた。最終的に、月末の米国債利回りは2年物で前月末比0.019%上昇の0.13%、10年物で同0.34%上昇の1.41%となった。
しばしばメディアの解説などで、「理論株価の考え方では“金利上昇で株価が下がる”ので、株式市場は金利上昇を懸念する」と指摘されるが、ファイナンス理論の観点から、このような表現を使うべきではないだろう。
当月のアジア株式市場(日本を除く)は、新型コロナウイルスの新たな変異種によってもたらされた不透明感をよそに上昇し、月間リターンが米ドル・ベースで4.1%となった。
日経平均株価が30年ぶりに3万円台に乗せるなど、コロナ禍にありながら強い株式市場(以下、市場)となっている。これは主に①バイデン米政権の大型財政政策への期待、②主要国での新型コロナウイルス感染拡大の鈍化と正常化期待、③主要国の製造業の雇用や収益の改善、に支えられている。一方リスクは、①バイデン大統領が早い段階で富裕層増税やキャピタルゲイン課税強化などを語り始めること、②ワクチン接種の効果が想定外に低いこと、③旅行・飲食など非製造業の回復が遅れ、消費者が補助金などを貯蓄し消費に回さないこと、などが挙げられる。
1月の米国債市場はイールドカーブがスティープ化した。米国の財政支出拡大見込みを受けて、米国債利回りは年初に急上昇した。月後半には、米国株式市場のバリュエーションが高水準にあることやCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)のワクチン接種が一様には進んでいないことに対する懸念から、市場でリスク回避志向がある程度強まった。
1月の市場は特に月末にかけて不安定な展開となったが、当社ではこのような状況がしばらく続くと予想している。2020年3月下旬以降ほぼ休むことなく続いているリスク資産の力強い上昇が、11月初旬の米国選挙を受けて再び勢いを増したからだ。
2020年はシンガポールにとって試練の年だった。経済は落ち込み、株式市場のリターンはマイナスに陥った。だが、2021年の見通しは、輸出の回復に伴い、輸出品を中心とした製造業が経済回復をけん引し改善すると考える。
2020年は世界にとって紛れもなく恐ろしい年であった。喪失、痛み、不安、そして別離の1年であり、テクノロジーや社会的特権も全く歯が立たなかった。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)発生以来、政府、企業、個人は不完全で変わり続ける情報に基づき社会的・経済的に重要な決定を下すことを余儀なくされ、その決定がもたらした進路をたどるしかなかった。